米軍が広島と長崎に原子爆弾を投下した後、いち早く現地入りした日本の科学者と日本映画社のスタッフが撮影し、完成後アメリカに送られた幻の原爆映画の足跡を追う。レポーターは、中国放送報道部の秋信利彦。◆１９６７年、アメリカ政府から幻の原爆記録映画の１６ミリ複製が日本政府に返還されたが、３５ミリのネガ原版と膨大な未編集フィルムは未返還のままとなっている。東京経済大学の古川純教授は在米時代にワシントンにある国立公文書館で原爆記録映画に関する資料を発見した。そこには、「このフィルムは米太平洋軍総司令部が監督、完成させたもので、一般公衆に見せるための映画ではないので検閲の対象ではない」とあった。番組はプレスコード（１９４５年９月に連合国占領軍総司令本部・ＧＨＱが、日本の新聞に対し、主として占領政策への批判を取り締まる目的で命じた規則。これに基づいて４９年まで検閲が実施された）のシンボルとされてきたこの原爆記録映画が製作され、アメリカに送られた経緯を関係者の証言をもとに探る。

円筒形のロウ管レコードに収録されていたアイヌ古謡をもとに創作したオペレッタを上演するまでの、子どもたちの奮闘ぶりを追うドキュメント。１９８４年（昭５９）夏、札幌。オペレッタ「ピウスツキおじさんのロウ管からでたお話」が上演された。これは、アイヌ古来の伝承「自然とともに人はある」を現代の子供たちに伝えたいという願いをこめて、主催者グループの母親たちの代表・細川真理子さんが創作したもの。

人類の遠い親類マウンテンゴリラが人間によって追い詰められている現実と、その中でユーモラスな生活を送る森の巨人たちの姿を伝えるドキュメント。アフリカの中央、赤道直下の山岳地帯に、体重２００キロを超える地上最大の類人猿、マウンテンゴリラの生息地がある。その数わずか４００頭。保護が強く叫ばれているパンダの半分にも満たない。取材班はルワンダ政府の好意により、このマウンテンゴリラの野生の姿を間近に観察することが許された。

岩手県和賀地方、使う人も意味のわかる人も少なくなった“ねってし”という方言の真の意味を求めて、豊原ミツ子レポーターが旅をする。長く厳しい冬が終わり、春耕、田植え、そしてさなぶり（田植えを終えた祝い）と、農家の人々の生活は進む。そんな中、“ねってし人間”たちとのユーモアあふれる出会いを通して、都会にはない、そして現代人に欠けている何かを発見していく。

アジアの中で日本が果たすべき役割は何か、アジアと日本の進むべき道はどんなものか。現地取材を素材に、スタジオに招いたアジアの人々、アメリカやアジアの有識者と、双方向ＣＡＴＶによって結んだ１６０世帯で討論し、考える。（１９８４年１月１日開始、全２回）◆第２回のテーマは「日本の中のアジア」。

子ども向けの連続人形劇。捨て猫ヨゴロウザが、てんでんバラバラに住みついている野良猫の丘に迷い込み、野良犬の暴力から猫たちを守るため、猫を一つにまとめようと奮闘する物語。一文字、テツガク、オオグライなどユニークな猫たちに囲まれ、ボンボン猫の主人公が、猫の共和国建設をめざして成長していく。原作：上野瞭。（１９８４年４月２日〜１９８５年３月１８日放送、全２１３回）

画家・丸木夫妻の、沖縄の地上戦を描いた「沖縄戦の図」が完成するまでを追ったドキュメンタリー。「原爆の図」で知られる丸木位里さん（８３歳）、俊さん（７２歳）夫妻は、沖縄に渡り、縦４ｍ×横８．５ｍという大作に取り組んだ。「沖縄戦を描くことこそ、戦争の本当の姿を描くことになると気づいたから」という。夫妻は那覇市の首里に滞在し、戦争の爪痕の残る沖縄各地を訪ね歩いた。そして人々の証言を基に、スケッチを重ねていく。

修学旅行で広島に行った大阪の高校２年生たちが、翌年の夏休みに再び広島へ行こうと運動を起こす。修学旅行では、年老いた被爆者たちが生徒たちを広島の平和公園に案内し、今まで誰にも話さなかった被爆体験を語った。すさみがちな高校生たちと原爆で青春を失った被爆者との交流が芽生えた。生徒たちは幾多の試練を乗り越えて感動的な再会を果たす。番組では、生徒たちに与えたヒロシマの衝撃は何だったのか、旅行実現までの１年間を記録し、平和の大切さだけでなく人を見る目の原点を問いかける。