ニュージーランドの南部には、森に住み海で魚を採って暮らす２種類のペンギンがいる。その子育ての様子を見ながら、ペンギンの進化を探る。大陸移動でニュージーランドが孤立したとき、天敵の哺乳類がいなかったため鳥たちは地上で餌をあさり、空を飛べない鳥へと“進化”した。その中で、海に入って飛び（泳ぎ）ながら魚を捕食したのがペンギンである。やがて海流に乗って南半球各地に広がり、それぞれの地に適応した。今も森に住む２種は、進化のプロトタイプ（原型）なのである。旅人は近内仁子。

アフリカ大陸東西の中央、サハラ砂漠の南端にあるトンブクトゥは１５世紀頃、女が操るウンガロスという謎の集団が支配した黄金の交易都市であった。解明してみると、ワンガラというのがこの土地での呼び名で、密林の奥地から来た豊富に金を持つ一族だった。ニジェール川をさかのぼり、ついにかつてのワンガラが拠点としていた都にたどりつく。そこには奇妙な風習とともに、今も金を装身具とする女たちがいた。旅人は桃井かおり。

昭和３０年代、エネルギー革命の中で炭鉱を追われ、南米にわたった炭鉱マンたちの多難な歳月をつづり、今また閉山に伴って職を失った坑夫たちの苦悩を描く。◆昭和３０年代に福岡県から南米に渡った炭鉱離職者は２１９家族に及ぶ。しかし募集の際に聞かされた「楽土」への夢と希望は移住地についたとたんにもろくも崩れ去った。そこは不毛の土地だった。彼らは国に裏切られたのである。◆リオデジャネイロの近くにあるフンシャール移住地にも多くの炭坑離職者が移ってきた。しかし、多くの移民が借金を背負い、失意のままこの地を離れた。また悪化した治安のなかで強盗に殺されたもの、日本へ出稼ぎに戻ってきたものもいる。◆そして１９９７年３月、三池炭鉱閉山。下請けの従業員たちも職を失い、将来への不安は大きい。坑夫たちの悲劇の系譜は綿々と続く。

舞踊を上方では「舞」、江戸では「踊」と呼ぶ。どう違うのかを上方舞の人間国宝、吉村雄輝さんに語ってもらう。「舞」は平面上をなめらかに動き、おだやかで意図的なものであるのに対して、「踊」は躍動感にあふれるものといえる。座敷舞踊の「舞」は、内面的で一人称表現なのに対し、「踊」は劇場の舞踊であり、外向的で多様表現を目指す。吉村雄輝さんは、「舞」の心を一人で舞い続け、気を抜くところがないと、苦心を語る。◆「京鹿子娘道成寺」・中村歌右衛門（重要無形文化財保持者）、「座敷舞道成寺」「鐘ヶ岬」・吉村雄輝（重要無形文化財保持者）、「鐘の岬」・高濱流光妙。◆副音声は英語

全国のユニークなミニ博物館の展示物を、わかりやすくおもしろく紹介しながら、博物館を生んだ「風土」「産業」「人物」などを交えて構成する。◆小川町にある納豆メーカーが平成５年工場の一角に開いた全国唯一の納豆専門博物館。工場を訪れた人達に納豆の知識を深めてもらうのがねらい。納豆にまつわる歴史や作り方などを人形劇やイラストを使って分かりやすく紹介している。

二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆六百年前、朝廷は二つに分かれて互いに争った。河内長野市の天野山金剛寺は、南朝の後村上天皇が６年にわたって住み、政務を執ったところ。金堂には高さ３メートルを越す本尊大日如来像があり、天皇は毎日、北朝打倒の祈願をしたという。そのさなか、南朝軍は京都から北朝の光厳上皇をさらい、人質としてこの寺に幽閉した。それを機に、上皇は仏教に厚く帰依し、心の平安を得て権力から離れた。旅人の月田さんが歌うポルトガル歌謡が、しみじみと胸をうつ。旅人はファド歌手・月田秀子とフォトジャーナリスト・長倉洋海。

金沢が誇るプロ室内管弦楽団「オーケストラ・アンサンブル金沢」が、偉大な作曲家モーツァルトの交響曲第１番から第４１番すべてのシンフォニーの演奏に７年をかけて挑戦する。◆第１２夜では、セレナード第１３番ト長調「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」Ｋ．５２５「第１楽章　Ａｌｌｅｇｒｏ」、交響曲第２５番ト短調Ｋ．１８３「第１楽章　Ａｌｌｅｇｒｏ　ｃｏｎ　ｂｒｉｏ」「第２楽章　Ａｎｄａｎｔｅ」「第３楽章　Ｍｅｎｕｅｔｔｏ」「第４楽章　Ａｌｌｅｇｒｏ」、オーボエ協奏曲ハ長調Ｋ．１３４「第１楽章　Ａｌｅｇｒｏ　ａｐｅｒｔｏ」「第２楽章　Ａｄａｇｉｏ　ｎｏｎ　ｔｒｏｐｐｏ」「第３楽章　ＲＯＮＤＯ　Ａｌｌｅｇｒｅｔｔｏ」を紹介する。これまでの枠を打ち破ろうとする大胆さとドラマチックさを評価された傑作の２５番、それとは対照的にモーツァルトならではといわれた伝統的な第２６番の違いが聞きどころ。指揮は岩城宏之、コンサートマスターはマイケル・ダウス、オーボエは宮本文昭。１９９７年５月１４日、東京・浜離宮朝日ホールで収録。

山口県周防大島にひとり暮らすフリーの報道カメラマン・福島菊次郎の、反骨の人生を追う。◆１９６０年代に各地で起きた反体制運動にカメラを向け続け、国家のでたらめぶりを告発しつづけてきた福島さん。しかし時代は変わり、彼の写真を積極的に取り上げるメディアはなくなった。時代に迎合することを拒み、彼は東京を捨てて大島へ入り、誰にも頼らずに老後を行きぬく道を模索してきた。「なぜ撮るのか」を彼は語る。