世界には水資源に恵まれない国もあるが、日本では、どんなことにも豊富な水を使って生活してきた。福井県大野市は、九頭竜川の水と湧き水によって生きる、まさに日本的な街である。「殿様清水（しょうず）」は名水百選にも選ばれた。朝市にはよく洗った野菜が並び、酒づくりでは米をたっぷりの水に浸す。◆イトヨも水の街、大野を象徴する魚だ。体長５センチほどで、澄んだ水がないと絶滅する。近年湧き水の量が減り、イトヨも少なくなったという。イトヨが棲める環境は人にも大切だ。◆殿様清水、本願清水イトヨ生息地【天然記念物】

ドイツ南部、バイエルン州の街・バンベルクは、かつて「フランケンのローマ」と呼ばれ、西ヨーロッパの政治と宗教の中心都市であった。◆１１世紀初め、ドイツ国境付近での紛争を治めるため、時の神聖ローマ帝国皇帝、ハインリヒ２世がこの地に居を定め、それまで一地方都市にすぎなかったバンベルクが、俄に歴史の脚光を浴びることになった。◆司教座が置かれ、数多くの聖堂や修道院が建ち並び、重要な機関が、この街に集中した。◆甘草など、周辺の農業生産も盛んに行われた。◆バンベルク

２０世紀のある家族の足跡を親子三代にわたって描くシリーズ。第２回は、水俣病と闘ってきた漁民の家族を追う。◆両親を水俣病で亡くし、自らも闘病しながら子育てした杉本さんは、小中学生へ水俣病を語り継ぐ試みを始めた。親子の葛藤、地域社会との葛藤。公害は人の身体だけでなく、絆をも深く傷つけた。

広島には県立美術館をはじめ、多くの美術館があり、その環境、建物、収蔵品に特徴をもち、多くの人に親しまれている。番組では県内１３の美術館から、それぞれ２点の収蔵品（絵画、彫刻、書、陶磁器等）を推薦してもらい、美術館の環境、建物も含めて、毎回１作品を取り上げる。今回は平山郁夫の日本画「亜羅比亜の翁」。

広島県宮島町の厳島神社は、世界遺産にも登録されている。かつてこの島は神の住む地で、平清盛は神社を海につくった。現在、その厳しさはなく、門前町宮島は名産のしゃもじで賑わう。◆旧暦６月の大潮の日、管弦祭が催される。神輿が御座船に乗り込むと、漁師らに先導されて対岸に渡り、摂社をまわる。夜、満潮に戻ってきた御座船は、狭い回廊の中を三度まわり、祭りは終わる。◆山上の大聖院では、１２００年も燃え続ける「消えずの火」が、そんな祭りを黙って見おろしている。◆厳島【特別史跡・特別名勝】、厳島神社【国宝・重文】、管弦祭、大聖院霊火堂

昭和３９年（１９６４）、神戸市灘区の山中から大小１４点の銅鐸が発掘され、芸術性に優れている処から、その全部が国宝に指定された。トンボ、クモ、カマキリ、鹿、水鳥などの動物や、脱穀をする人物、稲の精霊を表す渦巻き模様などが巧みに描かれ、２０００年のロマンを実感させる。銅鐸は、初めて稲の栽培を始めた弥生時代の人々が、収穫の祭りの道具として用いたものと考えられるが、その後も島根県や佐賀県で新発見が相次いだ。現代の復元作業を通じて、古代の人々の夢を探る。◆桜ヶ丘町出土銅鐸【国宝】（２号銅鐸、４号銅鐸、５号銅鐸、６号銅鐸）、加茂岩倉遺跡（島根県）、吉野ヶ里遺跡出土銅鐸（佐賀県教育委員会）

人間のルーツを探り、人類が霊長類から進化する過程でどのような社会を形成してきたかを考えるシリーズ。今回は、ルワンダのマウンテンゴリラの社会を取り上げる。ゴリラの社会は、一夫多妻型である。この単雄の群れ社会は、家族の起源を想起させる。１９７８年以来の長期にわたる継続観察の成果をもとに、群れの構成原理を探究し、社会集団化の芽生えを考える。講師は京都大学の山極寿一助教授。

鉈（なた）や鑢（やすり）など道具を作る職人の技を伝える。◆大久保さんは農作業用の鍬や家庭用包丁を作る野鍛冶屋さん。トンビ鉈とも呼ばれる泊鉈は反りがあるので楽に切れる。地金に鋼を接合して鍛え、焼きを入れる。◆岡崎さんは、高岡銅器作りに欠かせない鑢を作る職人。焼鈍（やきなまし）で柔らかくした鋼に、１ミリに３～４本という細かな鑢目を、リズミカルに切っていく。◆二人の元には使い込まれた道具が修理のために持ち込まれる。道具は修理によってより良い道具に成長する。◆泊鉈（トンビ鉈）づくりの工程、手打ち鑢づくりの工程