最後の狂言作者といわれる河竹黙阿弥（１８１６〜１８９３）の代表作、『白浪五人男』を２回にわたって鑑賞する。◆本名題は『青砥稿花紅彩画』である。黙阿弥は白浪作者といわれるほど白浪物が多い。白浪とは大泥棒のこと。五人男の中で弁天小僧の役は、男と見破られて居直るときのたんかの切れの良さと、女形と立役の両方できることが要求される。◆「白浪五人男」三幕目浜松屋の場立方尾上菊五郎、十七世市村羽左衛門（重要無形文化財保持者）、二世尾上松緑（重要無形文化財保持者）。◆副音声は英語

「お燈まつりは男の祭り、山は火の海くだり龍」と新宮節に歌われる熊野御燈祭は、和歌山県新宮市の神倉神社を舞台に毎年２月６日に繰り広げられる火の祭典である。その準備から伝統行事のひとつひとつを追いかけ、地域の中で受け継がれてきた祭りと人々のつながりを紹介する。企画提供：和歌山県教育委員会。◆手話通訳あり

優美な美しさを誇る博多の伝統工芸品、博多人形。そのルーツを探り、名人といわれた故・小島与一氏の功績と傑作「三人舞妓」を紹介。その弟子である西頭哲三郎氏の博多人形作りの情熱とその匠の技に迫る。また、日々進歩する博多人形界において異彩を放つ人形作家中村信喬氏が作る現代的な博多人形も紹介する。

古来、人間の暮らしは水と切り離すことができない。山紫水明、豊かな水にめぐまれた日本全国から、水と共に生きてきた人々の営みとふるさとへの思いを伝える。◆村の９５パーセントを山林が占める岐阜県加子母村。渓谷の眺めが美しい付知峡めぐりの山道を辿ると、一軒宿に到着する。水車が生み出すわずかな電力は電話に使い、夜のあかりはランプのみという度合温泉。旅情を誘うランプの宿と、心温まる交流を描く。

自ら「ヘソ曲りの画描き」と称し、おのれの画を求めて戦後５０年を駆け抜けた画家・盤若一郎の生涯を追いながら、日本人が失ってきた「魂の輝き」を求める。◆１９１０年、高岡市に生まれた盤若一郎はセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンを画描きの原点として貫き通した。「ただ天を信じ、自分を頼み」名利を求めず素朴なものを信じて生きた「画鬼」は１９９４年６月に亡くなった。

太平洋戦争中に軍部の方針で新設された大東亜省が、軍部や文部省の協力を得てはじめた南方特別留学生制度。日本が「大東亜共栄圏」とした国々の指導的立場になるべき青年を集めて教育するというものであった。戦後５０年記念大会として開かれた同窓会に集まった人々のたどってきた道を考える。◆招かれたのはブルネイ、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、インドネシアの７か国からの９２人。当時は人質との噂もあったが、彼らは青春を送った日本に憎しみをもってはおらず思い出話に花を咲かせる。式典終了後、広島に学んだ７人は原爆平和祈念式典に参加、異邦で被爆して倒れた同窓生の墓に詣でる。

広島・長崎に原爆が投下されて５０年。加害者、被害者という立場を超え、被爆を大きな悲しみとして伝える朗読劇の上演が計画された。国籍を問わない呼びかけに応えたのは、日本のほか、アメリカ、中国、ドイツ、韓国、フィリピンなどの若者たち。戦争のことを学びながら、真摯に取り組む彼らの姿を通して「核」に対する世界の視線を伝える。また、国連における日本の核に対する対応の変遷や、核実験場となったフランス領タヒチの人々の思い、多くの人が放射線症に苦しむチェルノブイリの現状なども伝え、日本が世界で果たすべき役割について考える。

歌舞伎はミュージカルである。その音楽的４要素を取り上げて解説する。◆柝は舞台の進行の合図に使われ、ツケは走りや立ち回りに。下座音楽は背景音楽として。大薩摩は開幕時の豪快な語り口や華やかな三味線の演奏に。竹本は丸本物（浄瑠璃の特定の段だけでなく、全段を演奏するもの）で情景や心の描写に、それぞれ使われることが多い。これらの音を背に、役者は芝居を進めていくのである。◆副音声は英語