心の傷を背負った女性と、彼女に献身的に愛を捧げる男性の姿を通して、本当の愛情とは何かを問う。◆第１回「永遠の秘密」。富樫直樹（織田裕二）は、１８歳の時に父親を亡くして以来、家業のクリーニング店と妹・智香を守るために必死に働いてきた。ある日、直樹はアナウンサーを目指す山下舞永（常盤貴子）と出会う。舞永が放送局の試験に落ちて、夢を諦めかけている事を知った直樹は、優しく彼女を励ました。舞永は直樹の誠実さに魅かれていく。

１９９１年、ヨーロッパアルプスのエッツ谷から男性の凍結ミイラが見つかり、エッツィと名づけられた。調査によれば、死亡時期は五千年前。埋葬ではなく行き倒れのミイラだった。だから衣服や持ち物も身につけており、当時の生活を現在に伝えるタイムカプセルになった。エッツィは何者なのか。住まいや暮らしぶりはどうだったのか。その全貌の解明を進めていく。同時に、エッツィを遺物として扱っていいのか、人間の死者として敬意を払うべきかも問われてくる。旅人は夢枕獏。

明治の女流作家・樋口一葉が２４歳の若さでこの世を去ってから、１９９６年で１００年。その節目にさまざまな角度から一葉文学の世界を紹介する。女優・幸田弘子による「たけくらべ」の朗読と、各界の女性が一葉への想いを語るコーナーで構成。◆この回は「テレビ文学館　たけくらべ」の最終回に続いて、「わたしと樋口一葉」で一葉の作品を朗読して２０年という幸田弘子に話を聞く。

近松門左衛門の世話物の名作「心中天網島」（河庄の段の前半）を山川静夫さんの解説で観賞する。三人の人間国宝が演ずるこの舞台は、三業一体のすばらしさを実証し、堪能させてくれる。太夫のエネルギー、三味線の繊細な音色、それに乗った人形のこまやかで生き生きとした表情。ひたむきな男女の心がひしひしと伝わってくる、見どころの一杯詰まった舞台である◆「心中天網島」河庄の段。吉田玉男（重要無形文化財保持者）、吉田蓑助（重要無形文化財保持者）、吉田文雀（重要無形文化財保持者）、竹本住大夫（重要無形文化財保持者）、鶴沢燕三（重要無形文化財保持者）。◆副音声は英語

１９８７年登録。◆長いイスラム教徒の支配を脱したスペインは、１５世紀末、香料獲得の航路開発を東回りにとったポルトガルを追い、西回りに進んで新大陸（インディアス）を発見する。そこからもたらされた大量の富を発展と見るか収奪と見るかは置くとして、港町セビリアには事物や記録が保存されているのは重要なことだ。◆アルカサルには王宮、大聖堂には王室礼拝堂があるが、イスラムの文化とキリスト教の文化を複合させていて、今日の世界のありかたに示唆を感じる。

島根県奥出雲地方には、稲そのものが御神体になる祭りが伝えられている。田の神信仰と祭りの伝統行事を頓原町に見る。◆頓原町の由来八幡宮では、５月から始まり１１月で終わる『田の神の祭り』と八幡宮の例大祭が、同じ神殿で同じ日に別々の神を祭るという珍しい行事がある。田の神信仰は古くからある民間信仰で、八幡様の祭りが始まっても途絶えることがなかったのが原因である。豊作を祈る人たちの信仰は今も変わらない。◆頓原の田の神の祭り〔島根県〕

佐渡の鉱山から出る酸化鉄を含む赤い土は、胃腸に効く漢方薬、無名異。無名異焼はその土の名に因む。赤水窯を継いだ五代伊藤赤水（当時５５歳）を、芥川賞作家新井満が訪ねる。◆伊藤さんは釉薬を使わず炎のコントロールで焼く「窯変」を完成した。色の違う土を組みあげていく「練りあげ」はもう一つの技法。シンプルにすればパワーが生まれるという。◆自分は駅伝の区間を走るランナー、父からのバトンを子供に渡すのだが、区間新を出したい、チャレンジャーであり続けたいと語る。

テオティワカンは、紀元前後にメキシコ中央高原に興った、太陽のピラミッドを中心にする大規模な宗教都市である。そこから緑に光る黒曜石の遺跡が出ている。鉱石は近くの山で採れ、世界でもここにしか産しない。この鉱山の支配と交易権の独占が、テオティワカンの力の源泉のようで、宗教都市の上に国際商業都市の相貌がかぶる。影響は１０００ｋｍも離れたマヤやグアテマラの遺跡からも見られ、８世紀はじめ、突然の滅亡の背後には、世俗の人間的な争いがあったことを想像させる。旅人は篠原勝之。