二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆当麻寺は、千三百年前の建立。奈良から見て西にあるので、西方極楽浄土の入口と信じられ、今日に至るまで極楽往生を願う人々の信仰を集めている。本尊は、当麻曼荼羅という巨大な絵図。極楽浄土の姿が詳しく描かれていて、伝説では、平安時代、貴族の娘の中将姫が、観音菩薩と阿弥陀仏の助けをかりて一夜で織りあげたという。またここには、人が死ぬときその魂を極楽浄土から迎えにくるという２５菩薩来迎の彫刻もあり、それを信者の人たちが演じる練供養も毎年行われている。旅人は数学者・森毅とミュージシャン・種ともこ。

１９７６年登録。◆地中海と大西洋が接するあたりに近いフェズ川の岸に、９世紀はじめに建設されたモロッコ最古のイスラム都市。メディナ（旧市街）は城壁に囲まれ、敵の侵入に備えて路地は迷路のように入り組み、今も車は入れない。ロバやラバが荷物を運ぶ街は生活臭にあふれているが、中心部には巨大なモスクや豪邸がある。◆それらの壁面はタイルモザイクによって飾られているが、その抽象模様の豪華さ、美しさは、驚嘆に値する。短いが、皮なめしと染色作業も見もの。

瀬戸内海と日本海に挟まれた中国地方五県の自然と、そこに生息するさまざまな生き物の生態を伝える。◆今回は光の競演・ゲンジボタルを紹介する。（後編）

　『木を彫っていると夢が湧いてくる。木の中に秘められた形が私の夢をかき立てる…』木彫の仏像彫刻で文化勲章を受章した澤田政廣の僅か１０体の作品を収めるために、同じ文化勲章受章者の建築家村野藤吾が設計したのが谷村美術館である。建物はシルクロード敦煌の石窟をイメージして作られ、来館者はあたかも巡礼者であるかのように、美と瞑想の空間に引きこまれる。劇作家の唐十郎さんが自作の文章を引きながら、その感動を語る。（新潟県糸魚川市）

さまざまな分野で活躍する第一級の人々が、その人ならではの視点で「いのち」をテーマに語る。◆今回は、リュート奏者のつのだたかしさん。

紀伊半島を南北に流れる十津川。その渓谷沿いに涌き出る名湯を紹介。漫画家の河村立司さんが軽妙なタッチで湯けむりに集う人たちを描く。

１９９３年登録。◆長靴のような形のイタリアの、土ふまずの位置にある。グラヴィーナ峡谷の岩穴には、新石器時代から人が住んだが、８世紀ごろ、キリスト教の修道僧が集まり、穴を堀り広げたり、切り出した岩石を積みあげたりして町を築いた。１５世紀後半には、農業と商業で発展。しかし近代化にとり残され、スラム化、廃墟となった。◆この半世紀、また人々が戻りはじめ、家の中が狭いので外を共有して使う方法が地域の連帯を生んで、マテーラの良さとして見直されている。

１９７９年登録。◆英語でいえば「聖ミカエル山」。ノルマンディーの広く浅い入江にぽつんと山がそびえ、頂上に大修道院、麓に町がある。宇宙に地球を見るような眺めだ。ここは、百年戦争ではフランス軍の要塞となり、フランス革命では牢獄になった。今もヨーロッパ各地から熱心な巡礼が訪れる。歴史を追いながら修道院内部を見ていく。◆湾はムール貝の産地で、大潮の時の海面の干満差が大きい。１３ｍも水位が上昇した１９９６年９月の様子が撮影されている。