日本三景のひとつ・松島の海岸近くに建てられた瑞巌寺を作家の井上ひさしさんが訪れる。寺の内外を細部にわたって見て歩き、瑞巌寺を造らせた伊達政宗の“世界に向いた目”を再確認していく。◆瑞巌寺は、平安時代からの歴史を持つ寺を政宗が伊達家の菩提寺として再建したもの。政宗は、造営にあたって日本各地から数多くの名工を招いた。◆「中央から遠く隔たった所へ腰を据える決心をした政宗は、中央のさ細なことに巻き込まれずに世界的な視野を持てたと思う。その政宗のスケールの大きさと瑞巌寺の大きさが、自然に結びついてくるように感じられた」。瑞巌寺を散策した井上さんは、こう感想を述べる。

事故によって首から下の自由を失った星野富弘さん（４１歳）は、絵筆を口にくわえて美しい詩画集を描きつづけている。星野夫妻のさわやかな姿、強い絆を描く。◆中学校の体育教師だった星野さんは、模範演技中に事故で首の骨を折って重度の身体障害を負った。しかし不屈の闘志で再起し、美しい花の絵と珠玉のことばから成る詩画集を綴り始める。絵の具の調合を手伝うのは事故後に結婚した妻の昌子さん。

青森県下北半島の脇野沢村はニホンザルの北限として知られる。厳しい冬を生きるサルは世界でもこの村にしか生息せず、天然記念物に指定されている。零下１５度にもなる冬の日々、美しい毛並みの下北のニホンザルたちの生活を紹介、２月の厳冬期に生まれた赤ちゃんの行く末を追う。夏には畑の作物を巡っての村人たちとの闘争。“人間と自然との共存”は果たして可能なのだろうか。

地唄一筋に７０年。努力と精進の道のりを、盲目の人間国宝・富山清琴に聞く。◆富山清琴の弾き語りの代表曲『荒ねずみ』を聞くと、即興が多く入っていて、作曲の才能がうかがえる。泣いたり笑ったりができない地唄の表現は難しい。「心で弾いて指で（糸を）抑えず、耳で抑えろ」が富山清琴の地唄の真髄である。

日本に分布する３つの森、北海道・針葉林、東北・ブナ林、九州・照葉林を舞台にくり広げられるさまざまな生き物たちの不思議な関係、植物の意外な知恵を探る。◆木の上、陸上、水中に据えられたカメラは知られざる生物の生態をとらえる。夜の森で木から木へと飛び移るエゾモモンガ、秋にドングリを土中に埋め冬に掘り出してエサにするエゾリス。サケの稚魚を狙うカワセミ。日本最大の淡水魚イトウが川をさかのぼる姿などを様々な映像で紹介する。日本テレビ放送網開局３５年記念番組。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第６３回は、住友化学工業の相談役・土井正治さん（９４歳）。

熊本県内各地で歌い継がれる「ふるさとのうた」を紹介するシリーズ（１９８８年４月３日～１９８９年３月１９日放送、全５０回）。『肥後シリーズ』は１９８６年日本民間放送連盟賞（放送活動部門）受賞。◆かつて新しい家が誕生する時には、地区の人たちが力を合わせて大きな棒で石を地面に打ち込んで土台を固めていた。その作業で歌われていたのが「どつき唄（じつき唄）」である。飽田町、球磨郡上村、砥用町から、唄と踊りを紹介する。

四方を高い山々で囲まれた岐阜県の北部、飛騨。この風土の中に築かれた人々の暮らし、木とのかかわりについて、合掌造の民家で有名な白川村を例に紹介する。◆遠い昔から飛騨地方に住む人々は暮らしのあらゆる場面で木と深いかかわりを持ってきた。奈良時代には既に木を扱う職人たちが、税の代わりに都へ徴集されていた。彼らは宮殿や神社、仏閣、貴族の邸宅などを造りながら当時の先進国、高麗や百済、隋、唐などから来た帰化人の技術を学び飛騨に帰国した。そして飛騨の匠と呼ばれる独自の技術集団ができた。