美和子は姉・秋江を訪ね、富士からでてくるが留守。隣室の女・信子の話では、秋江はキャバレーに勤め、立川という男と同せいしているという。信子の助けで部屋に入った美和子は、畳の上に大きな血痕を見つけがく然となる。アパートに血痕を残したまま消息を絶ってしまった姉。美和子は真相解明にのりだす。原作：夏樹静子。

日本海に面した能登半島輪島。ここで生まれ育った漆の工芸「輪島塗」は５００年余りの歴史を誇り、他に類を見ない堅ろうさと高度な技術に裏打ちされた芸術性を秘めている。一つの製品が仕上がるのに７５の工程と６カ月の時間がかかる。◆それぞれに分業化された技法を「木地作り」「乾漆」「沈金」「蒔絵」の４人の仕事ぶりを中心に紹介。漆器の原材料に恵まれ、厳冬期の室内作業に適していた風土と技の伝習を探る。

作曲家・中山晋平の生誕１００年の年に、晋平ゆかりの人々による回顧録と視聴者から募った「私と晋平」の便りをもとにした歌とでつづる記念番組。◆１８８７年（明治２０）長野県日野村（現中野市）に生まれた中山晋平は、１９１４年（大正３）の“カチューシャの唄”の大ヒットで作曲の道を歩みはじめ、１９５２年（昭和２７）に亡くなるまで流行歌、童謡、新民謡など幅広い分野で数多くの名作を残した。東京音楽学校を出ながらも、大衆を離れた芸術はあり得ないという信念をもち世人に口ずさまれる歌いやすい曲を作り続けていた。

京都の神護寺に伝わる源頼朝と平重盛の肖像画を作家の栗田勇さんが訪ね、「東洋の逸品」とたたえられたその魅力を探る。◆５月上旬の５日間、神護寺で年に一度の虫払いの行事が行われる。経文や掛軸を蔵から取り出して風に当てるこの行事では、２０００を超える重要文化財や国宝の中から由緒ある６０余りの宝物が書院に並べられ、公開される。頼朝と重盛の２枚の肖像画は、この折、京都国立博物館から里帰りする。鎌倉幕府を開いた征夷大将軍・源頼朝と平清盛の長男・重盛の像画は、ともに国宝で、日本の肖像画の最高傑作といわれている。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆象牙に下絵を張りその型にそって切り取り、更に箱にうめ込み立体的に飾りを作っていく独特な手法の芝山漆器。西洋人に好まれたことから現在も横浜に残る数少ない伝統工芸を紹介する。指物師、塗師、蒔絵師など何人もの技師により、漆器が完成される。

仮装のアイデアのユニークさ、演技力、制作力を競う仮装コンテスト。１９７９年（昭和５４年）のスタート以来２０回目となった。◆２０回記念大会とあって、全国から１１２３５組もの応募があり、書類審査を経て全国１４ヶ所での地方予選、勝ち抜いた５５組が正月返上で東京での本選に出場した。

９０歳の今も能のシテ方として活躍する能楽・喜多流の重鎮、後藤得三の活動を見る。◆人間国宝の後藤得三が国宝の本願寺北能舞台で舞う。喜多流再興の祖・十四世喜多六平太とのけいこや舞台風景映像も貴重な資料である。無理な力を入れようとせず、内なる力を引用する自然体が能の極意であると説く。

１９５５年（明治２８）、ヨーロッパの伯爵家に嫁いだ女性・青山光子の数奇な生涯を描き、現代の視点から“国際人”と“世界の中の日本”のもつ問題を考えるドキュメンタリーシリーズ。リポーターの吉永小百合が１５年前に光子役を演じたドラマの映像と、新たに撮影した映像とを交錯させながら構成する。（１９８７年５月４日〜６月１日放送、全５回）◆最終回は、光子の死後に彼女の子どもたちがたどった運命を追う。長男は抑留され、次男は亡命し、次女は難民の隊列に加わる。激動の２０世紀の辛酸をなめた彼らの行く末をみつめ、新たな世紀末を迎える現代を考える。