働くことしか知らない幸助のただ一つのたのしみは喧嘩の仲裁であった。それをうまく利用してわざと喧嘩をし、仲裁してもらい、仲直りの席を設けさせて一杯やる男たち。幸助は自分の仲裁に満足して町を歩いていると、浄瑠璃の稽古屋から嫁いびりの話が聞こえてくる。早速その人物の名前と居所を聞いて駆けつける。芝居の世界の話を実際に起こっている話と勘違いして世話をやく男のおかしな噺。

地唄舞の名手、武原はんは、９０才にして、国立劇場などの舞台に立つ、現役の舞い手である。四国の徳島に生まれ、１２才で大阪で山村流の上方舞を修業、後に上京して二世西川鯉三郎らに師事し、関西の地唄舞を東京に根付かせた。料亭の女将を勤める傍ら、俳句と文章を高浜虚子に学び、横山大観、小林古徑、梅原龍三郎など多くの画家、作家たちと交流を深め、自己の研鑽に努めた。渡辺保は、座敷芸だった地唄舞を劇場の舞台に上げ、いわば全国区の芸に高めたのは、彼女の功績だという。

江戸の川を舞台にした長唄の素踊り二題を、若手舞踊家、演奏家により紹介する。往事、隅田川は江戸の庶民の楽しみの場として広く親しまれていた。「風流船揃」は、柳橋、山谷堀など、川遊びの舟で賑わう様子を現し、「多摩川」は鵜飼いや布晒しなど生活の場としての川を表現している。「渡辺保の部屋」では、この二つの川が持つ江戸の防衛線としての軍事的意味、飲料、産業、交通の利便に加え、京の賀茂川、大阪の淀川などと併せ、都市において川が果す文化的意義・機能を論じる。

カラハリの宝石と呼ばれるオカバンゴデルタの乾期と雨期の全く異なる表情と、そこでたくましく、したたかに生きている野生動物の貴重な生態を紹介する。◆アフリカ南部のボツワナ共和国・オカバンゴ湿原はカラハリ砂漠の北にある最大の内陸性湿原。中央アフリカに降る雨を集めて３００キロに及ぶオカバンゴ川となり、いくつもの湿原をつくってやがてサバンナに消える。その水の恵みで、周辺には何千何万もの生き物が暮らしている。遠い北から飛来した無数のフラミンゴ、リカオンの集団での狩り、ライオン夫婦のいとなみなど動物たちの生活、またアフリカ最古の民族であるサン族の子孫たちの自給自足の生活を紹介。◆関西テレビ開局３５周年記念番組

伊勢の町は、人と文化の集散の地だった。そんな伊勢の過去と現在を見る。遷宮特別企画。総合司会は森本毅郎。◆第八回「伊勢の町あれこれ」。安養寺には西行が庵を結んだ。芭蕉もこの地に何度も足を運んでいる。寂照寺の住職となった画僧月僊は、画料で荒れた寺を修復し、貧しい人々に施しをした。◆今、一色町の人たちは能を保存し、伝承して、一色神社の祭りに奉納している。伊勢音頭はここから全国に広まってさまざまな民謡の原型となったが、元歌と踊りの保存・伝承も熱心に行われている。昔の伊勢の町の一部の、復元運動も進行中だ。

大みそか恒例の特別番組、１９９３年（平成５）第４４回ＮＨＫ紅白歌合戦。歌謡界の話題曲と多彩な出演者、ゲストで一年を振り返る。テーマを「変わるにっぽん、変わらぬにっぽん」とし、日本と日本人のぬくもりを伝えるバラエティーショーとして構成する。司会は堺正章、石田ひかり。総合司会は森田美由紀アナウンサー。

エイズにまつわる医療の問題は世界各国が共通で抱えている。世界一エイズ患者が多いといわれるアメリカでの診療の実情と日本の診療体制の現状、問題点、今後の方向を探る４夜連続シリーズ。◆第１回はアメリカで人口に対してもっとも多くのエイズ患者が発生しているサンフランシスコの総合病院、エイズ病棟を取材。エイズの看護体制を確立するためのこれまでの努力と成果、問題点などについて看護婦長のディアン・ジョーンズさんに話を聞く。

加賀前田家は百万石を守り抜くため、幕府への恭順の証として数々の策を用いた。三代利常以来、美術工芸振興の文化政策を表に出すことで、幕府の厳しい監視の目をそらせた。現在の加賀工芸はその頃、藩の庇護の下で始まった。加賀友禅もその一つで、友禅流しまでの念の入った工程は今も受け継がれている。全国生産の９８％を占める金箔を使った、加賀鳶の纏の拵えはすばらしい。旅人は舟木一夫。◆第１１７０回　◆兼六園龍国寺