日本によってサハリンに残された女性の悲劇を描いた映画を、サハリンで上映しようとする映像作家の奔走を追う。◆中島洋さんは札幌で映画の自主上映や映像制作などの活動を続けてきた。１９９１年、友人である韓国の映画監督・李長鎬氏の映画のロケに立ち会うためサハリンを訪れる。韓国、日本、ロシアと３つの名前で生きなければならなかった女性の生涯を描いたこの映画は、韓国アカデミー賞で企画賞と助演女優賞を受賞した。中島さんは２度目のサハリン行きで映画のモデルともいうべき残留韓国・朝鮮人の老人たちに会い、強制連行の実態を聞く。一生彼らと付き合うことを決意した中島さんがサハリンの町を歩くと、「イルボンニン（“日本人”の意）」と声がかかる。

１９９２年に相次いでこの世を去った二人の偉大な作曲家、いずみたくと中村八大をしのんで、東京・サントリーホールで行われた追悼コンサートの模様をおくる。司会は黒柳徹子と永六輔。◆メモリアル・オーケストラによる曲目は「恋の季節」「帰ろかな」「希望」「遠くへ行きたい」「見上げてごらん夜の星を」「上を向いて歩こう」「夢で逢いましょう」「夜明けのスキャット」「世界は二人のために」「黒い花びら」「こんにちは赤ちゃん」「いいじゃないの幸せならば」「おさななじみ」「涙を越えて」「いい湯だな」「さよならさよなら」ほか。

妻の妊娠と中絶をめぐり離婚の危機にある中年夫婦と、孤独の中で人生のたそがれを迎え弱々しく老いた父親の焦燥感を通して夫と妻、親と子の絆を描く。◆修作と亮子は共稼ぎで夫婦だけの時間を大切にするために子供は作らずにきた、いわゆるＤＩＮＫＳ夫婦。修作の父・修造は３年前に妻に先立たれて以来悠々自適の一人暮らしをしている。ところが亮子が妊娠したことから夫婦の間に食い違いがおき、そのうえ修造は認知症の症状を示しはじめる。

たくさんの獅子が舞う秋祭りに、新たに大獅子が加わったことから町中が祭りに熱中し始め、おもいがけない町おこしへと発展するてんまつを、農村らしいゆったりとした流れの中で描く。◆香川県木田郡三木町に住む兼業農家で役場勤めの串田茂樹さんは、地元の氷上神社に奉納する大獅子の頭を４年がかりで仕上げた。獅子の着る油単はいとこの友禅作家・林田清龍に頼み、頭の重さが２００キロ、油単を含めた長さが２０メートルの大獅子が仕上がった。人口２万７千人の三木町の１０月６日、宵宮には町内６つの大きな神社に合わせて５５の獅子が奉納に集まる。７日の本宮では大獅子３つが揃って奉納の儀式がある。

１９９２年８月、ウラジオストックと福井県敦賀港を結んで初めて開催された「ジャパンシーヨットレース’９２」の発端からフィニッシュまでを追う。◆１９９１年８月、福井県のヨットマンと旧ソビエト連邦沿岸地方スポーツ委員会の間で国際ヨットレースについての１枚の覚書が交わされた。ところがその後事態は急転、ソ連の共産党支配が終わり冷戦の象徴ともいわれたウラジオストックの軍港も開放されて自由な出入りが許され、ジャパンシーヨットレースは平和理に実行できることとなった。弾みのついたヨットマンは日本海を取り巻く全ての国に参加を呼びかけ、日・露・中・韓・北朝鮮の５か国の混成チームを含む１７艇が４日間９００キロのレースに挑んだ。

　物忘れの多い男が電車の中に旅行に持っていくカバンを忘れる。カバンの特徴や中身の話が笑わせる。やっと見つかって慌てて取りに行こうとすると、女房が「私を忘れないで」とオチがつく。新作落語である。◆作／大野桂

平山郁夫画伯の代表作のひとつ「広島生変図」誕生のドラマを、恩師・景山英俊氏との師弟愛を軸に、ドキュメンタリーを織り交えつつ描く。◆１９４３年（昭和１８）、景山英俊（山本圭）は広島市の私立修道中学校に東京から赴任した。初めて担任した生徒の中に、当時１３歳だった平山郁夫（田中優樹）がいた。景山の妹・啓子（若村麻由美）は早くからその画才を見抜く。◆１９４５年８月６日、広島に原爆投下。平山少年は勤労動員先で奇跡的に直撃を免れるが、後遺症の白血病で苦しむことになる。◆景山氏が原爆投下の日から授業再開の９月１５日までを克明に書き綴った「修道中学戦災記録」などが素材。

王朝の雅を写す大和絵。多くの日本絵画が色彩豊かな自然とのかかわりから生まれる一方、彩りを墨一色で表現する水墨画は鎌倉時代中国から禅とともに渡来した。禅僧の手から次第に日本化され、繊細さと気迫で、墨の奥に色彩を感じさせる名品が次々に描かれた。その頂点といわれる長谷川等伯の『松林図』や「たらし込み」の技法を極めた宗達の傑作など日本美の極致に接し、実際に筆・墨・紙で表現する画法を見ながら墨の奥を見定める。◆【国宝】妙喜庵茶室（待庵）、扇面法華経冊子〔四天王寺〕、渓陰小築図〔金地院〕、松林図（長谷川等伯筆）〔東京国立博物館〕、蓮池水禽図（俵屋宗達筆）〔京都国立博物館〕