原爆の恐怖から逃れようとして自殺を図り、未遂に終わったものの記憶を失った男と周囲の人々の心のふれあいを通して昭和の庶民を描く。◆１９５８年（昭和３３）、中野駅でひとりの男が倒れた。白血球の異常な減少から原爆症のおそれもあるが、河口克己という名前以外は記憶がない。それから２４年間、彼は記憶喪失のまま東京で暮らす。ホステスのアキ子と生活していたが、睡眠楽療法を受けて少しずつ記憶が甦ってくるが、郷里を思い出せない。自分の過去に怯える彼を支えて、アキ子は記憶の断片を手掛かりに岡山県に行く。

源氏物語に描かれる雅な香りの世界を源として、室町時代に成立した香道。同時代には茶道・華道・能楽も誕生した。香道は夢幻の香りの中に遊ぶ、匂やかな世界。王朝時代は空薫物という生活の中の趣味だった。銀閣寺内の弄清亭は現存する唯一の本式の香室。当時の公家や文化人は、戦乱をよそに香道に打ち込んだ。家康も高価な南方の香木・伽羅で楽しんだという。現代の優美な御家流香道の組香を観賞しつつ、日本人と香の心を探る。◆【国宝】源氏物語絵巻〔徳川美術館〕◆【その他】源氏物語絵合冊子〔天理大学図書館〕、立花図〔曼殊院〕、名香六十一種名寄文字鎖〔陽明文庫〕

美空ひばりの生涯を３回にわたって紹介する。（１９８９年１２月２０日〜２２日、全３回）◆第三夜はステージでの熱唱を紹介する。曲目は「私は街の子」「ひばりの花売娘」「越後獅子」「花笠道中」「ひばりの佐渡情話」「港町１３番地」「りんご追分」「津軽のふるさと」「哀愁波止場」「大川流し」「江戸の闇太郎」「お夏清十郎」「弁天小僧」「バナナボートソング」「雪が降る」「歌に生き愛に生き」「影を慕いて」「柔」「悲しき口笛」「東京キッド」「お祭りマンボ」「哀愁出船」「愛燦燦」「みだれ髪」「悲しき酒」「人生一路」など。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆秋山庄太郎：写真家。１９２０年東京生まれ。１９４７年近代映画社入社、１９５１年からフリーに。１９７８年日本写真専門学院院長、１９８２年日本広告写真家協会名誉会長、花の会会長。主な著作に「四季折々・花屏風―秋山庄太郎作品集」（１９８２）など。

公金を横領した女が、神経症を患うピアニストの卵を利用して金を返すためのマネーゲームに挑む。◆将来有望なピアニストの卵・マリエは、失恋のショックで左手が動かなくなり、リハビリのため音大を休学して下町の染色工場でアルバイトをしている。マリエが不思議な魅力を感じていた同僚の女性が突然工場を辞め、数日後に「お金を作る仕事を手伝ってほしい」と頼み込んできた。事情もわからないまま、マリエは従うのだった。

リクルート事件をきっかけに、戦後最大の政治的危機と評されるほどに国民の政治不信が高まっている。最終回では財界人や有識者、一般国民の具体的・建設的な提言を通して、政治改革の可能性を探る。（１９８９年４月２日開始、全３回）◆出演は内田健三、後藤田正晴、石原俊、高坂正尭、立花隆、安原美穂、山口鶴男、大久保直彦、米沢隆、金子満広、阿部昭吾、吉野俊彦の各氏ほか。

１９７９年８月に中国・西安に取材に入ってから１０年間、陸海双方の道のりで、３０を超える国に入ってたどりつづけた“シルクロード”のハイライトを３夜連続で紹介する。（１９８９年８月１４日〜１６日放送、全３回）◆第１回は、かつて唐の都であった長安（現・西安）を出発、天山北路を経てソビエト領の大草原に入りサマルカンドへ至る。舞台は砂漠の大画廊、敦煌、ゴビの荒野、遊牧騎馬民族ハザックの地など。

昭和２０年、被爆直後の広島・長崎を訪れたアメリカ調査団が集めたデータは、軍事機密として徹底的に管理された。アメリカの新史料をもとに、原爆被害の情報管理を追う。◆原爆投下の直後、日本の参謀本部はアメリカ軍捕虜を使って被害の悲惨さを全世界へ向けて放送した。世界の報道機関は一斉に非人道的行為としてアメリカを非難し、世論の高まりをおそれたマンハッタン計画の首脳陣は打ち消しにつとめた。その結果、日本からのアピールはデマとして葬られ、世界に原爆の悲惨さは伝わらなかった。