長年この分野で研究を続けてきた早稲田大学の吉村作治教授をメインパネラーとして、研究者たちの研究発表と討論を２回にわたって紹介する。（２０００年１月、東京・有楽町朝日ホールにて収録）今回は東海大学情報技術センターの坂田俊文所長の発表「宇宙から見た遺跡」、早稲田大学の高宮いづみ講師の発表「図像をどう見るか」とともに、パネルディスカッション「周辺から見たエジプト文明」の模様を伝える。

長野県茅野市、中ツ原遺跡出土の「縄文のビーナス」と、新潟県十日町市出土の「火焔土器」は、今から凡そ５千年前の縄文時代に作られた、日本最古の国宝である。「縄文のビーナス」は現代美術にも通じる無駄のない造形美を誇り、その逆に「火焔土器」は、仰々しいまでの過剰な頭部の装飾が、強烈なエネルギーを発している。はるかの昔、自然と共に生きた縄文の人々は、どのような思いから、このような美の造形を現代に遺したのであろうか。その謎が、より強い感動を呼ぶ。◆土偶（縄文のビーナス）【国宝】（茅野市尖石縄文考古館蔵）、火焔土器【国宝】（十日町市博物館蔵）

人間のルーツを探り、人類が霊長類から進化する過程でどのような社会を形成してきたかを考えるシリーズ。今回は、アフリカを舞台に人の化石と生活環境の研究が進んでいる古生態学について解説する。日本の霊長類学は、ニホンザルの研究から、その後、研究フィールドをアフリカの霊長類（ゴリラ・チンパンジー）に広げるとともに、化石人骨の調査や狩猟・採集民、牧畜農耕民社会の研究にも取り組んできた。人類進化の謎を解く鍵のひとつとして、マメ科植物の分布と人の遺跡の分布を比較する。講師は京都大学の伊谷純一郎名誉教授。

オランダ商館の医師であったシーボルトと、日本人の母お滝との間に生まれた娘・おいねの生涯を描く。◆ドイツ人と日本人の娘であるおいね（宮沢りえ）は、好奇と差別の中で多感な少女時代を過ごした。世をすねるおいねに、母・お滝（樋口可南子）は父のシーボルトを誇りにして生きよと諭し、それからおいねはオランダ語を学び始める。父と同じ医学の道を志し、二宮敬作、ついで石井宗謙に師事。やがて宗謙の娘タカを出産する。そして、３０年ぶりにシーボルトが来日し、おいねとお滝は感動の再会を果たす。

地理的・歴史的に、大陸との強い関わりをもつ山陰地方。古代北東アジアの交流を考古学的にたどるシリーズ。◆日本の古代国家形成に大きな影響を与えた朝鮮３国は７世紀に激動の時代を迎える。唐と結んだ新羅が日本の支援も受けた百済を滅ぼし、ついで高句麗をも滅亡させて朝鮮半島を統一した。新羅と強いつながりを持っていたその時代の出雲の実像を、北東アジアの広がりのなかで探る。

北海道の根室地方には、深い森や自然の姿を保った川が残り、シマフクロウが生息している。護岸工事や農地開発で生息の地を追われつつも、懸命に生き抜くシマフクロウの姿と、道東にのこされた豊かな自然を描く。

鬼怒川の源流は、標高２０００メートル、日本一高いところにある鬼怒沼湿原である。この湿原は天上の湿原とも呼ばれ、泥炭層に溜まった水は伏流水となり、渓流となり、滝となって山を下る。人間の入り込まない湿原は、生き物の楽園でもある。

小さな町が育んできた音楽文化の２０年間。地域に生きる人々の喜びや悲しみを音楽とともに綴る。◆北海道・清水町は人口１万人余りの農業の町。１９８０年に町民文化センターが完成したとき、町民参加によるベートーヴェンの第九演奏会をこけら落としとして開催した。感動を呼び、全国的にも話題となった演奏会はその後も５年ごとに開かれ、２０００年１２月に２０年目を迎えた。猫の目のような農政に振り回されてもきた２０年間、小さな農業町の人々の来し方や感慨を、２０年目の第九を通して描く。◆構成・撮影は１９８０年の番組「“第九”を歌った町　北海道・清水町」から同じコンビ。