江戸時代の博物学の奇才、平賀源内（１７２３〜１７７９）。四国・高松藩に出仕、本草学で頭角を表わし、長崎留学を命ぜられ多くの知識を修める。そして３２歳で藩を辞し江戸に出る。鎖国の時代、海外知識を駆使して産業・発明・高山開発などに独創性を発揮する一方、洋画・陶器・戯作などあらゆる分野で多彩な活躍を見せる。だが事業の多くは未完成で、世人からは奇人と見なされ不運のうちに獄死する。好奇心に満ち、時代を先取りした江戸期抜群の俊英の足跡を振り返る。◆量程器〔鎌田共済会郷土博物館〕、時計〔志度寺〕、エレキテル第一号〔平賀源内先生遺品陳列館〕、本草図説〔西尾市立図書館〕、ビードロ瓶〔曼殊院〕、平賀源内肖像〔慶応義塾〕、杉田玄白肖像〔早稲田大学〕

ヒマラヤの峰々と熱帯性密林に囲まれた自然環境から、幾世紀にわたり鎖国状態に置かれていたブータンの独自の文化を紹介する。◆人喰い伝説のあった狩猟民族や、神の使者とされる黄金の猿をはじめとする珍しい動物、パの大祭典の全容など、ブータンの未知の部分に迫る。

長崎平和公園の駐車場建設工事現場から旧浦上刑務支所あとが発掘されたのを契機に、強制連行されて祖国に戻れぬまま亡くなった人々に対する日本の対処を探り、戦後処理のあり方を問う。◆同支所には冤罪の可能性もある中国、韓国・朝鮮人が多数服役しており、原爆投下によって犠牲となった。今回初めて確認された遺族のもとには死亡通知も届いておらず、遺骨返還の求めにも刑務所側が応じなかった。爆死した中国人の遺骨は天津抗日殉難烈士記念館に納められていることが確認され、遺族は涙ながらの対面を果たす。この跡地を日本の戦争への反省のあかしとして保存しようとする市民団体の運動、それに対する市および住民の反応も紹介する。

作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔を探るシリーズ。◆明治・大正時代、女性として自立し、芸術家として生きようとして傷つき、次第にこの憂き世から離れていった高村智恵子のひたむきな一生を描く。

神宮をとりまく伊勢志摩の自然と人々のかかわりを見る。遷宮特別企画。総合司会は森本毅郎。◆第二回「美し国　伊勢」。黒潮の流れる熊野灘からは数多くの海の幸が獲れる。のし鮑、干し鯛、塩などが作られ、神宮に納められている。またここには、ダイダラボッチを相手にした巨大な草鞋の神事、二つめの日輪をたたき落とすゲーター祭などもある。◆山の幸の第一は稲作で、神宮の神田ではお田植祭が行われる。さらに、神宮をとりまく鳥路山・神路山の広大な神域には、３７００種もの動植物が保存されている。歌人の岡野弘彦さんほか。

従軍慰安婦や元日本軍兵士など、アジアの各地から個人補償を求める訴えが高まっている。今なぜ日本の戦後処理が問われるのか。アジア全域にわたる訴えの現場を調査、さらに韓国１０００人訴訟の原告団の戦後と、戦後処理の典型といわれる日韓条約の交渉過程を最新資料をもとに検証する。

“東洋のガラパゴス”といわれる沖縄・琉球列島を取材、４種みつかった新種発見にまつわるドラマとともに、リゾート開発などで変ぼうする沖縄の環境問題をリポートする。◆戦後、沖縄では１９６５年のイリオモテヤマネコ、１９８１年の飛べない鳥ヤンバルクイナ、１９８２年のイリオモテキクガシラコウモリ、そして日本最大の甲虫となったヤンバルテナガコガネが１９８３年と、生物界の大きな発見が４つあった。しかし同時に開発も進みつつあり、「２０世紀最大の発見」とまでいわれるイリオモテヤマネコの数も減りつつあるという。

入船亭扇橋が、明治の巨匠三遊亭円朝作の落語“鰍沢”のさわりを富士川辺りで一席。ＪＲ身延線を富士川に沿って旅する。鰍沢は、信州往還と駿州往還の追分の宿場町として栄えた町である。ここでは、日本の硯の最高級品といわれる「雨畑硯」が作られている。昔ながらの製法で硯を造りつづけている老舗を訪ねる。見延では硯や筆架、筆筒などをすべて陶器で作る工房などを訪れる。旅人は入船亭扇橋。◆第１１１０回　◆見延山久遠寺