北緯６６度３３分の緯線、またはそれ以北を「北極圏」と呼ぶ。アジア・アメリカ・ヨーロッパを最短距離で結べる交通ルートとして、また資源の宝庫として注目されるこの地域を取材、北極圏の姿を伝える。（１９８９年４月３０日～１９９０年３月２５日、全１２回）◆第６回は、シベリア中央部を４０００キロ以上にわたって流れる大河・レナ川を下る。シベリア鉄道と北極海を結ぶ航路が開くのは夏の４ケ月間だけ。水上輸送の出発点、オセトローボ港から河口のチクシ港まで、漁業、木材の搬出、ダイヤモンド鉱山の開発、厳しい自然の中での人々の生活と仕事を紹介しながら旅をする。

服役を終えて出所したヤクザ者が、世の中の変わりようについていけず戸惑う。原作：筒井康隆、本歌：俵万智。◆大場組の若頭・野中（小林薫）は、３年の「お勤め」を経て組に復帰した。待っているはずが実家に帰っている妻と子。若い組員がブランド服を着込み、パソコンを操っている組事務所。拍子抜けした野中は、獄中で習った短歌作りや、知り合った女子大生とのデートに明け暮れる。

京都・東山三十六峰の南に位置する月輪山のふもとに、泉涌寺がある。鎌倉時代に月輪大師俊じょうが再建し四条天皇を葬って以来、皇室との深い関係を持ち続け今日に至っている。◆幕府と朝廷との確執の歴史を手繰り、歴代天皇の念持仏や御遺言の数々から往時をしのぶ。泉涌寺には月輪陵と呼ばれる数多くの御陵が幾重にも建ち並び、清らかな寺領に静かに眠る。◆【重要文化財】泉涌寺仏殿、大門、開山塔◆【その他】月輪陵、楊貴妃観音像〔泉涌寺〕、昭和天皇百日法要

出羽三山とは、山形県庄内地方にある羽黒山・月山・湯殿山をいう。山は日本人にとって神そのものだった。原始山岳信仰はやがて仏教や道教と結び付き、山は修業の地・聖地とあがめられた。羽黒修験は山岳修験の原形を今に残し、千数百年変わらぬ修業が続いている。極寒の中を雪を踏み分けて修業する１００日間の『冬の峰入』の荒行、出羽三山に伝わる秘儀や仏像、即身仏などから出羽修験の今日をとらえる。◆【国宝】羽黒山五重塔〔出羽三山神社〕◆【その他】蜂子神社、即身仏の鉄門海上人〔湯殿山注連寺〕、羽黒修験の冬の峰入

戦争体験を持つ女性が、子どもたちに戦争の悲惨さを直接語りかけるシリーズ。この年は海外の女性も語る。◆第２次世界大戦中、日本の占領下に置かれていたシンガポール。曽梅鳳（ツァン・メイフォン）さん（７３歳）は、抗日分子として日本軍に連れ去られた父親を待ち続けた。当時のシンガポールで何が起こったのか、曽さんが日本の中学生・高校生に語る。

長唄の名曲「岸の柳」「菖蒲浴衣」を人間国宝の杵屋佐登代さんらが演奏。また長唄で使われる浴衣について、演劇評論家・渡辺保さんが解説する。◆「岸の柳」は、柳橋の近江屋という芸者屋の娘の恋物語をもとにして、東京の柳橋から両国へかけての夏景色を唄う粋な曲である。◆「菖蒲浴衣」は、江戸時代に歌舞伎役者が自分の好みの浴衣を売り出すために作られたといわれる長唄。

私たちの体の神秘を探る科学ドキュメンタリー番組・ＮＨＫスペシャル「驚異の小宇宙・人体」の予告編。◆たった１個の受精卵から６０兆もの細胞を持つ人間が生まれる。生涯休みなく２０兆回以上、鼓動を繰り返す心臓、食物を分子に分解して吸収する消化器。人体にはさまざまな驚異が存在する。その素晴らしい生命の営みの模様を最新の科学で描く“人体内紀行”。その体内を直径１２ミリのファイバースコープや８０万倍の電子顕微鏡で撮影。さらにスコープの入らないところは最新のコンピューター・グラフィックス（ＣＧ）で生命の謎を探る。スウェーデン、イタリア、オーストラリア、フランスとの国際共同制作番組。

京都・北野天満宮を、作家の五木寛之さんが訪ね、天満宮の主神・菅原道真の生涯などを描いた北野天神縁起絵巻の魅力を探る。◆北野天神縁起絵巻は鎌倉時代初期の作で、全９巻、総延長は８０メートルに及ぶ。鎌倉時代に発展した似絵と呼ばれる写実的表現で、生き生きと描かれている。◆道真が人間界に現れて出世し、陥れられて失脚、失意のすえに神となって都の人々に報復する姿を、６巻を費やして描く。７、８巻は、地獄の様子を凄惨に描いた六道絵。９巻は下書きの絵をのちに継いだもので、絵巻は未完のままで終わっている。絵巻の作者が自ら描いた六道絵に引き込まれてしまったようだ、と五木さんは語る。