言葉一筋に、人の心を耕して、聞く人に生きる喜びを与える。そんな話芸の名手を招く番組である。一回目は、陽気な長屋の人たちのお花見風景。長屋の住人が大家の招待で、上野の山へ花見に行く。しかし大家とてふところが豊かなわけはなく、酒は茶を薄めたもの、卵焼はたくわん、かまぼこは大根といったふうに見立て花見を楽しむ。貧乏を笑いに変えてしまう庶民の陽気さがたのしい。

母親がいないだけに、ちょっと恋人同士のような父娘。娘が２０歳を迎えた日から、２５歳で嫁ぐ日までを描く。（１９９１年４月１９日〜６月２０日放送、全１０回）◆第１回「ひとり娘　夏実誕生」。１０年前に妻を亡くしてから、志村五郎（田村正和）は一人娘の夏実を掌中の玉のように育ててきた。友人が開いてくれた２０歳の誕生パーティーで、夏実（小泉今日子）は初めての失恋を経験する。

ゲストを迎えて心理テストやゲームを楽しみながら、人の潜在意識を読みとる心理学バラエティー番組。司会は所ジョージと山口美江、パネラーは泉谷しげる、かとうれいこ、マインド・ナビゲーターは美輪明宏。（１９９１年４月２０日〜１９９２年３月２１日放送）◆第１回のゲストは近藤真彦。たい焼きの食べ方で“負けず嫌いの楽天家”と分析され、納得する一同に思わず言い訳する。ほかに「心拍数と第一印象」「あなたならどうする？」、ユニークな実験や写真を使った心理ゲームなど。

幕末に洋学導入の場であった七尾語学所について、今井一良さん（日本英学史学会北陸支部長）に聞く。◆ペリーが来訪し大政奉還へと幕末が動く。加賀藩はそんな維新には乗り遅れたが、海防の強化、語学・科学技術の必要性を感じ、対策を講じた。壮猶館の開設と、それを発展させた七尾軍艦所、七尾語学所の設置である。◆そこにはパーシバル・オーズボンなど６人のお雇い外国人が来て、日本人と結婚した者、日本の墓に入った者など、国際交流の先端の役割を果たした。

海洋国家として世界に君臨していた、１７世紀オランダ。首都アムステルダムで活躍したのが、ヨーロッパ絵画史上最大の巨匠ともいわれるレンブラントだった。商人仲間から“集団肖像画”の注文が相次ぎ、彼は名誉と莫大な報酬を得て頂点にのぼりつめた。一方で彼は、生涯１００枚に及ぶ自画像を描いた。人々の内面に光をあて、生々しい人間像を描いた裏で、自画像には自分の人生そのものを表現したのだろう。華やいだ時期は去り、晩年は無名となって過ごした。◆ハルメンスゾーン・ファン・レイン・レンブラント（１６０６〜１６６９）「寺院内のシメオン」「目をえぐられるサムソン」「ユダヤの花嫁」「夜警」「トウルブ博士の解剖講義」「自画像」、国立アムステルダム美術館

強制連行され炭坑労働のすえ死亡した朝鮮人労働者たちの実態や遺族の生活を記録した記録作家の調査活動を通して、忘れられつつある強制連行の実態を明らかにする。◆筑豊の記録作家林えいだいさんは、終戦直前に作られた崎戸炭鉱・端島炭鉱で死亡した朝鮮人労働者の埋火葬認可交付名簿の存在をつきとめ、この名簿をもとに死者の故郷へ１７０通の手紙を送った。これに返事を寄せた２９遺族を韓国に訪ね、強制連行の様子、炭鉱の死者の取り扱い、その後の遺族の生活などの証言を記録した。

天才物理学者アルベルト・アインシュタイン（１８７９〜１９５６）に関係する言葉をキーワードに、彼が考え到達した「知の世界」を理解する、いわば広大な頭脳宇宙へ旅するシリーズ。（１９９１年４月２６日〜１２月２２日、全８回）◆第１回は時空の果てにある黄泉の国からアインシュタインが甦ってくるという想定で、なぜ彼は天国ではなくて黄泉の国にいるのかという謎を巡って幻想的な知的冒険の世界を展開する。

足利尊氏の生涯を描くＮＨＫ大河ドラマ第２９作「太平記」の総集編。全４回。原作：吉川英治。◆第１回「青春」。源氏の棟梁として生を受けた足利太郎高氏（後の尊氏／真田広之）は、その宿命に悩み、北条一族の独裁下にある鎌倉幕府の腐敗に疑問を抱く。その中で京の都を見、帝を見た尊氏は強烈な印象を受け、幕府打倒を心に誓う。一方では藤夜叉への恋ゆえにすべてを捨てて二人で暮らうとさえ思い詰めるが、父・貞氏は尊氏に棟梁としての覚悟を迫る。