秋の風情を織りなす舞踊二曲を取り上げる。江戸時代には、町人の娘が行儀見習いのために、武家屋敷に奉公に上がることがよくあった。そして年に一、二度、お暇を貰って生家に帰る宿下がりが、何よりの楽しみだった。常磐津「屋敷娘」は、宿下がりの娘の初々しい有様を描く。一方、清元「雁金」は、成熟した女性が恋人によせる想いを、雁が行く秋の夜の情景に托し、しっとりと舞う。また、歌舞伎の舞台に登場する文金高島田や丸髷など女性の髪型の変遷について、鴨治歳一さんに聞く。◆舞踊　常磐津「屋敷娘」、舞踊　清元「雁金」、鴨治歳一【選定保存技術（歌舞伎床山）保持者】

浅草で若い姉弟が「ガマの油」を売っていると、一人の侍が薬をつけてくれとやって来た。侍の傷を見た二人は親の仇と身構える。侍は「ここは観音様の境内だから、果たし合いは明日、高田馬場で」と約束した。その翌日、高田馬場には見物人が集まり、付近の飲食店は大賑わい。たが、なかなか仇討ちは始まらない。

始末（ケチ）の名人がその方法を客に教える。◆客が１個の梅干で３度の食事をまかなうといえば、「梅干を食べてはいけない。眺めるだけ」と名人。感心した客が始末の極意を尋ねると、名人は客を庭に招き、大きな松の枝にぶら下がるように言った。

終戦を境に激しい価値観の変化をみた昭和という時代。「昭和」を語り継ぐことをライフワークとする澤地久枝さんが、その時代を生きた人々の人生から昭和という時代を見つめる。（１９９４年４月４日～６月２０日放送、全１２回）◆第２回は、満州事件の発端となった柳条湖事件という「有事」に対する「作為」のありようについて考える。

大店の徳三郎とおそめは、人もうらやむ仲の良い夫婦。ある日おそめが病に倒れ、手当ての甲斐もなく亡くなった。その後、おそめが言い残した通り、徳三郎は後添いを迎える。しばらくすると、夜な夜な表の戸を叩き「おすわどーん」と後添いの名を呼ぶ声がするようになった。それが元でおすわは病の床に。徳三郎は剣術の先生に、この幽霊の退治を頼む。

昭和２年の初舞台以来、女優生活６７年目を迎えた杉村春子。昭和１２年に文学座の結成メンバーとして舞台に立って以来、常に日本の新劇界の第一線を歩きつづけてきた彼女の意欲的な舞台人生を、インタビューと舞台中継で紹介する。（１９９４年４月１７日〜４月２２日放送、全６回）◆第４回では、１９８３年東京・池袋サンシャイン劇場での公演「桜の園」を紹介する。

著名人が自分の思い入れのある場所を尋ね、その人ならではの紹介をする旅番組。この回は女優・岸恵子が、愛と芸術のためにソ連に亡命した岡田嘉子の足跡をたどる。（全２回）◆後編。１９３８年、杉本良吉とともに亡命した日本映画界のスター・岡田嘉子。しかし彼女の前途は過酷だった。モスクワで生活を許されるまで暮らしていたと彼女が書いているオレンブルグへ向かった岸は、思いもかけない事実に遭遇する。

開港後、深刻な水飢饉が続いた横浜に、日本最初の近代水道が完成したのは、１８８７年（明治２０）９月である。この水道工事の功労者であるイギリス人パーマーの功績とその足跡を振り返る。