夏の名古屋城。売店に勤める伸子（かとうかずこ）のもとへ、旅で知り合った商社マン・小倉（片岡孝夫）が訪ねてきた。猿面茶席で茶道の若先生のふりをする伸子に、小倉は意外な頼みを切り出す。「“蝶の鼓”をみせてもらいたい。出来れば譲ってほしい」。その鼓は茶席の亭主である衣沙子（奈良岡朋子）のものだ。話は２５年前へとさかのぼっていく。小雪舞う京都・白川巽橋、１人の少年が父の使いとして、ある小料理屋を訪れる。

昭和初期、首相専属の運転士を務めたひとりの男の証言でつづる、知られざる宰相像。バックミラー越しに見た首相たちの素顔を紹介するドキュメント。◆柄澤好三郎さんは元ドライバー。内閣総理大臣付きとして１９２７年（昭和２）から４８年（昭和２３）まで、２０人の首相を運んだ。その間には、５・１５事件、２・２６事件などのテロも身近に目撃している。田中義一から吉田茂まで２０人の首相の素顔とエピソードを、柄澤さんの視点から描いていく。

１９０５年（明治３８）８月から９月にかけてアメリカのポーツマスで開かれた日露講和会議を軸に、新たな視点で近代日本の外交史を描いていく。（全４回）

大草原が広がる天山北路。大空間の中を天馬が縦横に駆け巡る。昔さながらの遊牧を続ける草原の民族たち。新疆ウイグル自治区の東端、交通の要衝ハミから中ソ国境イリまでの旅。ハザック族の鷹匠一家や、ジュルガン盆地のパオ生活、北路の歴史を語るバリコン湖、中国最西端のセリム湖の絹馬交易会には近郊から少数民族が集まり、さながら民族バザールの感を呈する。イリ河の流れの先はローマだが、中ソ国境検問所で西への旅は断念した。◆北庭都護府

夫に先立たれたあと、姑に仕える一人の女性を主人公に、主婦の幸せ、本当の自由とは何かを問いかけるホーム・ドラマ。水木洋子の書き下ろし。（１９８１年１１月１０日～１９８２年４月２０日放送、全２４回）◆夫に隠し子がいたと知って大ショックのこま子（池内淳子）を、父・佐太郎（金子信雄）は料理屋へ連れ出し、親子水いらずの時間をつくった。酔いつぶれたこま子を佐太郎は実家へ連れ戻そうとするが、こま子は福山家へ帰るという。そのころ、福山家では、ヒロ子（木ノ葉のこ）をめぐってひと騒動が起きていた。

豊臣秀吉の死から徳川幕府の確立まで、天下分け目の関ケ原を延べ７時間で描く。ＴＢＳ東京放送創立３０周年特別番組。原作：司馬遼太郎。（１９８１年１月２日〜１月４日、全３回）◆第二夜は徳川家康と石田三成の対決の様相が深まっていく過程を描く。天下は東西両陣営にしぼられていき、そのために多くの女たちの運命も狂わされていった。

箱根の山を走る登山電車の姿を描きながら、沿線の人々の生活と自然を紹介する。◆登山電車は、スピード優先の現代にも時速１５キロで走り続け、人々に親しまれている。ここに暮らす人々や箱根町立温泉小学校と子供たち、国産の新型車両「ベルニナ号」の走り、電車の周りに咲く、しだれ桜の美しさなど、春の箱根路を伝える。

かつては水量豊かで、人や物資の水運路であった太田川。木材を流した筏師たちが歌った流し唄を紹介する。◆戸河内町から可部に至る太田川本流の流域には森林が広がり、産出される木材は筏流しによって運ばれた。大正時代には川舟が３５０艘上下し、筏は１日平均１０組が下る賑わいであった。源流に近い奥地で切り出された材木は「筏場」や「筏浜」と呼ばれる箇所に集められ、筏に組み上げられて、広島へ向かった。筏流し唄は急流や早瀬では棹使いに忙しく歌う暇も無いが、流れが緩やかになると自然に口を突いて出た訳である。戸河内の唄に比べ、それより下の加計あたりの唄が更に緩調子なのも面白い。