放送当時、唯一の人間国宝指定能楽師であった宝生流シテ方の松本恵雄（しげお）の芸談と舞台を鑑賞する。１９１５年（大正４）に当時、野口兼資と並んで宝生流の双璧といわれた松本長（ながし）の次男に生まれ、宝生九郎、野口兼資に師事、５０才を過ぎて芸術選奨新人賞、芸術祭大賞などを受賞し、平成３（１９９１）年度の人間国宝に指定された。渡辺保は、現代能楽師の名人の一人として、人間ドラマとしての能を気迫をもって表現する演技力を高く評価。能「綾鼓」と仕舞「実盛」を観る。

一本の木材から木製の椀や菓子皿をつくる木地職人。近江国鈴鹿山麓の小椋谷は彼らの隠れ里であった。良材を求めて山野をめぐり、ろくろを使って製品に仕上げる伝統の技を千年にわたって伝承しつづけてきた木地職人たち。ろくろを発明し、村人にその技術を教えたとしてあがめられている惟喬親王は伝説に包まれている。全国の山野を渡り歩くには通行証が必要であったが、その莫大な利権を得ようとした江戸時代の人物が創作した伝説ともいわれている。漂泊の民・木地屋をめぐる歴史を推理する。◆惟喬親王陵墓（京都府）、筒井神社（滋賀県）、大皇器辞地祖神社（滋賀県）

１７０７年（宝永４）、富士山は大爆発を起こして中腹付近に山ができた。いわゆる宝永の大噴火、そして宝永山である。この噴火で撒き散らされた火山灰は１００キロ離れた江戸へも降ったほどで、周辺の集落は大被害を受けた。御殿場市の滝口家に残された噴火の様子を描いた絵など当時の史料や、郷土史家のインタビューをまじえながら、富士山周辺に暮らす人々の「火の富士」への思いを描く。

映画監督の佐藤真さんは、妻が２人目の子供を出産するまでの家族の日々を８ミリフィルムに収めることにした。極めてプライベートな日常と動きが映る８ミリビデオ、女性カメラマンが撮るＶＴＲという視点も加わり、出産を迎えるまでの一家がどのような生活を送ったのかを多角的に紹介する。

ＡＬＳ（筋萎縮性側索硬化症）により運動機能を失いながらも生きる気力を失わない、秋田市在住の金子義一さん。わずかに動く目と顎でワープロを操作し、葉書でプロ棋士と対局する。その闘いの日々を追う。◆昭和１０年生まれの金子さんは釣りや登山の好きな健康人だったが、４９歳のときＡＬＳを発病。運動神経が損なわれていき全身の筋肉が動かなくなる難病で、治療法は確立されていない。しかし金子さんは望みを捨てず、ワープロを操って自伝を出版。発病後に覚えた将棋はアマ５段になり、プロ７段の宮田棋士と２年をかけて葉書で対局、勝ちを収めた。毎日朝を迎えるたびに「今日も一日儲けた」と思う金子さん。毎日を燃えながら生きてほしいと語る。

静岡・長野・愛知の三県を結ぶ三遠南信自動車道の完成が近づき、東海道に対しての南北の交流が注目されている。この南北の交流の歴史はとても古く、生活に欠かすことのできない「塩」を海から山岳地域に運ぶ「塩の道」の歴史である。御前崎から水窪を通る「塩の道」・信州街道を北上して信州と遠州を結ぶ伝説を紹介、「塩」の通った跡を探っていく。

美貌を、手腕を、悲運を語り継がれる数々の静岡女。源三位頼政と結ばれ、美女桜に名を残す悲運の女性あやめの前、源頼朝の妻で彼の死後は尼将軍とも呼ばれた北条政子、戦国の世に今川家に嫁いで傾いていく領国を支えた寿桂尼、国策の犠牲になった唐人お吉。それぞれの女性の生き方について探る。

エリート銀行員の父との葛藤を乗り越えながら、社会人として成長していく息子の奮闘ぶりをコメディータッチで描く。（１９９４年４月１０日〜６月２６日放送、全１２回）◆ＶＯＬ．１「恐怖の初出勤」。一流銀行員の父に反発して、浩介（緒形直人）は自力で食品会社に就職した。その就職先の社長・加藤松郎（伊東四朗）と浩介の父・西条浩一郎（渡瀬恒彦）とは、１０年前に絶交した仲だ。それでも、浩一郎は息子の就職の礼のため、松郎に連絡をとる。