「夢十夜」には夏目漱石が後年も抱き続けたいくつかの問題、人間存在の不安感や原罪、人間関係の裏切りなどのテーマが、ミステリアスな香りを漂わせ描かれている。この中からあやしいロマンチシズムの第１夜、恐ろしい前世の因縁がからむ第３夜、床屋の鏡に映る日常的な風景から異常な世界が始まる第８夜、の３編をオムニバス形式で描く。原作：夏目漱石「夢十夜」「行人」。

幕末から明治にかけて活躍した西郷隆盛と大久保利通との友情と対立を軸に、日本の近代化に奔走した人々の姿を多角的に描く。ＮＨＫ大河ドラマ第２８作の総集編。「幕末編」「明治編」の２部構成。（１９９０年１２月１６日～１２月２６日放送、全４回）。原作：司馬遼太郎。◆第一部・後編「維新成る」。生麦事件は薩英戦争へ発展し、それをきっかけに西郷（西田敏行）は遠島を解かれ、京へのぼる。薩摩の採るべき道を模索する西郷を坂本竜馬が訪れて倒幕の時だと説き、長州の木戸孝允を紹介する。一方、名を一蔵と改めた大久保（鹿賀丈史）は岩倉具視に接近して朝廷工作に乗り出す。将軍は大政奉還を決意するが、１８６８年（慶応４）ついに開戦した。

張学良は日本軍によって爆殺された張作霖の長男であり、１９３６年の西安事件で蒋介石を監禁した罪を問われ、以後半世紀を超える軟禁生活を余儀なくされてきた。その張学良が９０歳の誕生日を機に５４年間の沈黙を破り会見に応じた。世界初の単独インタビューを軸に、日本の針路を大きく変えた張作霖爆殺事件、満州事変、西安事件の真相に迫る。

アメリカ・オハイオ州クリーブランドは、かつて製鉄で栄えた町。鉄の財力で１９１６年、アメリカ屈指のクリーブランド美術館を建てた。平安中期の『日光菩薩像』や『熊野曼陀羅』、狩野山楽の『雁図屏風』など、日本美術の名品が多数展示されている。終戦直後の混乱期に、日米の美術愛好家たちの国境を越えた友情が人類の遺産を救った。◆日本美術をこよなく愛するクリーブランド美術館関係者の情熱と、異国文化へ寄せる理解を紹介する。日光菩薩坐像、薬師如来像、伝・宇佐八幡神像、役行者坐像、日光菩薩像、熊野曼荼羅図、雁図屏風（狩野山楽筆）〔クリーブランド美術館〕

ロシア革命から７０余年、社会主義はどこへ向かおうとしているのか。社会主義国で起こっている変動を２０世紀の歴史の中で捉え直すシリーズの第１集。（プロローグ含め４月２２日〜１２月２３日放送、全９回）◆第１集はベルリンの壁に象徴される東ドイツの苦悩を追う。第２時大戦後、西側３国とソ連の四者による共同管理下に置かれたベルリン。保護政策の違いから東西ベルリンは日ごとに経済格差が広がり、東独から西ベルリンへの人口流出が続いた。道路封鎖、フェンス設置などの対策を講じていた東独は、ソ連スターリンの了解のもとに壁建造計画を極秘に進めた。１９６１年８月１３日、深夜０時の実施に向けての緊迫した当時を証言などから再構成する。

「一期の晴れを飾る」甲胄は戦に命をかける武者の晴れ着。源平時代から燃え立つ赤の鎧が多用された。敵を威圧する赤糸威鎧は晴れがましく、死んで辱めを受けまいと武士たちは華々しさを競った。壇ノ浦で鎧二領をまとって海に身を投じた平知盛。源義経の鎧と伝えられる赤糸威鎧は今も大山祇神社に残る。◆栄光と滅んだものの対比を無言で物語る鎧。赤色にこだわった武士たちの美意識と心情を解析し、甲胄の歴史を振り返る。◆【国宝】赤糸威鎧〔大山祇神社〕、赤糸威鎧〔春日大社〕◆【重要文化財】鉄黒漆五枚胴具足〔仙台市博物館〕◆【その他】壇之浦合戦絵図〔赤間神宮〕

４５年ぶりに中国を訪れた元・憲兵の謝罪の旅を追い、加害者の立場から戦争を捉え直す。◆山形県に住む土屋さんは、かつて満州（現在の中国東北部）・チチハルで憲兵として従軍し、戦後は戦犯として撫順に収容された。彼の戦中・戦後史を描く。

障害者への差別や偏見をなくし、あらゆる場で真の仲間として受け入れる「開かれた社会」の実現について考える。◆第２部「社会参加への道」では、アメリカとイタリアからの報告を交え、障害者の社会参加への道を探る。◆１９９０年７月、障害者に対する一切の差別を禁じたアメリカ障害者法が成立した。財政赤字に悩む中、２００億ドルの費用を要する法案が通るまでにはさまざまな経緯があった。可決までの経過をたどる。◆イタリア・トリエステ市は、精神障害者への対応に地域ぐるみでとりくんでいる。難しい問題に２０年をかけて取り組んだ、保守的だった地方都市での市民の苦悩を追跡する。