武田鉄矢の自伝的エッセーをもとに、鉄矢少年の貧しいけれど明るい日々とそれを見守る母キクの奮闘を描く。第２部は第１部から２年経った昭和３８年（１９６３）の武田家である。◆九州・博多。鉄矢の母・キクは豆腐売りや服の寸法直し、米軍キャンプのメードをして生計を立てている。鉄工所に勤める夫・克元が給料を酒代に注ぎ込むせいだ。腹をすかせた鉄矢は、金欲しさにくず鉄ひろいを始めるが、度を越して警察に補導されてしまう。そんな折り、姉・安江が見合いをすることになった。（７月１５日終了、全２０回）

　人間国宝、芹沢?_介の作品を集めた日本で唯一つの型染め専門の美術館が、弥生式住居の復元で知られる、登呂遺跡公園の中にある。芹沢?_介（１８９６～１９８４）は、静岡市の出身。それまで職人の分業による作業であった染色を一人の作家の手による芸術作品にまで高めた。大胆な色使いと単純化された形、着物、帯、屏風、のれんなどの作品に、伝統とモダン、抽象と具象が自在に交錯する。芹沢の独特な世界である。（静岡市）

早期胃がんに対する内視鏡治療の生中継と視聴者向けのスタジオ解説を柱に、がん治療における早期発見、早期治療の重要性を訴える。◆１９９３年５月、肺がん・胃がんの死亡率が全国ワースト３にランクされる新潟県で、日本消化器内視鏡学会が開かれた。ハイライトの手術中継ではスタジオ解説に加えて視聴者からの質問に医師が答える形をとり、がん治療の最前線がどこまで進んでいるのかを伝えた。◆早期の胃がんの摘出は、熟練の医師であれば４～５分、ほとんどは１０分もあれば済むという。ファイバースコープの先にワイヤーが出て病変部を摘みあげ、高周波の熱で切除する鮮やかな技術は医療の進歩を実感させる。

午後１１時１０分から５５分間のニュースの中のコーナー。手付かずの自然が残る奥只見に住むという巨大イワナを、二夜連続の特集で追う。◆奥只見の新潟側を流れ、銀山湖に注ぐ北ノ又川は日本でただひとつ通年禁漁となっている川。産卵の時期が迫ったイワナの生態を、晩秋の奥只見の美しい自然とともに伝える。

出雲阿国が京都で歌舞伎踊りを始めて３９０年になる。四條河原、北野天満宮などゆかりの地を訪ね、伝説的な阿国の足跡をたどり、藤間勘十郎と人間国宝の中村雀右衛門による「歌舞伎草紙」の華麗な舞台を鑑賞する。渡辺保は、歌舞伎の始祖とされる阿国には謎が多いが、出雲大社の巫女とも言われ、宗教と芸能との結びつき、また、男装して廓出入の「かぶき者」を演じ、相手役の女形を男が演じて、虚構の性の転換を見せたことの二点で、その後の芸能史に大きな影響を遺したと指摘する。

釧路湿原や摩周湖などを描き続け、“湿原の画家”として知られる釧路市在住の画家・佐々木栄松（えいしょう）氏の７０余年にわたる創作活動を紹介する。◆佐々木さんは１９１３年（大正２）網走管内置戸に生まれ、子供の頃から釧路で育った。幼い頃釧路の印刷工場でリトグラフの画工として養成され、隣に若い画家が住んだこともあって油絵の魅力にとりつかれ、独学する。釧路大空襲によってすべてを失い、戦後はポスターや看板を描いて細々と生計をたてた。やがて各種コンクールで賞をとる一方油絵研究を続け、印象派的絵画にいきづまって独自の画風を生み出す。絵画のほか釣りに関する著作も多く、イトウ釣りの先駆者的存在でもある。◆新春特番

死に近づきつつある患者を支える「終末期医療（ターミナルケア）」に取り組む長野県の小さな病院の様々なケースを通して、人間としての「安らかな死」とは何かを考える。◆現在の医療システムは“治療・延命”の論理で動いており、誰も避けられない“死”のための治療はなされていないのが現状である。しかし高齢化が進む地域の病院にとって終末期医療は現実の問題。長野県上高井郡小布施町にある小布施新生病院は、一般病院ながらターミナルケアに取り組んでいる。１年４カ月にわたって、患者を支えるスタッフの姿、そして様々な死を取材し現在の終末期医療の問題点を浮きぼりにする。

常磐津の演目二題。「源太」は、宇治川の先陣争いなど、源氏の花形武者、梶原源太景季を吉原通いの伊達者に見立て、１８０８年（文化５）、三代目坂東三津五郎が初演して評判をとった出し物。これを下地に、５年後の１８１３年（文化１０）に七代目市川団十郎が、今度は平氏の武将、悪七兵衛景清を主人公に「景清」を演じ、これまた大当たりをとった。渡辺保は、源平合戦の華々しい戦いを廓の中の男女の戦争に移し替え、ユーモラスに換骨奪胎してしまう、江戸の庶民の洒脱な感覚に注目する。