地方巡業の奇術師夫婦と弟子の少年の心温まる人情喜劇。原作：井上ひさし（１９８６年６月２日〜６月２０日放送、全１５回）◆奇術師・天坊はお浜と旅まわりの一座にいる。お浜は元サーカスの曲芸師だったが、ケガをして引退、天坊と夫婦になった。東北の米沢公演で天坊の奇術が評判になり、客も増える。天坊の自慢は焼いた鉄棒をつかむ気合術や物品取り寄せ術である。そのタネと仕掛けを見破る少年・浩志が現れた

古都・京都の長い歴史の中、茶道と結びついて発展してきた和菓子。老舗の暖簾を守り、本物の味にこだわりつづける菓匠と、その背を見て育つ娘の姿を、伝統の味と形とともにドキュメントする。◆京都に和菓子屋は５００軒余もある。寺社へのお供物、御所に納めるお菓子、そして茶の湯の菓子として用いられてきた。菓匠会は老舗２７店で構成され、家族だけの店、多くの従業員を抱える店などさまざまだが、一軒一軒が個性と伝統の味を注文製造による手作りで守っている。

「科学の目」を持って世界を紹介する、科学ドキュメンタリー番組。（１９７５年４月６日～１９８６年１２月２８日）◆日本の象徴でもある富士山。しかし、意外にこの富士山は多くの謎を持つ。夏でも氷のたえない氷穴、風穴の不思議、地中から水を噴き出す白糸の滝、迷いこんだら二度と出られないといわれる青木ヶ原の樹海。そして様々な火山現象の痕跡。また、標高３，７７６メートルの薄い大気の引き起こすふしぎな現象など、日本の霊峰、富士山に隠された七つの謎を追い、日本人の伝統的山岳信仰の象徴ともなっている知られざる富士山の姿を描く。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

北海道の山が「夢の大地」として都会の人たちに売られている。そこには、戦後開拓者たちが老い、後継者もないため土地を手放さなければならない現実がある。一旦都会の人たちの手に渡った山は細分化され、時価の百倍もの価格で転売される。投機のため一片の証紙として都会を漂泊するのである。その間、山は手入れされることもなく、植林のあてもなく、ただ笹のはびこるところとなり、荒れていく。

元暴走族の保（長渕剛）と元スケバンの加代（志穂美悦子）の内縁の夫婦は、下町で小さいラーメン屋を営んでいる。気が強い２人の間でケンカが絶えない。ある日、男性客が小学生の麻理男（柴田一幸）を置き去りにしていった。結局、２人は麻理男の面倒を見ることになった。しかし麻理男は自閉的で、保がリュックサックに手をかけると暴れた。リュックの中には麻理男の母が家出し、父も人が変わってしまったという作文が入っていた。こうして３人の奇妙な生活がはじまった。（１９８６年８月１６日終了）

「女の人差し指」「眠る盃」などの向田邦子のエッセーをもとに、昭和中期の家庭と家族の心の中に起きたさざ波のような動揺を、良き時代の正月風景の中に捉えようとしたドラマ。太平洋戦争がすぐそこまで迫って来ていた１９４０年（昭１５）１１月、紀元２６００年式典の夜、軍人遺族の家の長女・文子は暴漢に襲われたが、連城という男に助けられた。文子は連城に好意を抱くようになるが、文子には婚約者の海軍士官・三村がいた。

天平時代に生きた吉備真備と和気清麻呂は、吉備という同じ故郷をもち、しかも同時代に生きていながら、逢ったことがないというのが“常識”であった。しかし、真備は称徳天皇の東宮大夫であり、天皇腹心の広虫は、清麻呂の実姉であり、清麻呂は称徳にかわって帝位をねらう道鏡の野望をくじいている。このように時代背景は２人が関わらないはずがないほど２人を接近させている。そこで、“２人は逢っていた”という仮説をもとに、当時を再現していき、日本の“歴史の常識”に一石を投じる。

“クラシック音楽の大衆化”を意図したユニークな内容と個性ある司会で、長寿番組として定着したクラシック音楽番組。この回は日本歌曲の創始者・山田耕筰の生誕百年を記念し、彼の名曲を聞きながら偉大な足跡をたどる。司会は黛敏郎。◆山田耕筰は１８８６年（明治１９）６月９日、東京に生まれた。東京音楽学校を卒業後、ドイツへ留学。帰国してから日本最初の本格的シンフォニーオーケストラ（東京フィルハーモニー管弦楽団）、さらに日本交響曲協会管弦楽団を組織。生涯に声楽曲を６８８曲、校歌・団体歌を４８９曲も作曲した。