一つきの梵鐘の音。その余韻は山上に重く、町中には軽く、荘厳さと平和の安らぎを運ぶ。◆香取家は代々梵鐘製作にたずさわる家系で、父・秀真も鋳金作家として名高い。戦時中梵鐘を供出した多くの寺の再建の熱意が、親子合作を手がけさせたこともある。鐘の内側に彫り込む図案づくりから鋳込みの緊張の一瞬まで、米寿を前にした作家の鋭い眼差しを追う。

徳川幕府末期に海軍副総裁として活躍、函館に共和国を樹立して官軍と戦うも敗れたが、新政府では海軍・外務などの大臣職を歴任した榎本武揚。“裏切り”“変節”とも呼ばれた彼の人生に、５代目の子孫に当たる榎本不二子さんのリポートで新たな光を当てる。◆地理測量家伊能忠敬の弟子を父として生まれた武揚は若い頃箱館（函館）を訪れたり、長崎で航海術を学んだりして開明的教育を受け、更にオランダ留学で国際性も身につけていた。戦争や仕事で各地を転々としながら、家族には細々と綴られた手紙を数多く送っている。開拓時代の事業によって土地の人からは尊敬され、徳川育英会を組織し、東京農業大学の創始者でもある。その足跡をたどる。

１９８６年３月２２日に放送された「今、あらためてテレビとは」に対する反響を紹介、再討論する。◆３月２２日の番組で問題になったのは、センセーショナルな扱い、人権やプライバシーの侵害などの過剰報道、また真実を伝えているか、ジャーナリズムとしてなすべき事をしているか、であった。その日に寄せられた反響の電話だけで６００本に上った。テレビの現状を憂うもの、人間性の欠落を非難するものなど厳しい批判も多かったという。

チェコスロバキアの首都プラハから東京へやってきたガラス工芸デザイナーのオルガと、花屋の少年草平やチェロを弾く少女陽子、そして近くに住む人々との心と音の交流を、師走の東京を舞台に描いた映像詩。◆こわれやすいガラス玉のように青く輝く地球、その上のシティ・東京には、さまざまな人間が暮らしている。亡父のチェロを東京の友人に届けに来たオルガは、良い心の目と耳を持った人々と出会い、あたたかい交流を体験する。

「科学の目」を持って世界を紹介する、科学ドキュメンタリー番組。（１９７５年４月６日～１９８６年１２月２８日）◆日本に輸入されてくる品物の例として、タイのアジやアサリ、フィリピンのロブスター漁を中心にとり上げ、それらが日本人の生活の中でどのような形で現れているかを追う。

歴史的価値のある建造物を暮らしの場として生かしながら、文化財として保存もしていく。そのような活動に積極的に取り組んでいる函館市の様子を伝える。◆１９８８年（昭和６３）、函館市は「函館市西部地区歴史的景観条例」を制定した。これは歴史的価値のある建造物や町並みの保存・継承を目的とした条例で、市民が建物を建て替えようとする時は、市が補助金を出して古い形を生かすよう奨励している。番組では、現在も店舗や住宅として使用されている文化財を紹介しながら、市民生活と文化財保存の共存という新しい方法を提示する。

「いつ別れてもいい…」４つ年上の滝子（藤真利子）の言葉に甘えている銀行員・良二（古尾谷雅人）は、彼女との深い関係を何年も続けていた。毎朝、駅で良二に弁当を渡す滝子、そんな滝子が次第に疎ましくなってくる良二。ある日、良二に２３歳の女性との縁談が持ちあがる。決意した良二は、滝子の３３歳の誕生日の夜に、別れ話を切り出す。良二の結婚話は順調に進み、そして独身最後の夜、良二は酒の勢いで滝子に連絡する。原作：松本清張。

ハレー彗星が地球に最接近する３月３日、３人の女子高生がカメラを通して不思議な体験をする物語を、３話のオムニバスで描く。原作：藤子不二雄「異色短編集」より。◆夢ヶ丘高校に通う白鳥小夜子（中山美穂）、杉田はる奈（荻野目洋子）、田所鏡子（小泉今日子）の３人は、洞口先生（イッセー尾形）からこの日カメラを通して不思議なことが起こると聞く。◆「不思議少女・サヨコ」（脚本：金子成人）小夜子は片思いの相手と写真を撮ってみた。すると二人は互いの心が読めるようになってしまう。◆「しあわせの黒い鳥」（脚本：松原敏春）はる奈は両親の復縁を願いながら、父と愛人の写真を撮った。すると親子３人がひな祭りを楽しむ姿が現れる。◆「じゃんけんぽん」（脚本：市川森一）鏡子の前に７歳で死んだ双子の妹が現れ、二人は入れ替わってしまう。