東京・東北沢で鮮魚店を営む母娘を中心に商店街の人々が繰り広げる騒動を描く。「ありがとう」は設定を変えながら４部まで制作された人気ドラマシリーズ。（第３シリーズ／１９７３年４月２６日〜１９７４年４月２５日放送）◆第一回。老舗魚屋「魚平」の五代目・志村愛（水前寺清子）は、一人娘で元気に働くしっかり者。愛と母親・歌（山岡久乃）は親類を頼って、下町の深川から東北沢の四軒市場へ越して来た。母娘は引越し蕎麦を持ってご近所に挨拶まわりをするが、商店街は一癖ありそうな人たちばかり。向かいの「八百一」の長男・寺川元気（石坂浩二）は力仕事が苦手で、雑誌社で装丁デザインの仕事をしているという。

山陽新幹線トンネル工事現場で働く長崎出身者のグループを中心に、石材工場に移住した一家のエピソードを織り込み、農漁民の状況や出稼ぎの実態を追求する。物価の高騰、米の減反政策、沿岸漁業の不振は、彼らを故郷から追い出した。故郷には安住できず、さりとて愛するが故に離れられない男たちが出稼ぎへと流れて行く過程を追いながら、失われて行く故郷を考える。

どのような人間にも深い愛情をもって接する医師“赤ひげ”こと新出去定と、彼の影響を受けて成長していく若き蘭方医・保本登を中心に、江戸末期の小石川養生所の医師たちの活躍を描く。原作：山本周五郎。（１９７２年１０月１３日～１９７３年９月２８日放送）◆夜の急患を断った登（あおい輝彦）に赤ひげ（小林桂樹）はおかんむり。“医者も人間だ”という登の考え方に“医者は、病人にとっては神だ”の赤ひげが対立。登は憤慨して養生所を飛び出してしまう。周囲は登に同情的だ。◆１９７３年１１月１０日２２時３０分～放送で芸術祭参加。

秩父の自然を背景に、女手一つで亡き夫の残した旅館「二上」を守る女将と、一人の男性を愛した姉妹を描くドラマ。父の亡き後、義母・彩子に育てられた姉妹・多美と桂は、「二上」を訪れた旅行会社の社員・北に心ひかれていく。（１９７３年４月３日～９月２５日放送、全２６回）

中国山地の小さな集落に突如、大レジャーセンター建設構想がもちあがり、商事会社が中心になって土地買収が進められた。町長もこの構想に大賛成。各戸に同意書を配り、捺印を勧めた。住民は賛成派、反対派の二つに分かれ、村八分問題もおきた。連綿と続いた地区の連帯感は、レジャー構想の前に簡単にくずれてしまった。

日本古来の「まつり」とは、神を迎えもてなしそして送ることであった。遠く先祖から伝承され今に残る素朴な祭りを題材とし、日本人の心や素顔、生活をとらえるシリーズ。四国各県の放送局の共同制作（全１３回）◆海部郡宍喰町の漁村を舞台に、海の男たちが豪快にくりひろげる夏祭り「竹ヶ島の夏まつり」を紹介する。竹ヶ島は周囲４キロの小島。旧暦４月１６日のまつりでは遠洋漁業に従事する男たちが、最盛期のカツオ漁をおいて島に帰り、みこしをかついで海に入る「海中渡御」をくりひろげる。

橋蔵と花子のおしどり夫婦と子ども５人の七人家族が、狭い我が家でひしめき合いながらも、明るくさわやかに、そして力強く生きる姿を描くホームドラマ。（１９７３年１月２５日〜４月１９日放送）◆第１回。広野家の“パパさん”橋蔵（石坂浩二）は移動販売の調理パン屋で、妻の“かあちゃん”花子（長山藍子）はコロッケやカツを売る総菜屋を営んでいる。１２歳を頭に５人の子だくさんだが、橋蔵は中退した薬科大学へ戻るため、花子に励まされながら受験勉強の毎日だ。そんなある日、近所の公園で大きな集会があると聞いた橋蔵は、会場でカツパンが大量に売れると目論む。

語り手自らが名作文学ゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人々に直接ふれることで、その作品世界を再認識してもらおうという文学紀行番組。第１集～４集まで制作・放送された。（第１集／１９７３年１月１１日～４月５日放送、全１３回）◆この回は、森鴎外の小説「高瀬舟」（１９１６年）。女優の岸田今日子が作品を朗読をしながら、物語の舞台である京都・高瀬川沿いを巡る。主人公ゆかりの六角獄舎跡の様子や、作中に登場する西陣の織場で働く人々のインタビューを交え、「高瀬舟」の世界を感じる。