長野を代表する諏訪湖と野尻湖における自然再生の様子を、長期取材により記録したドキュメンタリー。◆自然が自ら水を浄化していくメカニズムを解明するとともに、「人工なぎさ」にヨシやマコモが成長していく様子をはじめ、絶滅したと思われたホシツリモの発芽を記録するなど、「再自然化」への具体案を示す。また、いったん破壊してしまった自然の再生の難しさ、自然と人間との関係を考える。

椀久こと、豪商椀屋久兵衛と傾城松山の恋模様を描いた舞踊で、長唄の名曲かつ難曲として知られる。椀久の幻想の中で、松山が椀久の衣装を纏って踊る処から、「二人椀久」と題された。世話物の代表的な演目であり、杵屋社中の長唄が舞台を盛り上げる。番組後半は、終戦直後から一時期、全国的に興業を広げた市川少女歌舞伎で、立女形として活躍した市川梅香さんに、当時の思い出話をきく。梅香さんは今も、少女歌舞伎発祥の「豊川をとめ歌舞伎」を中心に、演劇活動を続けている。◆舞踊　長唄「二人椀久」

半世紀にわたって世界各地を取材してきた民族ドキュメンタリーの巨匠、牛山純一の演出で、異文化、民族の心を問う。（１９９５年２月、ＮＨＫ「ＢＳスペシャル」枠で放送）◆牛山は、１９７６年にアフリカ南部のカラハリ砂漠に住むサン族の一部、ジェワ族の村に長期滞在し、ブッシュの民の伝統的な生活を体験した。その時に親しくなった名ハンターのカオや最年少だったカーイシエとの再会を軸に、１８年間で変わってしまったカラハリ砂漠やブッシュの英雄たちの生活をドキュメントしながら、２０世紀の民族文化の変容を浮き彫りにしていく。

秩父地方の山里には、子供組と呼ばれる７歳から１５歳くらいの子供たちの集まりがある。一人前の村人になっていく姿は興味深い。◆それぞれの地区には子供たちが中心になって行う祭りがある。寺子屋の名残を見るような初天神・お雛粥・花祭り、どれも親は手を出さない仕来りである。天王焼き・獅子舞等１年を通じての祭りを経験して、１５歳になると昔の元服の式に当たる水祝儀があり少年たちは大人の仲間入りをするのである。◆初天神〔埼玉県〕、お雛粥、花まつり、天王焼き、獅子舞、水祝儀

主（あるじ）が留守中の道具屋に、加賀屋佐吉から早口の名古屋弁でしゃべる使いが来る。「先日取り次ぎの七品のうち…のんこの茶碗…黄檗山（おうばくさん）金明竹、ずんどうの花活け…かわず飛び込む…これは風羅坊（ふうらぼう）の掛け物で…」とまくし立てて帰る。聞いていた与太郎と女房、何度も聞き返したがわからない。◆新作作りで知られる圓丈が、もとは早口でしゃべる上方弁を名古屋弁でしゃべる落語にしたもの。

「村や家に伝わる民間伝承の多くが消えようとしている。ＮＨＫでは放送７０周年を期に、地域を見つめて今も暮らしの中に生きている伝承文化を記録するシリーズを組んだ」◆第１回は、石川県奥能登の農村の「田の神」を迎える行事を取材。田の神をごちそうしてもてなす『饗の事』、豊作祈願の『万歳楽土』、先祖の霊を迎える『精霊さん』など。田の神との深いつながりの行事で、「能登はやさしや土までも」と豊作を願う農民の姿を描く。◆【重要無形民俗文化財】奥能登のあえのこと〔石川県〕◆【その他】万歳楽土、精霊さん〔石川県〕

若き政宗公の下僕だった真壁平四郎、ある冬の日に懐で温めていた履物を差し出すと、尻に敷いていたと誤解され、その履物で眉間を割られ血を流して倒れる。無念の平四郎、偉くなって見返そうと、やがて出家して京都や唐土（もろこし）の寺々で修行を積み、権僧正の雲居禅師（うんごぜんじ）となった。やがて政宗が瑞巌寺を建立した時、開山導師として招かれ政宗と対面した雲居禅師、私は昔、眉間を割られた平四郎です、と打ち明ける。

北海道で一番早く春を迎える松前、江戸時代には日本最北の城下町として栄え、北前船が競って通う港でもあった。今、お城の周りの松前公園は、八重桜を中心におよそ２５０種類の桜が８千本植えられていて、４月下旬から次々と花を咲かせる。松前公園の「南殿（なでん）」と呼ぶ種類の桜の親木に当たるという、樹齢二百数十年の「血脈桜（ケチミャクザクラ）」がある光善寺で、住職にその桜の伝説などを聞く。