９世紀のペルシャに現れ１４世紀に消えた、金の輝きをもつ絵、陶器ラスター。その再現に１５年をかけ、さらに２０年、日本の美を重ねようと試みる加藤卓男を、画家安野光雅が岐阜県多治見市に訪ねる。◆加藤さんは正倉院の復元の仕事も手がけ、人間国宝になった。日本では歪んだ形に禅の美を見出す。ただし、わざと歪ませてはいけない。◆煤を混ぜた顔料を素焼きに流す。登り窯に１点だけ入れて薪をくべ、うんと煙を出して３、４日。焼き上がりをこすると、金の光沢が出現した。

小学校高学年向けの環境教育番組。“かけがえのない地球、生命”を大切にするというグローバルな視点を子どもたちが持つことを願って制作。「僕たちの親であり、指導者であり、そしてすてきなパートナーでもある自然を思いやる気持を大切にしたい」というアウトドアライフ派の清水國明の目を通して、リポートする。◆釣り糸やプラスチックの袋など捨てられたごみが、野鳥やウミガメなど生きものたちの命をいかに脅かしているか、多摩川の河川敷での観察や名古屋港水族館での実験を通して見る。

１９７６年登録。◆地中海と大西洋が接するあたりに近いフェズ川の岸に、９世紀はじめに建設されたモロッコ最古のイスラム都市。メディナ（旧市街）は城壁に囲まれ、敵の侵入に備えて路地は迷路のように入り組み、今も車は入れない。ロバやラバが荷物を運ぶ街は生活臭にあふれているが、中心部には巨大なモスクや豪邸がある。◆それらの壁面はタイルモザイクによって飾られているが、その抽象模様の豪華さ、美しさは、驚嘆に値する。短いが、皮なめしと染色作業も見もの。

静岡県水窪町は長野へ抜ける信州街道が通る。ここに伝わる西浦田楽は、中世の頃の芸能で現在の能の原形をとどめているといわれる。徹夜で観音さまに奉納される舞は、地区の人々が世襲で役割を分担して舞う。悪霊を払う「地がため」から始まる舞は、「地能」「はね能」を通して四十数段に及ぶ。舞は、神が邪気、悪霊を払い、豊作を約束したところで朝を迎えて終わる。◆西浦田楽〔静岡県〕

鎌倉幕府を創設、武家政治をスタートさせた源頼朝の全国統一の秘密は、関東武者による戦術革命だった。相次ぐ騎馬戦の勝利の過程の背景を、絵巻物や各地のリポート、合戦シーンの再現、作家・永井路子の分析などによって探る。キャスターは内藤啓史。

原材料のからむしは麻の一種。涼感のある会津上布などで知られるからむし織は、奥会津の福島県昭和村で奈良時代からの歴史を誇る織物工芸である。村で作られたからむしの糸は一度新潟県で染色されて一部は越後上布の材料となり、ふたたび村に戻ってくる一部の糸を織り上げる。その一連の工程は農協が管理運営しているが、問題は手織り作業の伝統を受け継ぐ織り手が１０人程度という実情。村では１９９６（平成６）年から全国的に若い織姫を募集して、後継者の育成など新しい展開を図っている。

世界遺産に指定された合掌造の家がある平村相倉は、村人すべてが浄土真宗の門徒という。この念仏の里の１年を見る。◆岐阜県白川郷と同じく合掌の里はその維持が大変である。合掌造りとともに珍しいのが村人すべてが浄土真宗の門徒であることで、蓮如が築いた北陸の大真宗王国の力を見せつけられる。村の日常は親鸞・蓮如を中心に動いており、人々はおつとめで念仏を唱えることが一番の楽しみであるという。◆【史跡】越中五箇山相倉集落〔富山県〕

絵巻は、特に視覚によって中世を実感するにはこの上ない史料である。絵画である絵巻資料をいかに歴史資料として扱うかを、武士の描かれ方をテーマに考える。対象とする絵巻は、「男衾三郎絵詞（おぶすまさぶろうえことば）」。描かれる人物の行動を追って、絵巻の中を旅する。講師は放送大学客員教授の五味文彦氏。