１９６４年８月１日、羽田と代々木を結ぶ五輪道路の開通式が、河野一郎五輪大臣を迎えて行われた。全長２７．３キロ。羽田から伸びる高速道路１号線は江戸橋インターチェンジで４号線に入り、ビルの谷間をぬい、堀の上を走り、地下をくぐり、代々木初台で選手村に連絡、羽田から僅かに３０分の道のり。一方開会式に花を添えようと航空自衛隊のアクロバットチームは、大空に五輪を描くお手並みを披露。こうして２ヶ月後にせまった大会を待つばかりとなった。

選抜か単独か、注目のエイト代表を決めるレガッタ決勝は１９６４年５月２３日、改装なった戸田の静水コースで行われた。この日はあいにく３メートルを越す強い逆風。選抜クルーはピッチを落し力強く水をつかむブレードワークで他のクルーを大きく引き離し、安定した漕法でそのままゴールイン。昨年１１月、一旦五輪代表に選ばれながら一部の反対で候補に格下げされた選抜クルーは、半年のトレーニングが見事実って、オリンピック入賞の大きな望みがかけられている。

アメリカの月ロケット「レインジャー６号」がケープケネディ基地から打ち上げられた。この無人探査機には月面を近接撮影する６台のテレビカメラが積み込まれ、月に降下しながら３千枚の写真を撮影し、地球に電送する計画となっている。発射６６時間後「レインジャー６号」は予定通り「静かの海」に接近、テレビカメラにスイッチが入れられた。しかし、カメラと送信機は月面に衝突するまでに予定の出力に達せず、期待された撮影は失敗に終った（１９６４年２月２日）。

オリンピック出場をめぐって注目されていた日紡貝塚と、一般選抜女子チームの６人制バレー対戦。大松博文、小島孝治両監督が見守る中、第１セットは接戦の末、１６−１４で日紡がとった。第２セットでもリズムにのったチームワークで日紡が着実にポイントを上げた。３セット目、日紡はたくみな連携動作でマッチポイントをとり、一般選抜女子をストレートで下した。日紡貝塚は１３５連勝を飾り、東洋の魔女としての貫禄を示した。

１９６４年９月３０日、皇居賢所で義宮さまと津軽華子さんの「結婚の儀」が古式ゆかしく行われた。皇太子ご夫妻ら参列者の見守るうちに衣冠束帯の義宮さまと十ニ単の華子さんが神前に進む。義宮さまが結婚の誓いの告文を朗読、めでたく結婚の儀を終った。このあと天皇陛下から常陸宮の新宮号が義宮様に贈られ、戦後始めての新宮家が誕生した。両陛下と仮宮御西の間で親子かための杯をかわされた常陸宮ご夫妻は、常磐松のスイートホームへ、沿道はお二人の門出を祝う旗の波で埋まった。あくる日、皇居でお祝いの宴が行われ「常陸宮をよろしく」と昭和天皇のお言葉があり新夫妻の幸せを祈った。新婚最初の日曜日、常磐松御殿に町内の人達がお祝いにやってきた。やわらかな秋の陽射しを受けてバルコニーからおこたえになる幸せそうなお二人。

人口５万、飛行場と名神高速道路の起点、愛知県小牧市の神戸市長は若者顔負けのやり手。名神高速道路の完成を見てとった神戸氏は小牧を「陸の港」にしようと計画、まず工場誘致にのり出した。手がけた工場はすでに２５０社、操業を開始したところもある。一方農業の近代化にも着手、養鶏場や乳牛の放牧など新しい農業の集団経営が試みられている。忙しい神戸市長は今、小牧市を１０万都市に育て上げようと夢見ながら毎日張り切っている。（町から村から）

政府は戦没者に次いで生存者約２００人の叙勲を発表、論議を呼んだ生存者叙勲は１８年ぶりに甦った。９４歳の野村洋三さんはホテル経営一筋に生きてきた横浜の有名人。坂本宇三郎さんは灯台守として航路安全に永年尽くしてきた人である。戦争で４人の息子を亡くした鳥居さんは墓前に詣で「犬死ではなくなった」と話しかけていた。北海道から靖国神社の息子に会いに来た遺族は叙勲を喜ぶ。しかし形式的なものよりも遺族にもっと心配りをすべきと言う人もあり、叙勲は様々な反響を呼んでいる。

春浅い島根県三瓶山麓東の原、昭和３５年に人生の卒論を大地に書こうと入植した東京農工大学の卒業生たちは、４年目の春を迎えた。初めは６人だった学士開拓団も嫁さんを迎え、子供もできて今では１８人の大世帯。入植の時借りた１千万円の開拓資金の返済はいよいよ来年から始まる。それに備えて彼らは所得倍増の５ヶ年計画を立案中。経営の中心は酪農で、現在の乳牛３４頭を７０頭に増やし、年間７百万円の収入を目論んでいる。（町から村から）