飛騨高山に伝わる木工の職人芸・一位一刀彫。江戸の名工の作品を紹介するとともに、現代の匠・元田五山の能の舞い姿「石橋」の製作工程を追う。“一位”は高山市の南にある位山に生える木目の美しい木で、朝廷に献上する笏の材となったことから名付けられた。山国飛騨は作物が採れず建築や木工技の職人が上方や江戸に出向き、飛騨の匠の名を売った。高山の町衆の財力と匠たちの技が相まって壮麗豪華な高山祭が生まれた。根付師・松田亮長の極小美根付も著名である。◆【重要文化財】日下部家住宅【その他】根付蓮の実、根付籠の渡し、一刀彫・石橋、高山祭屋台鳩峯車、高山祭屋台宝珠台

真珠湾奇襲攻撃にまつわる日米両国の思惑とそれに巻き込まれた人々の悲劇を描く。（１２月４日終了、全４回）◆米国海軍情報部の諜報員となった斉藤賢一郎は横浜に上陸、東京に潜入した。東京の協力者は２人。４年前に日本軍の南京虐殺で、中国人婚約者を殺害され、その後日本に移り住んだ米人宣教師ロバート・スレンセン。もう１人は、１０年前に九州の炭鉱に強制連行され、そこから脱走した朝鮮人スパイ金森。折しも、東京の海軍大学では山本五十六長官による図上演習が行われていた。その結果、冬季北太平洋航路によるハワイ真珠湾奇襲攻撃が採択され、その結集地に択捉島・単冠湾（ヒトカップワン）が決定した。

第７回世界サンゴ礁シンポジウムで、世界のサンゴ礁絶滅の危機が発表された。竹村健一が、オーストラリアの著名な水中カメラマンのベン・クロップ、日本のサンゴ礁研究の第一人者・目崎茂和などと共に、世界のサンゴの海の実態を記録し海中からリポートする。沖縄、フロリダ、カリブ海の海を取り上げ、サンゴ礁死滅の実状とその原因を追求していく。また、タイの海、オーストラリアのグレートバリアリーフ、沖縄の海から水中通話装置を使ってサンゴ礁死滅の実状とサンゴ礁の生態系を実況する。タイの海では、観光開発によって海の汚染が進行し、海底に累々と横たわるサンゴの白い骨、グレートバリアリーフでは、サンゴ礁を舞台として繰り広げられる海底の野生の生態系とその重要性を、そして世界の各地から豊なサンゴ礁の恵みに育まれて生きてきた海の人々の営みを紹介する。

わずか１０センチほどの金属の上にさまざまな意匠を凝らした日本刀の金具、鐔。それは実用品であるとともに武士が己を語る重要な役目を果たしていた。鐔職人たちは自分の持つ極限の技を小さな金属に込めた。戦国時代には実質的であり、刀を抜かなくなった江戸期になると華美になって金工芸として爛熟の域に達する。精魂込めて作られた昔の鐔と、現代も受け継がれている装剣金工の製作過程を見ながら、一見見逃してしまいそうな日本の美と心を賛美する。◆正阿弥百足図鐔、忠吉秋草図鐔、兼重七星に題目鐔、四子降生蛙詠歌図鐔、安親文字鐔、友恒藻貝図鐔、光広千匹猿図鐔、平田春寛雪華紋七宝鐔

飛鳥川沿いの古道には、万葉集に登場する木や草花が今も多く見られる。万葉の花を研究している片岡寧豊さんが、飛鳥川上流の橘寺から稲淵・栢ノ森を経て、最奥の山里までをたどる。

かつて、ほとんどの家には日本家屋の象徴たる床の間があった。やわらかに自然光を取りこむ付書院、実用と装飾を兼ねた空間・違い棚。それら特徴的な日本的空間の起源を縄文・弥生の昔から、平安貴族の暮らした寝殿造り、武家社会に受け継がれた書院造りの中にたどる。日本の風土に見合った生活空間のデザインや機能性豊かな建築様式を、園城寺、慈照寺、醍醐寺など代表的な建築の中に探りながら、現代に通じる快適な住居とは何かを考える。◆【国宝】光浄院客殿、慈照寺東求堂、醍醐寺三宝院表書院・宸殿、法然上人絵伝（知恩院）【重要文化財】住吉物語絵巻、伏見稲荷神社御茶室

大和平野の東端を南北に走る山辺の道。その周辺は古墳の密集地域でもある。１９９３年３月に発表された西殿塚古墳の発掘結果などから、古代史が専門の和田萃さんが、大和王権初期の解明を試みる。

原発建設問題で揺れ続ける能登半島の珠洲市で暮らす３人の人たちの、自然と寄り添うような生活を１年余り追い、その中にひそやかに入り込む原発計画の影を描き出す。◆石川県珠洲市。磯漁を続けている８４歳の男性、助産婦をしている７７歳の女性、魚の行商をする７２歳歳の女性。この地の自然と共生してきた人たちの日々が穏やかに続く。その同じ地で、電力会社は建設用地の取得に奔走し、トンネル会社を使うことまでして土地を購入している。市長選は不透明な様相を帯びている。２０年以上も賛成と反対に二分されてきた街の、生活者の視点から原発建設問題を描く。