およそ１万年前から作り始められた土器。４，５００年余り前の縄文中期に突如、華やかな装飾を持った火炎土器が出現する。縄文時代の幾世代を経て最後に到達した姿で、盛り上がった装飾の力強さ、造形的美しさは古代人の心の叫びである。土器に命を与えるかのように創意を凝らし、彼らの自然観を込めて作られた。◆実際に粘土をこね火炎土器を復元しながら、古代人の心に触れ生活に実用化された実験をする。◆笹山遺跡出土火焔型土器〔十日町市博物館〕、幅上遺跡出土王冠型土器、南雲遺跡出土台付浅鉢、馬高遺跡出土火炎土器〔長岡市立科学博物館〕、石生前遺跡出土火炎土器〔福島県柳津町〕

元ソビエト連邦大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏が１９９２年４月１１日に来日した。１９９１年１２月に辞任した後、ゴルバチョフ基金を設立、国の内外で評論活動を展開している。氏をスタジオに招き、ペレストロイカや大統領失脚の回顧を含め、母国・ソ連の現状と今後をどう見るか話を聞く。

政治難民であると主張し国外退去処分を不当として裁判を起こしながら、係争中に強制送還された中国人女性の訴えを通じて、外国人の人権問題を考える。◆１９８９年、ベトナム難民を装った中国からの不法入国者が日本に押し寄せた。ほとんどは出稼ぎを目的としていたが、中国では天安門事件も起こっており政治難民が含まれていないとはかぎらない。２３歳の女性が政治難民であると主張して強制退去処分取消の訴訟を起こし、福岡弁護士会は人権擁護の立場から支援に乗り出した。しかし彼女は裁判の途中で強制送還され、中国公安当局に身柄を拘束されてしまう。

七宝焼とは、金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもの。起源は古く、日本の古墳時代の出土品にもその例がある。「七宝」という言葉は、仏教の極楽浄土のイメージとともに伝来した。七宝の持つガラスの輝きは歴史の中で断絶と復活を繰り返し、光と影が極端に時代の中で明滅する。桃山時代に興り江戸時代は沈黙、幕末・明治にかけ技術開発で不死鳥のごとく光彩を放つ。日本の七宝は、工芸家たちの努力と創意で全世界に羽ばたいている。◆【重要文化財】花雲形七宝文鐸〔個人〕◆【その他】七宝富嶽図額〔東京国立博物館〕、花クルス七宝釘隠〔大阪市立博物館〕、七宝飾り金具〔奈良国立博物館〕

京都の雅びを陰ながら演出する、名脇役の数々を紹介する。和服をひき立てる小物類、帯締、かんざし、扇子、下駄、足袋などの店を訪ね、それぞれに念の入った意匠の品を揃える専門店の、質の豊富さと粋の心を味わう。骨董店では古清水焼の渋さを、髪結いの店ではかんざしを使った髪形の美しさを見る。わき道に入って祇園閣、大雲院を訪れる。東福寺の臥雲橋と退耕庵を訪れ、最後に西京区でゆば料理を味わう。旅人は安奈淳。◆第１０８３回　◆祗園閣・大雲院臥雲橋（東福寺境内）退耕庵（東福寺塔頭）

加賀前田家ゆかりの寺、石川県小松市の那谷寺と、羽咋市の妙成寺。この２つの寺には徳川政権の下におかれた重圧の歴史が眠っている。共に三代藩主前田利常（１５９３〜１６５８）が建てた。利常は後水尾天皇と親交があり、加賀の地に王朝文化の再興を夢み、百万石の財力を投じた。江戸に人質として奪われた生母寿福院への思慕を壮麗な寺社や調度に託し、悲運を慰めた。利常は多くの一流芸術家を加賀に招き典雅に富んだ美術工芸を根付かせ、文化で対抗した。◆【重要文化財】那谷寺本堂、三重塔、書院、妙成寺二王門、本堂、祖師堂、三光堂、五重塔、山水蒔絵机〔妙成寺〕、山水蒔絵料紙筥、鶴下絵和歌巻（本阿弥光悦筆）〔京都国立博物館〕

　山口県萩市にある熊谷美術館は、毛利藩の御用商人として栄えた熊谷家の歴代当主が蒐集した古美術品を１９６５年に美術館として公開したもの。重要文化財に指定されている豪商の家屋や蔵が展示場になっている。古萩の陶器や、江戸期の書画骨董に見るべきものが多い。歴代主人のうち特に四代目は文化愛好者としてシーボルトとも親交を結び、六代目は幕末、維新の志士の支援者として活動した。

馬鹿正直で純な男・森の石松が、親分・清水の次郎長の名代として出かける金比羅参りの珍道中を描く時代劇。◆ある日、石松は親分から四国の金毘羅様に刀を奉納に行くよう頼まれる。親分の名代という大役に勇んで旅立った石松は、無事役目を果たすと、帰りに見受山の侠客・鎌太郎を訪ねた。鎌太郎は、次郎長の女房の香典に、と石松に百両を託す。しかし石松は、浜松で再会した兄弟分に泣きつかれてその百両を貸してしまう。