我が国では、かぐや姫や因幡の白兎など、月や兎にまつわる伝説や民話が多い。清元の「玉兎」もその一つで、文政３年（１８２０）に江戸・中村座で三代目坂東三津五郎により初演された変化舞踊である。兎と狸に扮した踊り手が、扮装を変えながら“兎の餅つき”、“かちかち山”などの場面を軽妙に舞う。続く長唄「月の巻」は、文政１０年、同じく三代目三津五郎によって江戸・市村座で初演された。マツムシ、コオロギなど虫の名を巧みに盛り込み、秋の情緒をたっぷりと表現している。◆舞踊　清元「玉兎」、長唄「月の巻」、清元栄三郎【人間国宝】、寶山左衛門【人間国宝】

自分の患者に対して積極的にガンを告知してきた医師・布施徳馬さんが、同僚の医師から布施さん自身がガンであると宣告された。死と向き合ったとき、彼はどう生きていくのか。本人の日記とインタビューによって、闘病生活を追う。

津軽安藤氏をめぐる謎と遺産に、学者の分かり易い解説を加えてその姿を浮きぼりにする。◆中世史上に登場する津軽安藤氏は活動面に多くの謎を秘めた豪族であり、その謎ときは多くの学者や専門家の注目を集めている。３年間の調査の結果、新しい事実が明らかになった。弘前大学人文学部助教授・小口雅史氏の解説で紹介する。

特別な化粧や衣裳を付けずに踊る舞踊形式が素踊りである。吉原の一年の風物を洒脱に踊る。◆北州とは、江戸の北部に当たる吉原を指したもの。この吉原の年中行事を素材としてその繁盛を祝った踊りである。一人で二十数人の登場人物を踊り分ける「仕分け」が見どころだが、格調を崩さず堅苦しくもならず、さりげなく踊り分ける難しさが、この踊りのポイントである。◆副音声は英語

世界各地の食材・食文化を取材し、食べ物がいかに民族の精神を作り、文明の質を決定してきたかを明らかにするシリーズ。（１９９４年１月１日〜１月６日放送、全４回）◆第４集「雑穀」。乾期には一滴の雨も降らずすべての草が枯れるアフリカ・サバンナ。ここに起源を持つ多様なイネ科植物は、種子が小さくて動物のえさにならず人間のために残されたかのような植物資源であった。アフリカ西海岸の国・トーゴで、さまざまなイネ科植物を食べ物に変えてきたランバ族を中心に取材、サバンナで７千年に渡って営まれてきた穀農文化に人間と食の原点を探る。

三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」と、小泉八雲ことラフカディオ・ハーン「宿世の恋」の原作を、一本のドラマに綴る。◆御家人・萩原新三郎（田原俊彦）は、偶然出会った飯島平左衛門の娘・お露（水野真紀）と互いに強く惹かれあった。しかし、萩原家と飯島家には、三代にわたって愛し合う男女が非業の死を遂げるという因縁があった。二人の仲を知った良石和尚（田村高廣）は新三郎を固く戒めるが、ふたりは死んでも離れないと誓い合う仲に。やがてその恋は悲恋となり、惨劇へとつながっていく。

現代の邦楽界をリードしてきた「日本音楽集団」が、創立３０周年を迎えた。そこで、三つの現代邦楽のグループの演奏を紹介し、その魅力や可能性について考える。ゲストの徳丸吉彦教授は、長い歴史を持つ日本古来の音楽には、西洋音楽にはない魅力があるという。個々の演奏家の活動もさることながら、本来、いろいろな楽器を集めてグループ演奏する宮廷音楽としての伝統があり、現代音楽としても世界に通用する大きな可能性をもっていると力説する。◆曲目　「子供のための組曲」から、「流觴曲水譜（りゅうしょうきょくすいふ）」、「道」　

火の神秘を探りながら、火を使う祭りを紹介する。◆火は照明・暖房・炊事だけでなく、宗教儀礼にも使われてきた。富山県下で広く行われる左義長は、正月の火祭りである。竹を円錐形に組んで正月飾りを焼き、無病息災を祈る。お盆には迎え火と送り火が行われる。上市町のニオトンボや八尾町のショーライ盆は、川辺で火を焚いて祖先の霊を招く迎え火である。火には浄化力もあると信じられた。火渡り神事で炭の上を素足で渡ると、穢れを焼き、超自然的な力が得られるという。◆左義長、どんどやき、魚津市愛宕神社の火祭り、上市町のニオトンボ、八尾のショーライ盆、滑川のねぶた流し、小杉町黒河神社の夜高祭り、黒部市新治神社のたいまつ祭り、大門町熊野神社の火祭り、小矢部市慈光院の火渡り法要