成川美術館は元新聞記者の成川実が個人で開いた美術館である。芦ノ湖を見下ろす高台に建つ。高山辰雄、平山郁夫など、現代日本画の代表的作家を網羅している。とりわけ、成川が傾倒した山本丘人に一室を設けている。丘人は１９４８年、新しい日本画を目指して「創造芸術」を結成し、従前の画壇と訣別。心象風景を提唱して日本画界に新風を巻き起こし、欧米のモダンアートにも肩を並べ得る現代日本画を生み出した。（箱根町）

わが子の強さを試すため谷へけ落とす親獅子と、それに答えた子獅子が谷を駆け上がる。親子の喜びの連れ舞を描く曲。◆能楽の『石橋』を基にした親子の獅子が舞う勇壮な曲である。獅子は中国で考えられた、浄土にいる空想の動物である。２種類の曲があるが、番組では杵屋勝三郎の曲を紹介する。唄・三味線・囃子の活躍する、華やかで見どころ聞きどころの多い曲である。◆「連獅子」唄野口悦治、渡辺雅弘、杵屋崇光、三味線杵屋勝雄治、鼓望月太喜雄、堅田喜三郎。◆副音声は英語

平成４（１９９２）年度の芸術選奨文部大臣賞を受賞した舞踊家・藤間章作と、箏曲家・米川文勝之（ふみかつ）の演奏、受賞の喜びを紹介する。藤間の受賞作「圓果の譜」（たちばなのふ）は古事記、日本書紀の田島守の話に題材をとった創作舞踊で、衣裳をつけず紋付き・羽織の素踊りでの表現を追求したもの。一方、米川が演奏する箏曲「明石」は源氏物語・明石の巻を中心に和歌で綴る組箏曲の古典である。また演劇評論家・藤田洋の受賞は「演劇年表」三巻の執筆・出版が評価された。

　日本海に浮かぶ石川県の能登島町に世界でも珍しいガラス専門の美術館がある。イタリア・ヴェネチアのムラノ島に住むガラス彫刻家エジディオ・コスタンチーニは、従来の生活用具から芸術的造形の素材へと、ガラスの新しい可能性を拡げ、ピカソやコクトーなど気鋭の芸術家たちと盛んに共同製作を行った。他、中国清時代のガラス器や、現代日本作家の屋外造形などを展示し、光と色彩感豊かなユニークな美術館となっている。

農政に翻弄され将来に大きな不安を抱いている開拓農家集落の戦後史を縦糸、開拓農家２代目の人となりと思索・戸惑いを横糸に、わが国の農業政策を検証する。◆宮城県に住む彼は、かつては農協青年の委員長もつとめて自由化反対・農政批判を叫んだが、一農民として日本農業の未来を考えると簡単に答えは出ない。食管法から農地開放、米の増産、減反と戦後農政は変化し続け、農村では高齢化・後継者不足で地域は衰退し続ける。彼は農閑期を使って地元の開拓農家やモデル農村、農林水産省や農協を訪れる。

市川團十郎を迎えて、歌舞伎十八番中唯一の世話物『助六』の役作りの苦心や背景を聞く。◆助六（実は曽我五郎時宗）が吉原で家宝の名刀を探し出す筋である。武士に対して町人が威勢を示すところに、江戸市民の喝さいを浴びた理由がある。見どころは助六の出の部分である。◆副音声は英語

現代日本画のルーツともいわれる四条・円山派の開祖、円山応挙。江戸後期に彼が確立した写生画は、低迷していた江戸画壇に新風を吹き込んだ。天が創造した自然の美を忠実に写しとり、それによって内面にまで切り込むことに生涯をかけた。不遇の時代に世話になった大乗寺に、恩返しのため１０人の弟子と二人の息子とともに１６５面の障壁画を描いた。その壮絶なまでの襖絵を中心に、絶筆「保津川図屏風」にいたるまでの応挙の画法とその真髄を探る。◆【国宝】雪松図屏風（三井文庫）【重要文化財】牡丹に孔雀図（萬野美術館）、藤花図屏風（根津美術館）、大乗寺襖絵群孔雀間・芭蕉ノ間・山水ノ間

作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔を探るシリーズ。◆戊辰戦争で行方不明になった両親と妹を探すことに一生をかけた、いわき出身の歌人・天田愚庵。山岡鉄舟と巡り会い、一時は清水次郎長の養子になるなど全国を放浪し続けて、晩年は出家し京都に庵を構えた。短歌・俳句で明治の文学界に多くの業績を残した愚庵の生涯を紹介する。