慶長の役（１５９８）で朝鮮から拉致され、薩摩で焼き物をはじめた朝鮮陶工たち。歴史を受け継ぐ彼らの中心的存在、第十四代沈寿官。先祖代々の伝統を受け継ぎ、今も薩摩の地で蹴ろくろを回して登り窯で優品を作り続ける。寿官陶苑には、歴史の苦闘と栄光を物語る名品が並ぶ。朝鮮民族の血脈の誇りと、文化性ゆたかな祖国への畏敬の念、先代十三代の父の背中を見て育った感謝の念を、万感の思いを込めて語る沈寿官さん。その作陶技術の現場と精神風土に迫る。◆浮彫雲文耳付大花瓶（大阪万博出品作）、鳳凰文細頸花瓶（韓国大田万博出品作）

約２２００年前、古代中国を初めて統一した秦の始皇帝。文字や度量衡、通貨などを統一し、徹底的な法治主義を貫いた一方で、「焚書坑儒」に代表される弾圧と殺戮の実行者でもあった。明君と暴君との双面を併せ持つ始皇帝の実像を探る。（１９９４年９月２３日〜１１月２５日放送、全３回）◆第三回。晩年の始皇帝が追い求めた“不老不死”の夢。始皇帝は永遠の生命を生きることを願って、自らの陵墓の地下に謎の宮殿を作り、それを守る軍団・兵馬俑を配した。コンピューターグラフィックスで地下宮殿を再現し、そこに込められた始皇帝の不老不死への夢を描く。

魅力的な胡弓の音色に加え、人間的な深みで人々を魅了する胡弓奏者の楊興新（ヤン・シンシン）。その苦難の半生と、日比谷公会堂でのコンサートに向けての奮闘を描く。◆父は政治犯として投獄され、彼自身も文化大革命の嵐に巻き込まれて苦しんだ。胡弓だけを心の支えとして来日して６年、ボランティアの支援で小さなコンサートを各地で開き、やがて日本人女性と結婚する。楊をささえてがんばってきた彼女は病に倒れたが、リハビリに前向きに取り組んでいる。そして１９９４年７月、東京・日比谷公会堂で開いたコンサートには２千人の聴衆が集まった。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「停車駅」と題して、ロシア・シベリア鉄道（ウラジオストク・ハバロフスク）を紹介する。

佃島の祭に行った次郎兵衛。その日最後の帰りの船に乗ろうとしたところ、無理やり女に引き止められた。女は３年前、身投げ寸前のところを次郎兵衛に助けられたのだという。そこに、先ほど乗ろうとした船が沈み、ひとりも助からなかったという知らせが入った。

地球上に生命が誕生してから４０億年の進化を辿りながら、生まれては死んでいく生命がさまざまな形で紡いできたドラマをロマン豊かに描くシリーズ。（１９９４年４月２４日〜１９９５年３月１９日放送、全１０回）◆第５集。鳥はなぜ大空を目指し、どのようにして飛ぶ能力を獲得したのだろうか。ドイツの石切り場で見つかった１億５千万年前の始祖鳥の羽毛の化石を手がかりに、その起源と進化のなぞに迫っていく。それはすべてを飛ぶことに賭けた生命の極致の姿である。

「優秀」といわれる日本の官僚は、いつどのように権力を握り、どのような役割を果たしているのか。また国際的にはどう評価されているのか。３夜連続で、政治の舞台裏にくりひろげられる官僚たちの物語に光を当て、検証する。◆第３回は、官庁の中の官庁といわれる大蔵省の強力な支配力の源流をたどる。戦後改革の時代、片山社会党連立内閣の下で大蔵省解体計画が進められ、首相直属の経済安定本部という新しい官僚機構が強化されていった。予算編成権をめぐる大蔵省と経済安定本部の死闘を追う。

小林清親（１８４７〜１９１５）は、浮世絵を近代絵画へと再生させ、江戸版画にはなかった光と影の調和を生かした“光線画”と呼ばれる新しい技法を編み出した近代版画の先駆者だった。西洋画の技法を採り入れ、時代を風刺するポンチ画なども描いた。新東京名所シリーズや、マンガ新版三十二相などさまざまな画題に絵筆をふるったが、その本領は斬新な感覚と鋭い観察眼を基本に置いた叙情であった。明治１０年代の東京を詩的かつ写実的に描いた彼の作品を見つつ、現在にその実景を訪ねる。◆小林清親作品「東京新大橋雨中図」、「東京銀座日報社」、「海運橋・第一国立銀行」、「駿賀町雪」、「九段坂五月夜」、「根津神社秋色」、「柿に目白」、「大川端新大橋」（ポンチ絵）