小田原城は後北条氏により本格的な築城が行われ、江戸時代には大久保や稲葉氏など、譜代大名の居城として江戸城・川越城と並ぶ関東の名城といわれた。明治になると廃藩置県に伴い城は壊され、「隅やぐら」が辛うじて残った。その後、小田原市が天守閣や常磐木門を復元し、市民のシンボルとして、また観光資源として、多くの人に親しまれている。こうした小田原城の歴史をたどりながら、政治や経済の面から新たな考察を加えるとともに、四季折々の美しさ、にぎわいを合わせて紹介する。

佐賀県有田町は磁器のふるさと。色鍋島の伝統を継ぐ十三代今泉今右衛門を、女優檀ふみが訪問する。◆今泉さんは天保時代からの家に住む。佐賀藩の調度品をつくってきたので、明治にはどん底に落ちたこともある。若いうちはバンカラに憧れ、３４、５歳で仕事に戻り、鍋島を再発見した。そして現代化にとりくみ、人間国宝にもなった。ラフなころがあったから、今の作品ができたのだ。◆吹墨の技法で呉須を吹きつけ、焼きあがったものに上絵を描く。その姿を檀さんは若々しいという。

黒川能の最大の舞台は旧正月の祭りである。当屋と呼ばれる民家に、春日神社の御神体「王祗様」が降り、その前で徹夜で能が奉納される。祭りの準備は３ヵ月前から始まる。祭りの主催者は当屋で、最も名誉な役である。能は神社をはさんで上座と下座に分かれ競い合う。祭りの前日には御神体である「王祗様」が上座、下座の当屋の家に運ばれ、当屋に作った能舞台で能が始まる。人々は神と一緒に能をたのしむ。◆【国指定重要無形文化財】黒川能〔山形県〕

江戸時代の町火消しの伝統を守り伝える男たちの集団・江戸消防記念会の人々の心意気は、鳶職の心でもある。◆江戸にこだわり、階級制度を守り、独特の気風と固いきずなで結ばれた町火消しの仕来りを受け継ぐ鳶の職人。町の習わしに詳しく、季節の節目に欠かせない人たちである。「人の世は義理と人情とやせ我慢」を信条に、鳶と火消しの２つを天職とした江戸の町火消しの心意気は今でも脈打っている。◆出初め式〔東京都〕、大盃の儀

日本各地を訪れ、受け継がれる伝統工芸の技と心を紹介する。◆箕面は、古くから箕面山を中心に観光地として知られたところ。尾崎美智子さんは縮緬の魅力にとりつかれ、箕面市に縮緬専門の店を開いた。北本千代さんは江戸時代から伝わる縮緬細工の技法を今に伝えているひとり。一針一針縫うごとに、古い縮緬は動物や花をかたどった袋物に生まれ変わっていく。京谷安子さんは布の切れ端を利用して季節の野菜や果物を作っている。古い、小さな布切れは、尾崎さんたちの手によって再び命が吹き込まれる。

年令・職業不詳の女性リョーコを主人公にして、４人の監督（利重剛、阪本順治、天願大介、緒方明）が演出を競い合うドラマ。開局５周年特別企画。（１９９６年４月～１９９７年１月、全４回）◆第２話「たまっているのよ、なにもかも」監督：阪本順治。ある日、リョーコ（室井滋）は、コンビニで立ち読みをしながら泣いている男（佐藤浩市）を見た。そしてレンタカーを借りていたリョーコは、その男と車を乗り違えてしまう。車のトランクには、若い女性の死体が入っていた…。

４１歳の時に脳いっ血で倒れた作家・永倉万治の闘病記をもとに、彼の社会復帰に向けての苦難に満ちた闘病ぶりと、彼を取り巻く同病の患者、そして家族たちの人間模様を温かい視点で描く。（１９９６年１１月１０日〜１２月１日放送、全４回）◆第１回。平成元年の３月、作家の長倉（うじきつよし）は駅で突然倒れ病院に運ばれる。診断は高血圧性脳出血。緊急手術で一命をとりとめるが、担当医師は「右半身のマヒと失語症の覚悟が必要だ」と妻の有子（石田えり）に告げる。マッサージ師の桜庭や妹の淑江に励まされ、有子の看護の日々が始まる。

和太鼓奏者の林英哲が栃木県益子町の高内秀剛を訪ねる。◆独学で作陶してきた高内さん（当時５９歳）は、益子にガス窯、灯油窯、登り窯をもつ。作品の特長は大きさと荒々しさ。皿にはビーッと緊張感があり、壷にはグーッと肩の張りがある、それが求める形だという。◆ろくろで作って終わりじゃなく、切った貼ったでものをくっつけていくと、人間くさいというより獣じみてくる、そこが面白い。死ぬまでなまぐさい野郎だなっていわれれば、それはそれで勲章だと思う、と語る。