三重県阿児町では海と神へ「三番叟」を奉納し、また町を挙げての町の人の手による人形芝居を楽しんでいる。◆安乗神社では正月、神の使いとされる３体の人形が、まず海辺で外海に向かって、次に岡の上で内海に向かい、さらに拝殿で、式三番叟を舞う。祭りの日には人形芝居が中学生や女性も交じる保存会の手で上演される。４００年の歴史の中で人形の遣い手は変わっていくが、人形に生命を吹き込む人々の心は変わらない。◆安乗の人形芝居〔三重県〕

さまざまな分野で活躍する第一級の人々が、その人ならではの視点で「いのち」をテーマに語る。◆今回は、評論家・ジャーナリストの大宅映子さん。

古来、人間の暮らしは水と切り離すことができない。山紫水明、豊かな水にめぐまれた日本全国から、水と共に生きてきた人々の営みとふるさとへの思いを伝える。◆古くから三島大社の門前町として、また東海道の宿場町として栄えてきた三島は、昭和３０年以前は水の都と呼ばれるほどに町の至るところから富士の伏流水が湧き出していた。高度成長の波とともに湧水は激減したが、水に関わる仕事はいまも続けられている。毎月新聞を発行する「ゆうすい会」、さらにシンポジウムや川の清掃など、官民一体で「水の都」再生に取り組む人々を描く。

被爆から半世紀、焦土から復興を果たしたヒロシマの街づくりは、新しい段階に入ってきた。平和祈念公園内に残る被爆建造物「広島市レストハウス（旧燃料会館）」の存廃討議をめぐる人々の動きから、２１世紀へ向けた街の役割を模索する。◆この建物は、５１年前当時としては珍しい鉄筋コンクリート３階建てで、爆心直下にありながらも倒壊を免れた。戦後広島市が買収し、東部復興事務所として戦災復興事業の拠点となった。外装には手を加えられたが、地下は市内で唯一被爆当時の姿をとどめている。解体と保存との岐路に立つレストハウスのあり方について、広島の大学生たちが調査を開始した。被爆当時この地域にゆかりのある人たちを訪ねて、かつてあった街と現在の街を結びつけ、新レストハウス構想を打ち出す。

建築史家の三宅理一が山梨県忍野村に松田百合子を訪ねる。◆松田さんの陶房で磁器のズッキーニの形成が進む。身のまわりの野草、花、富士山までも作品にし、九谷焼の青、黄、緑、紫、赤、黒と金の七色で明るく彩る。子供のころは、シンデレラより魔法使いのおばあさんに惹かれた。◆茶室には陶製の齧りかけの西瓜の一輪挿しがあり、食卓には紙ナプキンまで金襴手のやきものが並ぶ。毒気のある、音でいえば濁音を表現したい、そして驚きや笑顔が見られればそれが求めるものという。

高村薫のベストセラー「照柿」のドラマ化。ひとりの刑事を中心に、幼なじみの殺人者、偶然出会った女性が織りなす愛憎劇。（１９９６年９月１４日〜９月２８日放送、全３回）◆第二話。拝島駅転落事件の重要参考人として追われる身となった美保子（田中裕子）は、達夫（野口五郎）との仲を急速に戻していく。一方、中国人ホステス殺しの捜査を続ける合田（三浦友和）は、難行する捜査の焦りから、違法捜査寸前の行為を犯し、次第に周囲から孤立していく。何もかもが行き詰まったある日、合田は偶然に美保子と再会する。こらえ切れずに自らの思いを打ち明けるが、美保子の拒絶の態度はかたく、ますます達夫との関係を深めて行くようだった。そのころ達夫は妻との確執にいら立っていた。

俊寛は自分だけが帰郷を許されなかった悲しみを語り、断腸の思いで船を見送る。◆歌舞伎では男泣きする俊寛を、能では感情を抑えた動きで表現する。これこそが能の本質で、能では俊寛を外から客観的に描き、片方で心の動きをじっと体にためて、それを観客に伝える工夫をしている。故観世寿夫の「心より心に伝ふる花」の言葉がそれを物語っている。◆「俊寛」観世寿夫、宝生弥一（重要無形文化財保持者）、浅井文義、永島忠侈。◆副音声は英語

二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆この回は、女優・毬谷友子と作家・夢枕獏の二人が京都・高雄に弘法大師空海ゆかりの寺・神護寺を訪ねる。８０６年、中国から帰国した空海は１４年間神護寺で暮らし、この寺を拠点に平安という新しい時代にふさわしい仏教を広めた。その教えの核が密教で、多宝塔の中に最も密教的な仏像「五大虚空蔵菩薩像」（国宝）が安置される。色の違う五体の像が響きあって漂わす独特の宇宙観。旅人は現代と密教について語り合う。