米軍岩国基地の沖合が埋め立てられ、新しい滑走路が建設されることになった。「基地滑走路沖合移設計画」である。騒音と安全対策が目的だが、跡地変換の計画はなく、基地の拡張につながるとの指摘もある。冷戦後、朝鮮有事に向けて戦力強化が進む岩国基地。沖合移設という大きな節目を迎えた基地の町の行方を追う。

名古屋能楽堂に描かれたのは、６００年の伝統に基づく老松ではなく、前代未聞の若松であった。この若松を描いたのは画家・杉本健吉である。杉本画伯は、鏡板に描く松は伝統的に老松であることを知りつつ、あえて前例のない若松を選んだ。日本の誇る伝統芸能・能の世界に大きな波紋を呼んだ名古屋能楽堂の鏡板に若松が描かれた顛末を描く。◆１９９７年４月、名古屋城三の丸にわが国最大級で、名古屋市が総額５５億円掛けて建設した名古屋能楽堂が完成した。この総桧造りの本格的な能舞台の鏡板制作・寄贈計画は、名古屋市青年会議所の有志と杉本美術館館長の本多静雄氏が中心となって進められた。依頼を受けた杉本画伯は鏡板制作のため、老松の写生に出かけるなど準備を進めていたが、推敲を重ねるなかで「伝統とは何か」という疑問がよぎり、その結果、若松を描くことを決心する。依頼主にも許可を取り、若松の鏡板の製作を進める杉本絵師だったが、内心は不安で一杯であった。それでも伝統に挑戦することを決心し、制作に取り組む杉本画伯の姿を描く。

息子が死亡したのは医療ミスによるものと、両親が病院を相手取って提訴した。和解の方針を出した弁護士を解任し「本人訴訟」として裁判を続ける。法律や医療を猛勉強し、準備書面を作成、みずから法廷に立って闘い、勝訴するまでを追う。◆佐々木正人君は交通事故で救急指定病院に搬送された。打撲だけで生命に別状はないと診断され、腹痛を訴えつづけたが痛み止めと湿布が処方された。ようやく内臓破裂が確認されて手術が行われたが、合併症を起こして亡くなった。◆母親の孝子さんはこの裁判を「息子の敵討ち」といい、訴訟の文書の書き方やレントゲン写真の見かた、救急医療などを図書館などで一から勉強した。１９９７年１月に大阪地裁で原告勝訴の判決が下されたが、病院側は控訴。一方両親は担当医を刑事告訴し、「どこまでも争う」構えである。

ポルトガル南部のエヴォラの街は、紀元前６世紀に古代ローマのシーザーが建設した。のち、イスラム教徒に侵略されるが、１２世紀にキリスト教徒が国土を回復、ポルトガル王国が誕生した。◆ローマ神殿、城壁、水道橋、大聖堂などを見るが、サンフランシスコ教会の、人骨五千体で柱と壁をつくった部屋が圧巻だ。市役所の建物の中では、遺跡の発掘が進行中で、ローマ時代の浴場が出土しているのが面白い。キリストの死と復活を祝う、聖週間の行事の丁寧な紹介もある。

藤野町の強力な支援のもとに復活した、篠原地区の村歌舞伎と人形浄瑠璃。こうした伝統芸能が培われてきた土壌、保存会の取り組みなどを紹介する。

神奈川の花シリーズの最初として、この回は箱根を舞台に、ハコネコメツツジやサンショウバラなどのフォッサマグナ要素の植物や、コアジサイなどの箱根のブナ林に多い植物を取り上げて紹介する。

明治維新前後に活躍した薩摩（鹿児島）の群像を描く◆大久保利通は、岩倉具視などとともに倒幕運動で活躍して、明治新政府では「参議」や「内務省長官」などの要職についた。

日本に現在生息する約５５０種の野鳥のうち、大空を飛翔する姿の美しい鳥たち、澄んださえずりを谷間に響かせる鳥たち１００種の、特色豊かな生態を四季折々の美しい日本の原風景の中につづる。◆この回は淡路島・兵庫県三原町でムクドリの生態を紹介する。