貧乏長屋の連中が花見に行こうとするが、酒や肴を買う金がない。大家は、各自で持ち寄ることを提案する。いい考えだと賛成はしたものの、もともと貧乏暮らしの連中には何も無い。仕方がないので他人の売り物をちょっと失敬したりなどして集めてくる。折角の鯛を、料理の仕方も知らず犬にやってしまったり、味噌を摺るすりこぎを知らなかったりと、トンチンカンなことばかりで大騒ぎをしながらの準備風景を面白く語る。

竹本住大夫さんと鶴澤燕三さんの義太夫「生写朝顔話・宿屋の段」を鑑賞する。◆「生写朝顔話」は「朝顔日記」ともいい、芝居や歌舞伎のファンにはお馴染みの江戸時代版『君の名は』。この「宿屋の段」は、別れ別れになっていた主人公の男女が宿屋で思いもよらぬ再会を果たすというくだり。◆住大夫さんは「主人公・深雪の可愛らしさをどう表現するか」。燕三さんは「失明した深雪の悲しさを秘め、しかも音曲として楽しめる演奏」と、この作品を演ずる難しさを語っている。

無口で実直な生き方を通してきた男が妻に逃げられた。自分を否定されたような思いを抱き続けてきた男は、定年間際の異動と単身赴任をきっかけに、新しい生き方を模索する。（全２回）◆前編「再会」。鉄道会社の技術畑で仕事一筋に歩んできた立石実郎（高倉健）は、定年間際に北海道でのテーマパーク建設責任者を命じられた。畑違いに見えるこの人事を、実郎は進んで受け入れた。４年前、実郎とは正反対の男と駆け落ちした妻に自分の生き方を否定されたように感じていた彼は、異動と北海道への単身赴任をきっかけに、自分を変えようとしたのだ。厳寒の北海道納布加野敷、しかしその町には妻・志津江（大原麗子）と男・菊川隆彦（杉浦直樹）がひっそりと暮らしていた。

小泉八雲の「怪談」から３編を原作に、映像処理や特殊メークなどを駆使した演出で幻想的な効果を出したドラマ。◆「耳なし芳一（久世光彦演出）」平家の霊を慰める盲目の琵琶法師・芳一は、二位の尼の霊に取りつかれる。死へ誘う霊から芳一を守るため、和尚は彼の全身に経文を書き込む。◆「むじな（三輪源一演出）」紀尾井坂を夜更けに通りかかった商人・太兵衛は、堀端で泣いている娘に声を掛ける。振り向いた娘の顔はのっぺらぼう。逃げだした太兵衛は夜なきそば屋へ駆け込む。◆「雪女（瀧川治水演出）」樵の巳之吉は若いころ山で雪女に殺されかけた。そのことを人には話さない約束で命を助けられたが、ある吹雪の夜女房のお雪にその話をしてしまう。

生まれつき右手首から先がほとんどないという障害を抱えながら、高校の野球部でレギュラーを獲得した少年の、球児としての最後の夏までを追う。◆伝田寛くんは両親の結婚後４年目に生まれた待望の子供。障害にも負けない明るい野球少年に育った。高校でも野球部に入部、何でも人一倍頑張る彼はみごとレフトのレギュラーの座を得た。高校３年の春、無理がたたって右足を傷め、夏の大会では補欠。高校最後の夏を追う。

新年の３日間、伝統芸能の中からめでたい演目を選んで紹介し、あわせて出演者の芸談を聞く。第１日は井上八千代さんによる京舞「菊」および中村富十郎さんほかによる舞踊劇「春日龍神」。◆「菊」は能の「猩々」から、菊酒に酔った猩々（酒好きな妖精）の舞「乱れ」をとりいれた舞。◆「春日龍神」は、唐へ渡って仏跡を巡ろうと思った明慧上人が春日の神にいとまごいに出かけるが、猿沢の龍神にいさめられて思い直す、というもの。龍神は上人をつけ狙っていた荒法師を追い払い、三笠の山に天竺を映しだして見せる。

隠居が伜に店を譲り、たまたま気に入った家があったので手に入れようとするが、そこはお化け屋敷で幽霊が出るという。一緒に連れていこうとした奉公人は、キリがよいので暇をくれと申し出るが、それを引き止めて屋敷へと移る。隠居は何も気にせず、化物が出てくるとあれこれと用事を言いつけるので、化物までが暇を欲しいと言いだす。

金箔の技術は、６世紀の仏教伝来とともに日本に伝えられた。以来日本化され、世界に類を見ない発達向上を遂げた。黄金の国として独自の日本美を築き上げた。◆金箔の大部分を生産する金沢市での詳しい製造工程を追い、１万分の１ミリまで引き延ばす繊細な作業を見る。そして截金や蒔絵などの現代作家の妙技を紹介しながら、日本人だけが切り開いた黄金の技が海外でも高く評価されている事を明かす。◆【国宝】盧舎那仏坐像〔唐招提寺〕、釈迦如来像〔神護寺〕◆【その他】截金作品瑞鳥（西出大三作）〔個人〕、蒔絵喰籠四君子（寺井直次）〔個人〕