写真家土門拳は、１９０９年、酒田市に生まれた。リアリズム写真を確立した巨匠として、世界的有名な写真家となったが、報道写真の鬼とよばれた時代もあり、「ヒロシマ」、「筑豊の子どもたち」など敗戦後の日本の社会を鋭く描き、人々の心の奥底に強く訴えかけた。ライフワークの「古寺巡礼」をはじめ、「室生寺」、「文楽」、「風貌」、「古窯遍歴」、「日本名匠伝」など、いずれも不朽の名作群として評価が高い。（酒田市）

人工飼育で育ったペリカンが野生を取り戻して２世を誕生させるまでの６年間の記録。◆宇部市の明光幼稚園に、近くの常盤公園から１羽のモモイロペリカン「カッタ君」が通い始めた。人工飼育で育ったカッタ君は人間を仲間だと思っている。園児はすぐに友達になったが、カッタ君にとっては必ずしもいいことではない。やがて繁殖期を迎えたカッタ君は、鏡に映った自分の姿を恋人と勘違いして近くの団地で独りぼっちの巣づくりを始めた。飼育係の白須さんはカッタ君をペリカンの仲間にひきもどすため、風切り羽を切って飛べなくしてしまう。幼稚園に通うこともなくなったカッタ君にもやがて恋人ができ、子供も生まれる。

特別番組として趣向を変え、同じ演目の同じ場面を文楽と歌舞伎で比べ、その特色を見る。◆歌舞伎演目の７０％は義太夫物で、人形浄瑠璃の影響の大きさが分かる。今回は登場人物を通じてそれぞれの特色を見る。一例として、定九郎を文楽では残酷非道に描き、歌舞伎では悪の美の魅力として描いている。人形と人間のそれぞれの面白さが共生するゆえんである。◆文楽「仮名手本忠臣蔵」五段目・六段目人形吉田玉幸、吉田文吾、歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」五段目・六段目立方岩井貴三郎、初世尾上辰之助

男が首をくくって死のうとしているところに死神が現われた。「おまえは医者になれ。病人には必ず死神がついている。それを見えるようにしてやるから、その立ち位置を見て病人の生死を告げてみろ」と男に言う。男は教えられた通りに病人を診断し、金を貯めたが、遊びが過ぎてもとの貧乏に逆戻りしてしまった。◆グリム童話を翻案した噺だといわれている。

１３年前に夫の浮気が原因で別れた熟年夫婦が、息子夫婦の巻き込まれた事件によって再会を余儀なくされる。事件をとおして別れた夫婦がもう一度お互いを見つめ直し、愛情を取り戻していく物語。（１９９４年１０月１５日～１０月２９日放送、全３回）◆史郎（緒形拳）が示談金を払い、哲也（大鶴義丹）は釈放される。その後、奈津（岸恵子）も加わり、１３年ぶりに家族がそろっての団らんとなる。哲也は今でも川田（川原和久）がわざと美保（原田知世）を転ばしたと信じている。奈津は相変わらず債権者の春日（平田満）に追われていた。が、金は集まらず金策に疲れ果てる。

多くの謎に包まれていたチェルノブイリ原子力発電所事故の実態が、ソビエト連邦の崩壊と共にあらわれた様々な機密文書から明らかになってきた。当時の高官へのインタビューや事故から生還した原発職員らの証言を通じて、真の事故原因が隠された理由に迫る。◆事故直後、ソ連は「原子炉の欠陥」を主因とした報告書を作成。しかしそれは共産党政治局により最高機密とされ、４か月後に「原発運転員の規則違反」を原因とする報告書が国際原子力機関に提出された。各国の専門家は報告書を受け入れ、原子炉の欠陥に気づかないまま８年近くが過ぎることとなった。なぜ真相は隠されねばならなかったのか、国際会議ではどんな調査・議論がなされたのか追う。

北海道・松前藩は特異な大名だった。寒冷地で米が穫れないため石高を持たず、藩の経営はもっぱら交易で支えていた。蝦夷地特産の良質な昆布や海産物を北前船で上方に送り、巨利を得て豊かな文化を享受していた。一方、アイヌや北方の異民族の、自分たちとは異なる文化に接してもいた。蝦夷と和人との出会いの歴史、道南１２館を築いた先人の開拓史から江戸の大名にまで上り詰めた松前藩の歴史を通して、遥かなる北の大地を彩った蝦夷文化の光の一閃を描きだす。◆志海苔館跡、道冬擦文土器、オホーツク式土器、蝦夷風俗十二か月図屏風、北海道道庁、松前城、松前藩屋敷

過去を忘れたい男と過去に縛られた女の、「この世の果て」へと続く盲目的な愛を描く。（１９９４年１月１０日～３月２８日放送、全１２回）◆第１回。砂田まりあ（鈴木保奈美）は、昼は郵便局員、夜はクラブで働き、花屋で働く盲目の妹・なな（桜井幸子）の手術費用を稼いでいた。まりあには、そうしなければならない事情があった。ある日、クラブの仕事の後、交通事故にあった男を偶然助ける。自分の名前を言えない彼を、医師は一時的記憶喪失と診断する。しかしそれは芝居で、男は自分の過去を消し去りたい高名なピアニスト・高村士郎（三上博史）だった。