１９８７年登録。◆アクロポリスはギリシャの首都アテネの中心にある丘。そこに大理石のパルテノン神殿、エレクティオンなどがある。戦争で破壊され、現存するのは紀元前４００年に建造されたもの。建物、彫刻、ともに古代ギリシャ美術の頂点をなすとされる。ギリシャ政府によって保存がはかられており、ジグソーパズルのような修復の様子が興味深い。◆今また酸性雨や排気ガスなど産業公害による破壊が顕著で、イギリスなどに持ち去られた彫刻やレリーフの返還交渉も行われている。

　『ここが私の地球だ』と云って、終生、故郷を離れなかった洋画の巨匠香月泰男の個人美術館が山口県の大隅町にある。東京美術学校卒業後、倶知安中学、下関高女の美術教師となった香月は、１９３９年に「兔」で文展の特選をとり、画家として順調なスタートを切ったが、その直後に応召し、シベリアでの抑留生活を余儀なくされた。この苦しい体験をバネに、画家は身近な画材や平穏な風景をモチーフに膨大な作品を遺したのである。

全国に今も残る大黒柱のある家を取材し、その家族が守り続けている家訓や生活の知恵、大黒柱に対する深い思い入れなどを紹介。◆標高１０００メートルを越える山々に囲まれた檜原村は、東京の西の端、山梨県との境にある。その中の一軒の家は、江戸時代に建てられたもので、この家を２００年支えてきた大黒柱がある。

半導体工場などのハイテク施設から出る産業廃棄物はどのように処理されているのか。苦闘する処理専門工場を取材、ハイテク王国・日本のもうひとつの姿を伝える。◆１９９６年、ロンドン条約により廃棄物の海外投棄が禁止された。全国２千６百箇所の埋め立て処分場はすでに満杯、年間４２０万トンもを海に捨ててきた日本では、総量４億トンともいわれる産業廃棄物問題は深刻さを増しつつある。さらに産業のハイテク化に伴って、処理法も正体もわからない廃棄物も排出されるようになってきた。

日本に現在生息する約５５０種の野鳥のうち、大空を飛翔する姿の美しい鳥たち、澄んださえずりを谷間に響かせる鳥たち１００種の、特色豊かな生態を四季折々の美しい日本の原風景の中につづる。◆この回は、神奈川県照ヶ崎海岸でアオバトの生態を紹介する。

１９９５年登録。◆イタリア・ナポリは、紀元前４７０年にギリシャ人が街を築き、ネアポリス（新しい都市）と名づけたのにはじまる。現在は、狭い路地で広場もない下町の、４世紀にできた旧市街、スパッカ・ナポリが有名。◆ナポリの地下には、もう一つのナポリが埋まっている。帝政ローマ時代のものが、洪水の泥に没したのである。そこには皇帝ネロが訪れた劇場があり、世界最古とみられる地下水道もある。地下ナポリの発掘ははじまったばかりで、２５００年の歴史が解明されようとしている。

近松門左衛門の世話物の名作「心中天網島」（河庄の段の前半）を山川静夫さんの解説で観賞する。三人の人間国宝が演ずるこの舞台は、三業一体のすばらしさを実証し、堪能させてくれる。太夫のエネルギー、三味線の繊細な音色、それに乗った人形のこまやかで生き生きとした表情。ひたむきな男女の心がひしひしと伝わってくる、見どころの一杯詰まった舞台である◆「心中天網島」河庄の段。吉田玉男（重要無形文化財保持者）、吉田蓑助（重要無形文化財保持者）、吉田文雀（重要無形文化財保持者）、竹本住大夫（重要無形文化財保持者）、鶴沢燕三（重要無形文化財保持者）。◆副音声は英語

石川県小松市。九谷焼の窯元三代目の吉田美統さん（当時６４歳）は、先代を早くに亡くし１９歳で継いだ。伝統的な仕事とともに、独自の釉裏金彩を追求している。それは、模様の形に切抜いた金箔を色釉の上に置き、さらに透明の釉薬をかけ、焼きあげる技法。◆日本棋院七段、白江治彦さんが訪ねてくる。囲碁はバランス感覚の勉強になるという。◆窯出しすると、金箔が生きていて、ガラスのような薄い膜の中で光線によって屈折され、下絵の繊細さとともに実に不思議な美しさが現れる。