１９０６年から３９年間、日本の大陸進出に大きな役割を果たした「満鉄」。このため満鉄については、これまで多くを語られることはなかった。山田洋次監督、加藤登紀子、岩波ホール支配人の高野悦子さんが、満鉄で青春を過ごした父の人生を振り返る。

昭和２年の初舞台以来、女優生活６７年目を迎えた杉村春子。昭和１２年に文学座の結成メンバーとして舞台に立って以来、常に日本の新劇界の第一線を歩きつづけてきた彼女の意欲的な舞台人生を、インタビューと舞台中継で紹介する。（１９９４年４月１７日〜４月２２日放送、全６回）◆第５回は「怪談・牡丹燈籠」。幽霊になっても恋しい男のもとを訪れるお露。杉村春子は、それを利用して金もうけをたくらむ役など３役を演じ分ける。

終戦を境に激しい価値観の変化をみた昭和という時代。「昭和」を語り継ぐことをライフワークとする澤地久枝さんが、その時代を生きた人々の人生から昭和という時代を見つめる。（１９９４年４月４日～６月２０日放送、全１２回）◆第６回は、同世代の人の視点から、新たに時代を見詰め直すことについて考える。

豊かな海の自然に恵まれた沖縄には、海が育み伝えた文化が息づいている。南の青空に朱塗りの建物が映える首里城。王朝文化の華ともいうべき復元された首里城漆芸の粋を見る。琉球は中国交易によりさまざまな文化を吸収し花開かせたが、漆芸もその一つ。螺鈿に使われる夜光貝は沖縄が棲息北限。妖艶に光る貝の特性を活かして輝く螺鈿や、点斜格子という沖縄独特の文様を細工する沈金の技術を伝承する二人の作家の製作風景と、沖縄に遺された数々の優品を紹介する。◆朱漆牡丹唐草沈鐘六角重箱、朱漆梅月螺鈿六角盆、黒漆花円文螺鈿合子、緑漆鳳凰雲点斜格子沈金丸櫃、朱漆螺鈿龍文大飾盆（前田孝允作）、朱螺鈿線文筥（前田孝允作）、鳳凰唐草食籠（金城唯喜作）、鳳凰文庫（金城唯喜作）

四大伝染病といわれるペスト菌の発見者・北里柴三郎の人生と、彼を信じ支えた妻を描く。ＴＫＵドキュメンタリードラマ。◆熊本県北部、大分県と県境を接する小国町生まれの北里柴三郎（勝野洋）は、“小国人気質”ともいうべき一直線に初心を貫く生き方を選択した。貧しさゆえに伝染病に倒れていく明治の日本人を救うため、また未来の子孫のために日本初の私立伝染病研究所を設立。世界の医学界を驚嘆させる数々の偉大な発見を成し遂げ、優秀な門下生を輩出した。

一般に「水の旨い土地の酒は旨い」といわれているが、東海道の名物に静岡の酒の名はない。それどころか薄くてまずいとされている。静岡の暖かい気候が酒の発酵を進めすぎてしまうため、水がいくら良くても旨い酒が育たなかったのである。ところが１９８６年（昭和６１）全国新酒鑑評会で、静岡の地酒が金賞・銀賞に輝くという快挙を成し遂げた。それには「静岡酵母」の開発が大きな契機と考えられた。

関西在住の京舞、上方舞の名手たちによる舞三題を鑑賞する。日本の伝統芸能は、人形浄瑠璃、歌舞伎の世界から、さらに多岐に分かれて発展してきた。京舞、上方舞は、抑制された身体の動きで人間の感情表現を極限にまで追求している。ゲストの大西昭男さんは、京舞には日本の誇る“能”の伝統が見事に生かされており、しかも、能、歌舞伎と共存し、横並びに裾野を広げ、発展してきていることが素晴らしく、日本人の趣味、教養の世界を深めることに繋がっていると語る。◆京舞「葵の上」、上方舞「忘れ唱歌」、舞「忍ぶ夜」

日本最大の湿原・釧路湿原の母ともいえる釧路川を水源から河口へとたどり、釧路川を愛する人間の姿、多種多様な動植物の生命の営みを伝える。◆北海道東部に広がる釧路湿原は総面積約１８０００ヘクタール、日本の湿原面積のおよそ６０パーセントを占める。釧路川はその東端を南北に貫く。全長約１５０キロの源は森に囲まれた屈斜路湖。悠々と蛇行しながら流れる釧路川と無数の支流が湿原のいのちを支え、水門によって２分されて釧路市内を流れすぎ、太平洋に注ぐ。