アメリカの西端に、北から南へのびる細長い半島がバハ・カリフォルニア。その太平洋側のエル・ビスカイノ湾が、メキシコ領のクジラ保護区である。ここへはベーリング海からコククジラが繁殖にやってくる。マイルドなこの海の諸条件が、赤ちゃんクジラの保育にいいのだという。かつては乱獲がおこなわれ、２０世紀初頭には２０００頭にまで激減したが、アメリカが捕鯨を禁止し、メキシコ政府の手厚い保護で、現在は２万３０００頭を数える。水鳥や海の生物なども紹介される。

さまざまな分野で活躍する第一級の人々が、その人ならではの視点で「いのち」をテーマに語る。◆今回は、作家の倉本聰さん。

「ダヴィデ」と「ロンダニーニのピエタ」。ミケランジェロの作品だが、幻想の世界にひっそりたたずむ後者の像からはフィレンツェのシンボル「ダヴィデ」に渾身の力をこめてノミを振るう姿は想像できない。意志の強さと巨大なスケール。一方、繊細な心と優しい神への思いにあふれたもう一人の姿。偉大な芸術家の道を歩みながら、二つの側面を共有したミケランジェロの足跡をたどって、松坂慶子がイタリア各地を訪ねる。修復作業後初めて撮影できた「創世紀」「最後の審判」が圧巻。

２１歳で単身渡米し、後に橋梁学の権威として日本の近代港湾ならびにアメリカの近代化にまで多大な功績を残した、札幌農学校出身の工学博士・広井勇の足跡をたどる。日本が鎖国の夢から醒め、近代国家建設への熱い思いに胸を焦がした明治時代の偉大な開拓者の魅力と生き方を描く。

インド洋に面したオーストラリア大陸西岸の真ん中あたり、シャーク湾には、地球と生物の進化史の証拠が現存する。それは、ストロマトライトという岩で、表面をバクテリアのラン藻が覆う。地球誕生の初期、このラン藻が出現して、光合成で大気中に酸素をもたらし、あらゆる生物の進化の基盤をつくった。熱帯と温帯の境に位置するシャーク湾には珍しい動植物も多く、世界有数のジュゴンの生息地でもある。バンドウイルカの餌付けもしている。それらがたっぷりと紹介される。

復職した女性教師が、中学校の職員室に潜む教員同士の軋轢や生徒のいじめ問題など、教育現場を蝕む様々な現実に挑む。◆ＶＯＬ．１「帰って来た　女教師」。生徒の親から教育委員会に訴えられた中学校教諭・津田雅史（仲村トオル）は、かつての恋人で同僚でもあった矢崎葉子（浅野温子）に助けを求める。その依頼を受け、葉子は長距離トラックの運転手から、３年ぶりに教壇に戻る決意をする。赴任が決まった葉子は、雅史の勤める江戸川南中学校の教頭・杉浦（野際陽子）の厳しい教育方針のもと、教師、生徒ともに表向きは統制が取れた学校の現実を見る。更に熱血教師の雅史だけが、教員の中で浮いた存在である事に気付く。そんな雅史と対立する杉浦教頭は、雅史を学校から追放するために、葉子を利用しようとしていた。

パキスタンと中国の国境近く、雄大な自然の中、少数民族ワヒ族の暮らしと夏村への季節移動を記録したドキュメンタリー。◆周囲を険しい峠に囲まれたシムシァールの村人は、普段は標高２３００ｍで農耕を行い、夏になると牧草を求めてさらに１５００ｍ高所の夏村に移動する。夏村では女性と子どもが家畜を放牧し、バターやチーズを作り、夜は狼から家畜を守る。子ども達も仕事を分担する。そして本村に残った家族が穀物や野菜を作り、村の機能を維持する。８歳のアミル君は、この年初めて大人と共に夏村まで２泊３日を家畜を連れて歩き、村に生きる術を学ぶ。

福岡県英彦山は九州の修験道場の中心であった。峰入りという大切な行事を、修験者たちが復元しようとした記録である。明治以降、途絶えたままになっていたこの行事は、英彦山を目指してさまざまな行場を駆け巡る厳しい修験の行である。小学生を含む１８人が修験者となり、総奉行と称する修験経験者を指導者として３日間、荒修行に挑戦したもようを紹介する。◆修験者の行事