奔放な母と、そんな母のために苦労を重ねながらも、時代に立ち向かう娘の確執を描くドラマ。（全２回）◆神波伯爵が病死し、朋子は愛する人の葬式にも出られない身には二度となるまいと誓う。母・郁代は年下の男衆と三度目の結婚をするが、本当に好きだったのは朋子の父だけだと言う。そんな母に呆れる朋子は、実業家の野沢に請われて再び日陰の身となる。その後、朋子は戦争で焼け出されて無一文になるが、戦後開いた料亭で成功する。ある日、かつての恋人・江崎が戦犯として絞首刑に処せられると知る。

東京から上越新幹線と高速船を乗り継いで２時間４０分、佐渡への距離も縮まった。カンゾウの花が群生する島の最北端の景勝地、大野亀の地をふり出しに、３６棟もの能舞台があるという芸能好きな土地柄を歩く。能はもちろん盛んであるが、義太夫以前の古い文弥人形の一座もあり、のろま人形の民芸品づくりを見る。これらすべての芸を支えるのが、島で日々の生活を営む人々である。旅人は谷村志穂。◆第１１５４回　◆大膳神社能舞台（真野町）伊豆神社能舞台（両津市）清水寺（新穂町）

１９９３年の大相撲初場所は、２人の力士が歴史を塗り替えた。初めての「外国人横綱」となる曙、「史上最年少大関」となる貴花田。２人の師匠である親方は、相撲界に１つの時代を画した高見山と貴ノ花である。平成の相撲界にとって大きなエポックとなる力士２人の苦難の道、生い立ちから千秋楽までの道程を描く。

文楽が盛んな上方では、日本舞踊や寄席芸の世界に、わざと、ぎこちない人形の所作をとり入れて、凝縮された人間感情の表現やおかしみを強調する”人形振り”というジャンルが確立されている。演劇評論家権藤芳一氏の解説と人形師、舞踊家、三味線方などのエピソードを交え、文楽の”火の見櫓の段”と、”櫓のお七”の舞踊など、それぞれの舞台を鑑賞しながら、”人形振り”の世界を探訪する。大阪の国立文楽劇場では、高校生の体験講座など、古典芸能理解のための努力を重ねている。

わずか１０センチほどの金属の上にさまざまな意匠を凝らした日本刀の金具、鐔。それは実用品であるとともに武士が己を語る重要な役目を果たしていた。鐔職人たちは自分の持つ極限の技を小さな金属に込めた。戦国時代には実質的であり、刀を抜かなくなった江戸期になると華美になって金工芸として爛熟の域に達する。精魂込めて作られた昔の鐔と、現代も受け継がれている装剣金工の製作過程を見ながら、一見見逃してしまいそうな日本の美と心を賛美する。◆正阿弥百足図鐔、忠吉秋草図鐔、兼重七星に題目鐔、四子降生蛙詠歌図鐔、安親文字鐔、友恒藻貝図鐔、光広千匹猿図鐔、平田春寛雪華紋七宝鐔

近代日本の文学名作を、一流の演出家が競作する２週完結型のシリーズ。高利貸しの囲われ者と学生との恋情を描いた森鴎外の「雁」を久世光彦が演出した。（１９９３年５月３日開始）◆無縁坂の途中の妾宅に住むお玉（田中裕子）は坂の上の下宿住まいの医学生岡田（石橋保）に淡い思いをいだくようになっていた。雁の来るころ不忍池の近くで火事があり、父の身を案じて駆け付けたお玉は荷物運びを手伝う岡田と顔を合わせ、ときめく胸に岡田への思慕を改めて感じる。岡田もお玉のことを思っていたが二人とも口に出せない。やがて岡田にドイツ留学の話が持ち上がった。それは岡田にとってまたとない機会であると同時にお玉との別れを意味した。

青森県域の風土や産業、人々の暮らしなどを記録したドキュメンタリー番組。（１９９２年４月５日～１９９４年３月２７日放送、全３６回）◆英国人コラムニスト、アラン・ブース氏の遺作「津軽」を紹介しながら、氏ゆかりの地を巡る。彼の鋭い風刺は、青森を故郷と思う気持ちの裏返しでもあったと言われている。ブース氏が唯一心を休めることができた場所、それが青森「津軽」であった。

地域に根差した発想と舞台で、ＮＨＫ地方局が制作するドラマシリーズ。第３回はＮＨＫ広島。晩秋の伯耆大山のふもとを舞台に、老境の迷いと平静、自然の輪廻のなかの人間を描く。原作：野坂喜美。◆和牛の産地、鳥取県大山。妻と二人暮らしの大吉（中条静夫）は、繁殖用の和牛を育てることが生きがいだった。しかし、妻・留乃（中村玉緒）は最近の夫の様子をいぶかしみ始める。ぼんやり考えごとをしたり、ささいなことで突っ掛かってきたりするのだ。そしてある日、大事に育ててきた牛“さゆり”を「日・米・豪　３か国　牛肉味くらべ大会」に出すと言い出した。