神戸で生まれ東京で育った、アジアの民族舞踊などを踊る在日朝鮮人４世の舞踊家、白香珠（ペクヒャンジュ）さんを取材し、彼女の思いを伝える。◆１５才の時、北京に留学し、中国第４回舞踊コンクールで優勝、優秀俳優賞を受賞。帰国後は１９９５年に初舞台、１９９６年４月に第２回リサイタルを成功させた。気迫のこもった踊りを紹介し、政治に左右されることなく、アジア各国、アメリカ、ヨーロッパでも公演したいという彼女の願いを描く。

文楽は人形芝居であるが、人形は義太夫節で芝居を進める。昔の人が文楽を「聞きに行く」と言う事に太夫の重さが分かる。義太夫は原則として一人の太夫がすべての登場人物を語り分けるのだが、そのためには各人物の「気持ち」を観客に伝え、感動させることが基本である。太夫が一番苦労する「情を語る」すなわち“心になる”ということについて、竹本住大夫さんが実際に“泣き”や“笑い”を表情豊かに演じ、詞・節・地について易しく語る。◆「生写朝顔話」、「妹背山女庭訓」、「摂州合邦辻」、「菅原伝授手習鑑」、竹本住大夫（重要無形文化財保持者）。◆副音声は英語

長崎県対馬の最南端の集落、豆酘には古代に渡って来た稲の原種といわれる赤米の田圃がある。これを神田（神の田圃）と呼び、収穫した米は神事だけに使われる。赤米の栽培、管理は９軒の「頭仲間」が一年交代で受け持つ。その当番が（頭の家）で、その戸主が頭主であるが、最近では辞退する家も出ている。赤米栽培にまつわるさまざまな神事、農耕儀礼の記録である。◆赤米の栽培、管理〔長崎県〕

二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆平安時代、宇多天皇の建立による真言宗御室派総本山仁和寺。洛西の大内山を背景に、９万平方メートルの広大な敷地に配置された堂塔伽藍が漂わせる華やかさと雅が、王朝貴族や芸術家をはじめ多くの京の人々に愛されてきた。境内でコンサートを開催したこともある歌手・加藤登紀子と胡弓奏者・楊興新が旅人となり、五重塔内の極彩色の曼陀羅の世界、観音堂での読経風景などを通して、浄めの場としての仁和寺を語り合う。金堂で奏でられる胡弓の響きも味わい深い。

１９７９年登録。◆シリアの首都。近くには、キリストと弟子たちが使ったアラム語を話す人たちも住む。かつてはローマが支配したが、そのころの城壁を１３世紀、イスラム教徒が改築して内部を要塞化し、そこが旧市街になっている。当時、聖地エルサレムをめぐってダマスカスを攻撃した十字軍に対し、激しく戦ってイスラム軍を勝利させたサラディンはここに眠る。◆今日、旧市街ではイスラム教徒とキリスト徒が問題もなく共存し、人類のあるべき姿を見ることができる。

人生は明るく楽しくお気楽に、がモットーの私立探偵・涼村暁。そんな彼がまったくの偶然から「燦然！」と変身。これで退屈な人生とおサラバだ、としか思っていない、正義の戦士の自覚皆無の主人公を中心に描かれる、いっぷう変わった「変身ヒーロー」物語。（１２月２５日終了、全３９回）◆

１９９６（平成８）年度の伝統芸能鑑賞入門の特色は、１つの演目が能・歌舞伎・文楽など姿を変えていったという、日本古典劇の相互関係を理解するということである。この『鏡獅子』も能の『石橋』が源流で発展したものである。◆千代田城の大奥、お鏡曳きの日、将軍家の希望で小姓・弥生が踊りを披露させられる所から始まる。能の『石橋』と大きく変わっているのは前半、能が石橋を語るのに対して『鏡獅子』では舞踊の要素が重くなっていることである。◆「鏡獅子」中村勘九郎。◆副音声は英語

釉薬をかけず、土をじっくりと焼きしめる備前焼。人間国宝の父に師事し、自分も国宝となった藤原雄（当時６４歳）の工房を、ピアニスト岡崎ゆみが訪ねる。◆まず土の良し悪し、そして窯の中で火や灰が微妙な絵を描く窯変が、作品を左右する。やきものも窯も自分もそれぞれが壊れるかもしれない、ぎりぎりのところで作品ができる。◆太古から未来まで変わらない美しさを表現したい、それはあっと驚かすことでなく、花を生けたい、酒を飲みたいという自然の感情だ、という。