広島県内に古くから伝わり受け継がれてきた筆・刀・琴の３つの伝統工芸、伝統技術を通して自然と人間の関係を描く。◆《筆》書家や筆づくりの職人たち、筆の材料になる動物の毛、軸になる竹材をたどっていく。《刀とたたら製鉄》鉄の芸術品といわれる刀、その刀の原料となる玉網、素晴らしい刀は自然の恵みと人間の技によって生み出される。《琴》材料になる桐材、琴本体を作る職人、糸しめをする和楽職人、そして琴演奏家が優美な音を奏でる。

岡山・寄島の朝は５時から始まる。市場では、瀬戸内の旬の魚が次々とせりにかけられる。シャコも寄島の特産物で、とれたてのシャコは、すぐに加工されて大阪方面に送られる。もう一つの寄島名物「アナジャコ」は、シャコに似ているが実はヤドカリの仲間。アナジャコ釣りが寄島のひとたちにとって季節を味わう楽しみとなっている。

１９９５年６月２３日、戦後５０年となる沖縄慰霊の日。沖縄戦最後の激戦地となった糸満市摩文仁の丘に、戦争の犠牲者２３万人余りの名前を刻んだ「平和の礎（いしじ）」が完成した。この世界最大の慰霊碑を造るための戦没者調査の様子などを通し、平和へのメッセージを伝える。

ＴＢＳの旧テレビ局舎を舞台に、３人の脚本家が競作したオムニバスドラマ。◆第１話、山田太一脚本「写真の裏」：ドキュメント番組のディレクター・日下部の元へ、久美と孫の民子、民子の夫の藤八の３人が押しかけてきた、以前に日下部の番組に貸した写真を返して欲しいと言う。写真は戦死した久美の夫を出征直前に撮ったもので、裏には妻への思いがつづられていたのだと言うのだが。◆第２話、市川森一脚本「あの人だあれ？」：ＴＢＳに一つの小包が届けられた。宛名は“マッちゃん様”。面倒見が良く、あらゆる番組の雑用を器用にこなすマッちゃんは局の誰からも愛される人気者だった。ところがどのセクションにも彼に該当する人物が見当たらない。警備の村井は上司からマッちゃんの正体を突き止めるよう命じられる。◆第３話、早坂暁脚本「猫坂の上の幽霊たち」：キャスターの筑紫と俳優の山崎は取り壊されかけたスタジオでトンネルを発見。不思議な音と共に、２人は昭和１１年（１９３６）にタイムスリップ。中橋中尉の号令の下、二・二六事件が起きたところだった。次にタイムスリップすると今度は勝海舟が現れる。

腕の良い大工の熊さん、酒が入ると仕事はせず、借金はする。子どもの亀吉と女房を追い出し、馴染みの女郎と暮らすが続かない。一人暮らしになってやっと目が覚め、酒を断ち、一生懸命働き立派な棟梁となる。◆ある日、道でわが子亀吉と出会った熊さん、女房が再婚もせず苦労していることを知る。悪かったと亀吉に小遣いを渡し、明日二人でうなぎを食おうと約束するが…。

指揮者・外山雄三さんは名古屋フィルや愛知県立芸大などに籍を置きながら、十年来名古屋と姉妹都市関係にある南京の芸術学院との交流を続けてきた。「いつか大きな舞台で合同でやりたい」との氏の夢が叶い、１９９５年１月中国から音楽家１００人が来日、マーラーの「千人の交響曲」が名古屋で演奏された。マーラーのスケール感あふれる曲のような日中合同の大作業、そして国内での二つのオーケストラ、約八百名のコーラスの指導など「千人の交響曲」を創りあげていく過程を追う。◆中京テレビ開局２５周年記念番組

九州山地の中程にある椎葉村で毎年１１月に行われる『夜神楽』の、準備から終演までの１６時間を克明に記録する。◆村には２６地区に神楽が伝承されているが、それぞれ違った形で違う日に行われる。人口９０人の栂尾の神楽は最も古い形を残す。神楽の舞台における夜を徹しての奉納神楽が演じ終わるのは翌朝１０時。狩猟で生活をしてきた山の人々が、山の神を無事山へ送り戻すまでの物語である。◆【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財】椎葉の神楽〔宮崎県〕

１９９４年８月、沖縄本島南部にある南風原町黄金森から一体の遺骨が発見された。発見したのは南風原町考古学調査グループ。遺骨は鉄兜をかぶっていて、ガスマスクや小銃の弾なども周辺から出土したことから、沖縄戦で犠牲になった日本兵であることは間違いないと断定された。日本兵の遺骨ではあったが、発見したのが考古学調査のチームだったことから、刷毛などを使った丁寧な発掘調査が行われ、詳細な資料が作成された。その遺骨の近くからは、時計やナイフ、手りゅう弾など百点余りの遺品も見つかり、その中にあった万年筆には、「大谷」という名前が手彫りされていた。発見場所の黄金森は沖縄戦当時、陸軍病院壕が置かれていた場所であった。この森の中で５０年間も眠り続けていた日本兵の遺骨は、いったい誰なのか。万年筆に残された「大谷」という名前を手掛かりに、南風原町と沖縄テレビは協力して、調査を開始した。しかし、５０年という年月の壁はあまりにも大きかった。日本各地を駆け回った調査は数々の困難にその行く手を阻まれることとなる。