戦犯・処刑。戦争がなければ平凡な理髪店店主として一生を終るはずだった男の悲劇を描く。原作：加藤哲太郎。◆太平洋戦争のただ中、高知の海辺で理髪店を営む豊松（所ジョージ）に召集令状が届いた。妻・房江と一人息子を残し、豊松は本土山あいの部隊に配属される。入隊後まもなく敵機が撃墜され米兵３名が捕虜となった。上官の日高は、立木に縛られている米兵を銃剣でさすよう初年兵の豊松と滝田に命じた。生身の人間に突撃などとてもできないと立ちすくむ豊松だが、日高の厳しい命令にいやおうなく突き進んだ。やがて終戦。無事高知に戻った豊松は突然米兵殺害の戦犯容疑で逮捕される。

小林清親（１８４７〜１９１５）は、浮世絵を近代絵画へと再生させ、江戸版画にはなかった光と影の調和を生かした“光線画”と呼ばれる新しい技法を編み出した近代版画の先駆者だった。西洋画の技法を採り入れ、時代を風刺するポンチ画なども描いた。新東京名所シリーズや、マンガ新版三十二相などさまざまな画題に絵筆をふるったが、その本領は斬新な感覚と鋭い観察眼を基本に置いた叙情であった。明治１０年代の東京を詩的かつ写実的に描いた彼の作品を見つつ、現在にその実景を訪ねる。◆小林清親作品「東京新大橋雨中図」、「東京銀座日報社」、「海運橋・第一国立銀行」、「駿賀町雪」、「九段坂五月夜」、「根津神社秋色」、「柿に目白」、「大川端新大橋」（ポンチ絵）

終戦を境に激しい価値観の変化をみた昭和という時代。「昭和」を語り継ぐことをライフワークとする澤地久枝さんが、その時代を生きた人々の人生から昭和という時代を見つめる。（１９９４年４月４日～６月２０日放送、全１２回）◆第４回は、２．２６事件をはじめとする昭和初期のテロ事件とそれが社会に残した影響について考える。

琵琶湖畔に立つ紫雲山聖衆来迎寺。延暦９年に伝教大師の刻んだ地蔵尊をまつって地蔵教院として開かれたと伝わり、恵心僧都源信によって聖衆来迎寺と改められた。念仏を唱え来世に浄土へ行けると説いて極楽浄土の思想を体系化し、「往生要集」を現した源信。彼なくしては後の法然や親鸞も世に出なかったという巨大な存在である。往生要集をもとに描かれた「六道絵」は、民衆に分かり易く教えを伝えた。空也上人とともに民の心を捉えた源信の精神を探る。◆【国宝】六道絵（聖衆来迎寺）【重要文化財】地蔵菩薩立像（聖衆来迎寺）、釈迦如来坐像（聖衆来迎寺）、阿弥陀二十五菩薩来迎図（聖衆来迎寺）、客殿（聖衆来迎寺）、日光・月光菩薩立像（聖衆来迎寺）

川の最上流部に棲息している魚・ニッコウイワナは幻の魚ともいわれ、年々その数は減っている。そのイワナを守ろうと２０年間独自に放流を続けてきた一人の男性の取り組みをドキュメントする。あわせてイワナを追い詰めるつり人の乱獲や山の乱開発問題をリポートし、自然と人との共生を考える。

おなじみ織田信長と木下藤吉郎の物語の一節。信長が、戦で用いる槍は長短どちらが有利かと部下に問うた。槍の指南番は短い槍が有利と答えたが、藤吉郎は長い槍に限ると言う。それを聞いた信長は百人の兵を長短二組に分け、３日間の稽古の後、試合をさせることにした。

古都奈良の東南部、春日山と高円山の間を流れる渓流に沿った滝坂道を越え、柳生の里へと通じる道を柳生街道という。この山道は天平以前から拓けた道で、春日の神山にまつわる信仰の道でもあった。一帯を釈迦の修業した聖地に見立て、これにちなんで山中に古くから寺院が建立された。南明寺、新薬師寺、白毫寺、正暦寺、円成寺など一見ひなびた寺々の由緒ある建造物や秀逸な仏像、春日の山肌に残る春日山石窟仏、地獄谷石窟仏などを訪ねる。◆【国宝】新薬師寺本堂、薬師如来坐像（新薬師寺）、十二神将立像（新薬師寺）【重要文化財】南明寺本堂、阿弥陀如来坐像（白毫寺）、金銅如来椅像（正暦寺）

およそ千年もの昔から交通の難所といわれてきた宇津ノ谷峠の今昔を旧東海道・宇津ノ谷集落を軸に探る。◆宇津ノ谷峠には、平安・鎌倉時代のつたの細道、江戸時代の旧東海道そして現代の国道と今も３つの道が残っている。さらに明治トンネル、昭和第一トンネル、昭和第２トンネル、平成のトンネルと４つものトンネルがある。また、つたの細道以前には、静岡と焼津を結ぶ日本坂を通る道が存在していた。なぜ、これほどまでに道が変化したのか解明する。