首都チュニスの北西のこの公園は、ヨーロッパからの渡り鳥の越冬地で、最盛期の１９８０年代には１８０種、３０万羽を数えた。◆国土の３分の１が砂漠のチュニジアでは、水の豊かな地方で、また強風地帯でもある。強い風が草原を吹き抜ける眺めが興味深い。公園の中には牛や豚を放牧して生きる人々もいて、その生活ぶりも見る。◆最近、渡り鳥の数が減少してきた。原因は、ダムの建設など、水系の変化らしい。生態系が危機にあると、ユネスコは警告を発している。

急斜面の山肌に小さな村落が点在する、徳島県東祖谷山村の上和田地区。この地区には３軒の家しかない。家をとりまく小さな畑には、昔ながらの農業を営む女性の姿だけがある。３年前に夫を亡くし、一人で“時の畑”を耕すおばあさんたち。死ぬ時は布団の上で寝たまま死にたいと言う彼女たちの春を待つ姿を描く。

１９８８年登録。◆ヒマラヤ山脈の西よりにあるナンダ・デヴィは７８１７ｍ。インド第２の高峰で、パールヴァティ女神の山とされる。１１月、この年最後のヒマラヤ巡礼に同行して、山麓に住む人々の信仰や生活を取材した。山の神は登山家にも寛容ではなく、ナンダ・デヴィと名付けられた登山家の娘は、この山で亡くなった。◆冬の高地は寒さが厳しいので住民は麓の村に降りるが、その中で修行するサドゥー（出家行者）の、山の一部になろうとする姿が美しい。

全国各地の商店街をはじめ、温泉街、学生街、神社参道など身近な町並みや通りの素顔を紹介する。◆東京下町、墨田区立川の一角、約７００メートルの通りに３０数軒の車の解体屋がひしめいている通称「解体屋通り」。中古車や事故車を解体し、使える部品を取り出して売るこの商売、昭和３０年代には１００軒からの店が並んでいた。使えるものは何でも活用しようというバイタリティにあふれる町を紹介する。

日本に現在生息する約５５０種の野鳥のうち、大空を飛翔する姿の美しい鳥たち、澄んださえずりを谷間に響かせる鳥たち１００種の、特色豊かな生態を四季折々の美しい日本の原風景の中につづる。◆この回は、北海道知床半島ウトロ・羅臼で、オジロワシの生態を紹介する。

大気を浄化し、地球の風土を作り、豊かな恵みで人々の暮らしを支える「森」と「水」の不思議を解きあかす。◆森の木々は、太陽の光エネルギーを利用して炭酸ガスと水から炭水化物を作り、酸素を放出する「光合成」を行うことで成長を続けている。地球のガス交換器の役割を果たしている森の減少は、大気中の炭酸ガスが増え、気温が上昇する「温暖化」が起こるなど、地球全体の気候に影響を与えている。

老人の恋とその苦悩、挫折、怨みという重いテーマの作品である。能としては異色とされる「恋重荷」を二部に分けて鑑賞する。宮廷の庭師の老人が白河院の女御を見て恋をする。噂を聞いた臣下が、庭の石「恋重荷」を持って千度廻れば…と言い、老人は持とうとするが重くて持てず、口惜しがって憤死する。「恋重荷」とは宮廷の歌言葉であったが、それを知らず真にうけた老人と、貴族の文化の差が残酷さを生んだのである。◆「恋重荷」・シテ片山九郎右衛門、ツレ片山伸吾、ワキ福王茂十郎、アイ茂山千作、（妙佐型）大槻文蔵。◆副音声は英語

今回のテーマカラーは樺色。樺色とは、オレンジと茶の中間色で、江戸での流行が参勤交代で加賀藩にも入ってきた。◆加賀藩では釣りが奨励され、武士たちが趣味で毛針をつくった。この毛針に、明治の博覧会で「加賀毛針」の名がついた。数千種といわれるうち、樺色の毛針は千種ほどである。今は、金沢出身の文芸家・泉鏡花の自殺を救ったという目細家と、北釣具店が扱っている。毛針がちがうと釣れる魚もちがうという。