日本各地を訪れ、受け継がれる伝統工芸の技と心を紹介する。◆印伝といえば今では甲州印伝を指す。印伝作りの技術を持つ人が、山梨にしかいなくなってしまったからだ。布のようになめしたシカ皮に、漆で艶やかに模様付けしたものを印伝と呼び、小銭入れやタバコ入れなどの贅沢品に生かされている。日本で唯一残る甲州印伝の技法を、甲府の風土と共に描く。

高知県中土佐町久礼の男逹は回遊するカツオを追って沖へ出る。約９ヵ月間留守を守る女性たちは航海の安全と大漁を祈願して男逹の帰りを待つ。男逹の無事を祈る婦人たちの「おこもり」、盆、正月、秋の祭りなど、潮の干満とともにある海の暮らしは旧暦と結びつく行事が多い。久礼の人たちも、カツオ漁に明け暮れるなかで、神への祈りを欠かさない。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「インディアン・パシフィック出発」と題して、オーストラリア・大陸横断鉄道（シドニー・アデレード・ナラボー平原）を紹介する。

１９７９年登録。◆フロリダ半島の南端には、起伏のない平坦な地形に３万を越す湖が散在する。中でも最大のオキチョビー湖を水源に、深さ１０ｃｍ、幅１５０ｋｍの浅い川が流れる。ここがエバーグレーズ国立公園で、６０００平方ｋｍもあるが、それでも大湿地帯の一部にすぎない。淡水と海水、温帯と亜熱帯が混ざり合い、複雑で貴重な生態系を創り出している。◆かつては先住民の住む土地であったが、５０００年ほど前に現在の様相になった。最近は水の変化が指摘され、あと５００年は続かないという。

障害者の結婚問題を扱ったラブストーリー。◆沖縄伊計島に住む春夫は、小児マヒにより足が不自由になり、軽い知的障害も抱えている。その彼のもとに、親戚から見合い話が持ち込まれた。相手はコザ吉原のおでん屋で働くトヨ子。彼女は借金を抱えており、それを肩代わりしてくれるなら誰とでも結婚するという。実は彼女にはかつて米兵相手の売春婦をしていたという過去もあった。結婚話がまとまり、金が渡された数日後、トヨ子は姿を消す。

日本各地を訪れ、受け継がれる伝統工芸の技と心を紹介する。◆五穀豊穣を祈願する南薩摩のお田植え祭。白装束の男たちが神田に入り、焼酎を飲んだ勢いで、肩を組んで泥だらけになって踊りまわる。「せっぺとべ」とは掛け声で、「精一杯飛べ」の意味。祭りの１週間前にはシベ作りが始まる。祭りの当日はこのシベを神に捧げ、終わると魔除けとして各家の床の間の柱に飾る。南薩摩の奇祭を農民の暮らしと共に描く。

二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆嵯峨野、保津川下りで知られる川の、東にあるのが小倉山、西が嵐山、平安時代には二つ合わせて小倉山と呼んだそうだ。百人一首がこの山の麓で誕生し、和歌の聖地でもある。常寂光寺は日蓮宗の寺で、豊臣秀吉のころの開山。多宝如来を祀る多宝塔には、安土桃山様式の装飾が見られる。百人一首を選定した藤原定家の木像や古いかるたも見られるが、何といっても見ものは紅葉。昼の紅葉、ライトアップした夜の紅葉、朝の光の中の紅葉と、ひたすらの美しさが堪能できる。旅人は作家・村松友視とファッションデザイナー・稲葉賀惠。

被爆から半世紀、焦土から復興を果たしたヒロシマの街づくりは、新しい段階に入ってきた。平和祈念公園内に残る被爆建造物「広島市レストハウス（旧燃料会館）」の存廃討議をめぐる人々の動きから、２１世紀へ向けた街の役割を模索する。◆この建物は、５１年前当時としては珍しい鉄筋コンクリート３階建てで、爆心直下にありながらも倒壊を免れた。戦後広島市が買収し、東部復興事務所として戦災復興事業の拠点となった。外装には手を加えられたが、地下は市内で唯一被爆当時の姿をとどめている。解体と保存との岐路に立つレストハウスのあり方について、広島の大学生たちが調査を開始した。被爆当時この地域にゆかりのある人たちを訪ねて、かつてあった街と現在の街を結びつけ、新レストハウス構想を打ち出す。