東京・洗足池のほどりの古びた洋館「花屋敷」に、涙を流す観音像を守って暮らす母娘三人の生活に一人の男が侵入したことから、その奇怪な秘密が露呈する。◆昭和初期。花屋敷には母・笛と９歳の桜子、５歳の桃子の姉妹がひっそりと暮らしていた。奥の間には左目から涙を流す不気味な観音像が安置されている。ある夜訪ねてきたソフト帽の男が、母と奥の間に入っていった。姉妹は二人を覗き見るが、何を見たのかはお互い口にしない。翌朝男の姿はなかった。◆２４年後。同じ三人が暮らす花屋敷に、仏像研究家だという龍という男が観音像を見せて欲しいとやってきた。仏像だけでなく姉妹に興味を示す男に、笛は娘に手を出さないでくれと頼む。

私立芝浦芸術高校の各クラスは音楽科、演劇科、ダンス科に分かれている。いつの日か輝かしいステージに立つことを夢みている生徒たちと、型破りな教師の青春キャンパスを描く。（１９９１年６月２８日〜９月１３日放送、全１３回）◆第１回「集団異常興奮」。神長仁（陣内孝則）はジュリアード音楽院中退、女のヒモだったが、芝浦芸術高校から教師の口がかかった。春の発表会のキャスティング発表の日、主役に選ばれなかった演劇科の生徒・名島由紀子（浜田万葉）が屋上から飛び降りて病院に運ばれる。

足利尊氏の生涯を描くＮＨＫ大河ドラマ第２９作「太平記」の総集編。全４回。原作：吉川英治。◆第３回「建武の新政」。鎌倉幕府が滅亡し、隠岐から戻った帝は、建武の新政に着手する。しかし“公家一統の世”はすぐに破綻を見せる。その中で戦後処理の恩賞をめぐって公家と武家の対立は深まっていく。新政に疑問をもつ尊氏（真田広之）を危険視する大塔宮護良親王はこれを除こうと画策するが、尊氏の弟・直義により暗殺され、事態は緊迫する。

謎の僧とされる「円空」の足跡をたどりながら現代に通じる円空の信仰について考えるドキュメンタリータッチの再現ドラマ。◆円空は１２万体の仏像作りを念じて旅に出た。今もおびただしい数の円空仏が残されているが、円空について確かな記録はなく、彼の生涯にはきわめて謎が多い。生地の岐阜、円空仏の宝庫愛知そして群馬での足跡をたどり、ショートドラマ、研究者の証言を交えながら、円空の現代的な意味を問いかける。

真珠湾攻撃から５０年目となるこの年、日系アメリカ人被爆者を取材し、日本とアメリカ二つの祖国をもった彼の半生を通して平和と原爆を考える。◆アメリカ国籍でサンフランシスコに在住する男性は、祖父の代にカリフォルニアに移住した移民２世。アメリカで生まれ育ち。１２歳のときに日本の教育を望む父の意向で来日、旧制広島二中に入学し、１５歳で被爆した。戦後は、進駐軍の通訳をしながら敗戦の混乱を過ごして２年後に帰国した。彼を待っていたのは反日感情の強まったアメリカ社会だった。

リトアニアのユダヤ人画家ベン・シャーン。幼い頃ニューヨークに渡りアメリカ社会の底辺を知る。石版画工房で技術を習得、パリで絵を習い、町の本屋でみたリルケの「マルテの日記」で転機をむかえる。帰米後は社会派リアリストとして、時代性のある題材と人間性のある絵を描き続け、ビキニの第五福竜丸事件なども視野に入れるなど、激動の時代と格闘した画家だった。死の前年、最後の１枚として、長年絵筆を握り続けた自分の右手を描き残す。◆ベン・シャーン（１８９８〜１９６９）「ラッキー・ドラゴン」１９６０、「これがナチの虐殺だ」１９４２、「農民にたずねよ」１９４１、「寓意」１９４８、「サンデー・ペインティング」１９３８、「らせんと結晶」１９５７

世界四大美術館に数えられるボストン美術館では、東洋部創設１００年の特別展を１９９０年の秋に開いた。日本と深いつながりを持つ初代東洋部長アーネスト・フェノロサ（１８５３〜１９０８）が明治１０年代に集めた、１，０００点に上る日本画が基礎になっている。岡倉天心や富田幸次郎らの人脈が幸いし、日本にもない名品が日本ギャラリーを飾っている。陶磁器・絵画・能面など１０万点に及ぶ東洋部の大コレクションを抱えるボストン美術館の、伝統と秘話と現況を描く。◆大日如来像、大威徳明王像、弥勒菩薩像（快慶作）、行幸図（吉村周圭作）、花鳥図（紹益作）、吉備大臣入唐絵詞、猿侯図（雪舟作）、白衣観音（狩野元信作）

師匠に物真似と言われた絵師が、心を改めて山の中に入り、本物の野猿を描くことに挑戦して見事な作品を描き上げる。展覧会に出品した「野猿の図」は、大評判であったが、円山応挙は「これは飼われた猿だ」と言う。絵師は一念発起、山に篭って猿の生態を描くこと３年、妻の陰の協力もあって、改めて出展した作品は応挙が頭を下げるほどの出来で、師弟は手を取り合って喜ぶ。