男が、隣家から頭と尾だけ残った鯛をもらった。ざるをかぶせるといかにも立派な鯛に見える。おりしも訪ねてきた兄貴分が、その鯛を肴に飲もうと酒を買って来た。いまさら身がないとも言えず、ネコがくわえて行ったとごまかす男。兄貴分は仕方なく魚を買いに行った。男は、その隙に買ったばかりの酒を全部飲んでしまう。

近代日本が生んだ世界的画家・富岡鉄斎は、幕末・明治・大正の三時代を生き、神道・仏教・儒教に通じ、独立独歩で豪放な画風を打ち立てた。人格を磨かなければ描いた絵は三文の価値も無い、というのが持論で、文人画家の理想とされる「万巻の書を読み万里の路を行く」という言葉を実践すべく努力した。北は北海道から南は九州の先までを旅して各地の風俗を、書物の中から人物画を描いた。８９歳、最晩年の「瀛州遷境図」に仙境を現わし、最後の文人画家として名を残した。◆富士山図（清荒神清澄寺）、煙霞幽情図（清荒神清澄寺）、蝦夷人熊祭図（清荒神清澄寺）、瀛州遷境図（清荒神清澄寺）、叡山雪景図（京都市美術館）、魚藻図（大和文華館）、寿老図（大和文華館）、閻魔図（大和文華館）

「健康づくりを楽しもう」をテーマに、様々な人間と健康づくりの事例をトークやドキュメンタリーで紹介。中村敦夫キャスターの視点を通して、“押しつけ”でない“自主的な行動”を訴える。（１９９３年１２月７日〜１９９４年１月２８日放送、全５回）◆第４回は「寝たきりを防ぐ」がテーマ。１９９０年度から厚生省が展開している“寝たきり老人ゼロ作戦”では、寝たきりにならない、させないという意識を徹底させることで、２１世紀には新たな寝たきり老人をゼロにしようというもの。避けられない不測の事故に対しては、リハビリの充実で機能回復を図る。機能回復は人間としての権利、名誉の回復でもあると訴える。

盲導犬と共にアメリカでの生活をスタートさせた全盲の松川恵理子さんの姿を通して、障害者福祉に対する日米の考え方の違いを浮き彫りにするとともに、ハンディに負けず前向きに生きようとする一人の少女の奮闘ぶりを伝える。◆仙台市に住む恵理子さんは小中学校と普通学級に進み、健常者とともに学んできた。彼女の夢はアメリカで社会福祉学を学んで国際的なソーシャルワーカーになること。この夢を叶えるため、恵理子さんは盲導犬と暮らすための訓練を東京で１か月受け、念願のパートナー「ウルムス」を得た。そしてアメリカの大学を受験するため日本を旅立った。◆特集・ハンディを越えて

平家の栄華が盛んな頃、斎藤滝口時頼という武道に長けた侍がいた。ある日、清盛から花見の宴に招かれた時頼。しぶしぶ出向くと、歌を歌う美しい女性に心を奪われてしまう。が、時頼の思いは相手に伝わらない。さすがの時頼も恋の病に…。

新内節は浄瑠璃の分派の一つで、幕末の二世鶴賀新内が美声で評判を高めて以来、「新内節」の呼称が定着した。心中道行物を中心に、庶民の人情の機微を切々と語る。この曲も、元禄８年（１６９５）に実際に起きた心中事件が題材で、人形浄瑠璃でも「艶姿女舞衣」として知られている。江戸中期から昭和の初めにかけて、日本では心中事件が度々起こり、特に元禄時代には「流行」したとさえいわれる。その原因と社会的背景について、「心中考」等の著書がある大原健士郎教授に聞く。◆新内「千日寺名残鐘」三勝縁切の段　　

戦争中「日本人」として動員されながら、戦後は国籍の壁に隔てられて補償を受けられないままになっている旧日本軍朝鮮人軍人・軍属の人たちの怒りを伝える。◆日本の植民地支配下に置かれた朝鮮から動員された人は２４万人にのぼるという。しかし戦後日本政府が打ち出した一連の援護立法は、対象を「日本国民」に限定していた。その後政府は帰化を条件に補償を行うと決めたが、かつて国籍や言語、姓名を奪われた思い出を持つ人々には容易に受け入れられるものではなかった。◆シリーズ・４９年目の夏に

日本で生まれた子供がなぜ日本国籍をとれないのか。大きく取り上げられた係争中の裁判を取り上げ、無国籍になった背景、属人主義に立つ国内法の不備、かたくなさを衝き、同時に養父母の米国人牧師夫妻の目からみた日本社会の狭量さを告発する。◆長野に住む３歳の男の子アンデレ・リースくんの母親はフィリピン人とみられるが行方不明、父親は誰だか分からない。幸いリース夫妻の養子となったが、日本もフィリピンもアメリカもアンデレくんに国籍を与えてくれない。リース夫妻はアンデレくんの国籍を求めて裁判を起こした。（放送後の１９９４年１月、最高裁は日本国籍を認める判決を出す）