青森県上北町の菩提寺地区は、個数２５戸の小さな村である。ここではいま葉タバコ出荷の真っ最中。ここは２年前、農産物の自由化に対処するため、畑作改善のモデル地区に指定され、畑の境界線を全部取り払って共同作業に踏み切った。しかし共同作業の場合、住宅が分散していたのではどうしても不便。そこで、農民アパートを建設しようという声が若い人たちから出た。年寄り連中を説きふせ、昨年の暮れブロック造り２階建て２棟１２戸の住宅と、別棟の物置、乳牛５０頭を収容する牛舎が完成した。反対していた年寄りたちも、やがて快適なアパート暮らしになれてくることだろう。（町から村から）

東京オリンピック資金財団の記念メダル発売前夜、銀座通りは徹夜の行列、フトンや寝袋を用意した完全装備型まで加わってすごい前景気。一夜あけると行列はどんどん増え、デパートを取り巻いて延々長蛇の列がつづく。ようやく予約券を手にした人はまるでオリンピックに入賞したような喜びよう。割り込み騒ぎの挙げ句ついに売り切れ、メダル獲得はやっぱり楽ではない（１９６４年４月１７日）。（週間話題）

１９６４年２月１日東京大手町のビル工事現場で突然地くずれが起こり、およそ９００平方メートルが大音響と共に陥没。働いていた作業員のうち１人が死亡、２人が負傷した。このため付近の交通は完全にストップ。事故はシートパイルを打ち込み鉄骨を組み立てる基礎工事中の現場で、前日の大雨のため地盤がゆるんで起きたもの。皮肉なことにこの日からオリンピック関係工事災害防止運動が始まった矢先の出来事であった。（週間話題）

威勢のいい祭りばやしが流れてお江戸３大祭りの一つ、浅草三社さまの夏祭りがやってきた。繰り出した大小１２０台の神輿は日がな一日町内をまかり通った。こちらは京都、大堰川の三船まつり。遠く平安朝の昔、宇多天皇の舟遊びの故事にちなんだ古式豊かな祭り。船上で演奏される雅楽や舞に京都の人たちは早くも夏の訪れを楽しんでいる。

３ヶ月前にゴ・ジンジエム政権を倒した南ベトナムで、またクーデターが起きた（１９６４年１月３０日）。今回の立役者はグエン・カーン少将で３８歳の若さ。この度のクーデターは、中国承認に次いで南ベトナムの統一と中立化を掲げるフランスのドゴール構想に対して、グエン将軍ら親米派グループが反発して起こしたものと見られている。新政権はフランスとの国交断絶も辞さぬ構えにあるともいわれ、ベトナムの今後が注目を集めている。

福岡県直方市の下境はかつて中小炭鉱の栄えたところだが、今は寂れた炭住街である。この街に伊東さんという小学校の給食婦をしている婦人が居る。伊東さんには芳子さんという大の子ども好きの妹があったが、芳子さんは炭住に住む子供たちの環境を心配して「音楽を与えたい」という夢を持っていた。しかしその夢は実現されぬまま、芳子さんは昨年の暮れに亡くなってしまった。姉の伊東さんは生前妹が抱いていた夢をかなえることが唯一の供養と、集まった香典と姉妹の貯金で楽器を買い、炭住の子供会に贈ることにした。子供会は贈られた楽器と家にある楽器を持ち寄って小さな鼓笛隊を編成、音楽教師の山田国寿さんが指導をかってでて、猛練習が始まった。そして芳子さんの４９日に当る日に西雲寺の墓前で演奏会を開いた。（町から村から）

人口５万、飛行場と名神高速道路の起点、愛知県小牧市の神戸市長は若者顔負けのやり手。名神高速道路の完成を見てとった神戸氏は小牧を「陸の港」にしようと計画、まず工場誘致にのり出した。手がけた工場はすでに２５０社、操業を開始したところもある。一方農業の近代化にも着手、養鶏場や乳牛の放牧など新しい農業の集団経営が試みられている。忙しい神戸市長は今、小牧市を１０万都市に育て上げようと夢見ながら毎日張り切っている。（町から村から）

１８年ぶりに復活した生存者叙勲。このほど吉田茂元首相に大勲位菊花大綬章が贈られたが、今回は民間の功労者を対象としたのが特色と言われる。最年長者は満１００歳の岡野喜太郎さん。銀行経営に尽くしてきた功績に対して勲三等瑞宝章が贈られた。岡野さんは沼津の自宅で、長生きしたおかげですと喜びを語った。