旧東海道沿い、名古屋市有松町の「鳴海絞」は、３８０年の歴史を持ち、尾張藩の手厚い保護のもと東海道随一の特産品にまで成長した実績を持つ。絞は、染め残す部分を糸でくくったり針で縫って模様を描く技法で、このくくりの手作業が鳴海絞の特色。有松の女性の指先から指先へと伝えられてきた緻密で根気のいる手仕事である。松岡ゑつさんたちのくくりの作業をベースに、絵彫り・染めなどの分業化した諸作業を経て、豪華な振袖が仕上がる過程を描く。

奥会津の三島町は桐の産地である。晩秋から早春にかけていろいろな伝統行事が続くが、そのいずれもが生活に結び付いている。◆会津桐で有名な福島県三島町は桐の仕事が終わると冬に入る。人々は雪の暮らしの中で先祖を想い敬い、一家の無事を祈り、次に来る年の実りの多いことを願う。子供たちも自分たちの役割を行事の中で果たすことで村の一員として育っていく。皆の気持が１つになって村の暮らしが今日も続いていく。◆三島の若水汲み〔福島県〕、若木迎え、サイの神祭り、初愛宕、ひな流し

二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆奈良・西ノ京の律宗総本山唐招提寺。境内に並ぶ伽藍それぞれが絶妙に調和した空間を生み出していることから「絶塵の名刹」と呼ばれてきた。この名刹を訪ねる旅人は、人形師・ホリヒロシと女優・緒川たまき。和辻哲郎の「古寺巡礼」を随所に紐解きながら、金堂、御影堂と、今なお残る奈良時代寺院建築の面影を追う。そして最後に、１２年かけて中国から渡来した唐招提寺の開祖・鑑真の廟の前で、ホリさんが人形舞を捧げる。

全国に今も残る大黒柱のある家を取材し、その家族が守り続けている家訓や生活の知恵、大黒柱に対する深い思い入れなどを紹介。◆標高１０００メートルを越える山々に囲まれた檜原村は、東京の西の端、山梨県との境にある。その中の一軒の家は、江戸時代に建てられたもので、この家を２００年支えてきた大黒柱がある。

山口県長門市にある十五代坂倉新兵衛の窯元を、洋画家斉藤静輝が訪ねる。◆萩焼は、朝鮮半島で焼かれた高麗茶碗の土の味を日本で作ろうとしたもので、萩にはその様式や技法がそのままにある。◆坂倉さんは東京芸大の大学院のとき萩焼にはなかった絵付けを発見し、独自の作風を確立していった。それは土の味を活かすためで、茶碗に必要なのは品だという。◆窯入れは神事である。すべての作品を炎に委ね、終われば直会（なおらい）が用意される。窯出しは新しい命を手にする時だ。

日本各地を訪れ、受け継がれる伝統工芸の技と心を紹介する。◆旧松山街道沿いには古い家並みが連なり、四国遍路の巡礼で賑わった。内子の繁栄の歴史を支えてきたロウ。大森さん親子は和ろうそく作りの五、六代目。昔ながらの手作業で、ハゼの実を搾った生のロウから和ろうそくを作っている。江戸時代に始まった和ろうそく作りの技を、内子の歴史と共に描く。

１９８５年登録。◆黒海と地中海に挟まれたあたり、火山の噴火と風雨の侵食が創りだした奇観がカッパドキア地方。その中にギョレメ国立公園がある。そこに、厳しい修行を求めるキリスト教の修道僧たちが集い、岩を彫って教会や住居とした。そうした洞窟修道院や生活の跡を見ていく。◆８、９世紀にはイスラム教徒の迫害が激しく、やはり岩を彫り抜いて数万人が避難できる地下の都市を造った。現在、７か所も発見されている。人間の持つエネルギーの凄さに驚かされる。

瀬戸内海と日本海に挟まれた中国地方五県の自然と、そこに生息するさまざまな生き物の生態を伝える。◆今回は大山の春を紹介する。（前編）