古都奈良の北の端、奈良阪町にある奈良豆比古神社では、毎年１０月８日の夜、氏子らにより『翁舞』が奉納される。翁講の２４軒の男たちが役割を決め、「太夫の舞」「三番叟」などを舞う。平安末期、猿楽座で舞われていたものを、ある時期村が権利を買って村人自身で演ずるようになり、長年維持してきた。大切に保管されてきた古い面を付け翁の姿となった神が、天下泰平と五穀豊じょうを祝福する。伝統と格式のある厳かな民間芸能である。◆【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財】奈良豆比古神社の翁舞〔奈良県〕

秋田県比内町は、十和田湖の南の、周囲を山に囲まれた盆地で、人気の高い秋田小町の産地として知られているが、９月末、畑では「とんぶり」の収穫が始まる。とんぶりというのは箒草の実のこと。箒草は、その名のとおり早くから草箒として使われていたが、江戸時代には、この箒草の実を食べるようになっていたという。とんぶりについて、とんぶり農家の野呂さん夫婦に話を聞く。

昭和２０年（１９４５）８月２１日、終戦直後の日本では進駐軍兵士の欲望を処理するために、特殊慰安施設協会（ＲＡＡ）を設立した。性の防波堤として集められた多くの女性たちと、その組織に翻弄される男たち、慰安婦たちの恋愛、友情などを通して、戦後とは何かを問うドキュメンタリードラマ。◆銀座で喫茶店を営む多賀（津川雅彦）は元商社勤務の英語力を見込まれ、進駐軍向けの慰安所設立を依頼される。それはアメリカ兵から良家子女の純潔を守るという名目で作られた国家的な売春施設だった。そのために集められたのは、故郷を失くし行く当てもない芸者・雪枝（かたせ梨乃）や、３０人ほどの女たちだった。

ある認知症の医療施設で行われている、薬物を使わない治療の試みを紹介するドキュメンタリー。◆島根県は全国一の高齢県。同県出雲市にある認知症専門の医療施設「小山のお家（おやまのおうち）」では、画期的な集団精神療法を行い、成果を上げている。この病気の治療は従来、介護と薬の投与が中心だったが、小山のお家ではお年寄りが集団の中で自分を取り戻し、心を開いてゆく。施設の取り組みと、老人の家族の姿を追う。

大店の旦那が内緒で出かけるのをおかみさんが怪しんで、小僧の定吉に後をつけさせる。妾宅に泊まる旦那は、定吉に口止めの小遣いと、おもちゃの独楽を三つくれる。これは、それぞれを旦那、おかみさん、お妾さんと決めて三つを回し、泊まる家を占っていたもの。定吉帰ってから懐に入れていた独楽がおかみさんに見つかり、これは何かと問い詰められる。

職もなく道楽者の八五郎、蒟蒻屋六兵衛の世話で住職のいない寺の和尚になったが、経も読めず朝から酒を飲んでいる。ある日、永平寺の修行僧が来て禅問答を申し込む。だめな八五郎に代わって和尚になりすました六兵衛、問答には答えられず、黙り込みを続ける。これを無言の行中だと早合点した修行僧、しからばと自分も手だけで問答するが、そのうち互いに意味を勘違いする。

いろは歌を“酔ひもせず”までフレーズに分け、それぞれの中からキーワードを探して、日本人の持つ繊細な感性や美意識、精神性豊かな心の風景、時代を越えて新しさを求めつづけてきた日本文化をうたいあげる。“色即是空”“無常感”“余情感”“花鳥風月”“職人たちの感性”など日本固有の伝統美の系譜を、番組の監修者である衛藤駿・松岡正剛両氏の造詣ある会話で展望する。◆【国宝】三仏寺投入堂、金剛力士像（東大寺）、俊上房重源上人坐像（東大寺）、紅白梅図（ＭＯＡ美術館）、風神雷神図（建仁寺）、日光東照宮陽明門、薬師寺東塔

地球上に生命が誕生してから４０億年の進化を辿りながら、生まれては死んでいく生命がさまざまな形で紡いできたドラマをロマン豊かに描くシリーズ。（１９９４年４月２４日〜１９９５年３月１９日放送、全１０回）◆シリーズ最終回は、地球と生命との絶妙なメカニズムを紐解くとともに、それだけでは説明のつかない生命の不思議な飛躍、ヒトという新しい進化を果たしたものが、何にどんな影響をあたえているのか、地球生命圏の重層構造を明らかにしていく。